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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
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 有名なタレントであり、どこへいってもファンに囲まれるはずの男・タヴァナーは、実験的に遺伝子改良を施された、スイックスという特異な人種でもある。それによって得た才を存分に活かして、輝かしくも華々しい人生を送っていた彼に、ある日とつぜん訪れた異変。消えてしまった戸籍、身分証明書。彼がこの世界に存在するという、ありとあらゆる証明が、あるとき唐突に、ひとつのこらず失われてしまった。そして、彼に関する人々の記憶もまた……。

 近未来を舞台としたこの小説世界では、かなり窮屈な管理社会であり、警察が大きな力を持っている。IDを持たずにうろうろしていれば、強制収容所送りになるか、下手をすれば射殺される危険もある。そんな世界で、わけもわからないままあらゆる身分証明を失って放り出された主人公は、なんとか状況を打開しようと、偽造IDを手に入れるのだけれど、その過程でさらなるトラブルに巻き込まれてしまう。
 やがて警察に目をつけられ、不幸な誤解から殺人の冤罪をかけられてしまったタヴァナーは、必死で身の証を立てようとするのだけれど……

 手に汗にぎる展開、見え隠れする希望と、くりかえしそれを押しつぶす絶望感。面白かったんだけども、なぜ彼が人々の記憶と記録から消えてしまったのか、という最大の謎の部分は、ちょっと解決に納得がいかないというか、腑に落ちないような感じがしたかなあ……。ラストはやや好みのわかれるところかと思います。

 本筋と大きく絡む場所ではないのだけれど、終盤にひとつ、とても好きな場面がありました。主人公の罪を冤罪だと承知の上で、保身のために罪をかぶせようとしている警察本部長。罪の意識に苦しみながら立ち寄った深夜のガソリンスタンド、そこで出会った黒人男性が、彼にかけた言葉の中ににじむ何気ない情が、すごく沁みる感じがしてよかった。

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『マイノリティ・リポート』に続いて三冊目のディックでした。ほかの本も、もうちょっと読んでみたいなあ。

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