忍者ブログ
小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 明治時代の岡山地方を舞台にした短編集。女郎として売られてきた女が客に語るいまわしい生い立ち。コレラの蔓延する村で密告箱の管理をする役人の懊悩。女は殴っていうことを聞かせるものだと思い込んでいる夫との暮らしに疲れ果て、許されない恋に走ったあげくに追い詰められた女。貧しい村で忌み子として疎まれながら育った兄妹と、二人の周囲にまとわりつく牛頭の化け物の影。

 タイトルの「ぼっけえ、きょうてえ」というのは、岡山の方言で「とても、怖い」というような意味だそうです。
 私、正直なところ怖いものはとても苦手でありまして、こちらの本は表紙からしてすでに怖い予感満々で、かなり躊躇しましたが、しかし尊敬する方からのオススメだったので、ぐっと気合を入れて買いました。そしたら本当に怖かった……。ぎゃー!

 怪奇の意味でも充分すぎるほど怖いけれど、それよりもむしろ人の心が恐ろしい。そんな小説ではありますが、それ以上に情感があり、悲哀があって、とてもよかった。つらく重苦しい話を読んで「よかった」というのも、少しニュアンスが違うかもしれませんが、しかし、間違いなく出あえてよかった本です。
 怖い怖いといいながら、またいずれ読み返す気がしています。怖いもの見たさのためではなく。

拍手

PR
 時代は江戸、舞台は大阪。寒天問屋をいとなむ大阪商人・和助がゆきあった少年は、仇討ちに巻き込まれて殺されそうになっている武家の子息だった。
 見るに見かねて声をかけ、大枚をはたいてまで少年の身柄を引き取ることにした和助だが、その金は、火事でうしなわれた天満宮の再建のために寄進するために、苦労してようやくかきあつめたものだった。
 周囲の反対にあいながらも、少年を丁稚として使うことにした和助。武家で育った子どもが使い物になるはずがないという周囲をよそに、当人は一心に精進をかさね、商人として、職人としての心がけを身につけてゆき……。

『みをつくし料理帖』シリーズではまって追いかけはじめた高田郁さんの本ですが、負けず劣らずこちらもよかった。あちらは女料理人が主人公ですが、銀二貫も、寒天問屋が舞台ということで、食にかかわるお話です。
 寒天は、それだけでは主役にはならないけれど、ほかの食材と組み合わせることでその真価を発揮する。もっとコシの強い寒天があれば、料理の可能性はさらにひろがるのに……そう悔しそうにいった恩人の願いにこたえるために、新しい食感の寒天を作り出そうと、頼み込んで天場にいれてもらうことにした主人公。身を粉にして工夫を凝らす日々、何年もの時間をかけ、忍耐強くさまざまな手段を試して、ようやくできあがった寒天とは……

 慣れない環境におかれた少年が、必死にものごとを学び、苦労を重ねながら成長していく。ときにつらくあたられ、ときになれない重労働に苦しみ、けれど彼を見守るあたたかい目もまた、そこではいつも注がれている。
 誠実で、情に篤い人々のお話。人情モノがお好きな方はぜひ。

拍手

 ぼくの目標はエリートコースをまっしぐらに突き進むこと。東大入学を目標に、日々勉強に励む中学二年生の星野勝は、しかし家庭の事情というやつに振り回されて、せっかく入学した私立の名門校をやめ、田舎の小さな分校に編入するはめに。
 それでもなんとか勉強を続けて、いずれは進学のためにふたたび上京するつもりいた勝は、そこで友達を作ろうなんて、はじめは思ってもいなかった。けれど同じ分校に通う、たった3人きりの同級生は、つきあってみると、意外にクセが強くて……

 できるせいで、ちょっといけすかない主人公。根は悪いやつじゃないんだけど、頭がいいだけにまわりの子たちを馬鹿にする傾向があり、そのせいでしばしばトラブルを起こしてしまう。だけどクラスメイトたちと衝突を繰り返すなかで、だんだん、こいつらは自分が思っているのとちょっと違うんじゃないかと気づきはじめる。
 青春小説としては王道というか、直球。だけどそこがいいな。幼さからの独善と、かわっていく価値観。

 ネタバレになるのでくわしくは控えますが、途中で明かされる真相が切ないです。いちど読んだら忘れられない感動の大作! とかいうのとはちょっと違いますが、笹生さんの本って、ときどきふっと読みたくなる。少しずつ、ゆっくり揃えていこうと思います。

拍手

森見 登美彦
新潮社
発売日:2006-05

 森見さん定番の、青春をこじらせた腐れ大学生が主人公。鴨川に並ぶ男女のカップルにささやかな邪魔をする、不毛な妄想に明け暮れる等々、ずっと女っ気のない青春を過ごしていたけれど、三回生のときに「魔が差して」仲間を裏切り、水尾さんという恋人をつくる。しかし、その彼女にもあえなくふられてしまう。納得がいかない主人公は、「彼女はなぜ私のような人間を拒否したのか」という疑問の解明をめざして、彼女の観察・研究を続けるというのだが……

 こんなに好感の持てるストーカー主人公がはたしてほかにいるものだろうか。(反語形)
 情けなさとひねくれ方、自虐っぷりが絶妙に愛らしい、なんともダメな主人公。ちょっと駄目な人、残念なかんじの人、弱い人が、読んでいるうちにだんだん愛しく思えてくるような、そういう小説って、とても好きです。

 ユーモラスな筆致で進む展開、ゴキブリキューブなる恐ろしい存在が登場し、途中には「ぎゃあああ!(涙目)」な場面も若干ありましたが、読み終えてみればラスト、絶妙に切なかったです。なんだかんだいっていいやつな主人公の、とほほな感じがなんともいえない。

 こちらがデビュー作なんですね。とても面白かったのですが、こちらを購入した時点では、わたしはすでに森見ワールドの魅力にとりつかれていたので、冷静な判断ができているかどうかは、ちょっと自信ないかなあ。読めば読むほどじわじわとクセになる作家さんだと思うので、ご興味がおありの方は、ぜひ二冊三冊と続けて読んでみていただきたいと思います。って、どこかの勧誘員か!

 森見さんの本はいずれ揃えたいので、文庫化まで待つ所存でいたのですが(収納と転勤の都合上、揃えたい作家さんほどなるべく文庫で買いたい)、先日うっかりガマンしそこねて、ペンギン・ハイウェイを単行本で買ってしまいました。あと既刊で読めてないのは、「宵山万華鏡」「四畳半王国見聞録」「聖なる怠け者の冒険」の三冊か。うわー。待てるかなあ。

 ほかの作品の感想は、また後日あらためて。ちょっとこのごろレビューさぼりすぎてえらいこと溜まってきた!

拍手

本題の前に。拍手コメへの返信が末尾にあります。

----------------------------------------
 戦国の世、忠義や名誉のために戦う武士たちを横目に、まったく異なる道理にしたがって戦ばたらきをする男たちがいた。伊賀の忍びたち。ただ金と欲得のためにわざをみがき、日々戦に明け暮れる彼らは、卑怯者とのそしりを歯牙にもかけず、ときに裏切り、だまし討ち、肉親同士でも殺し合い……。
 そんな中、とりわけて伊賀者らしい男がいた。名は無門。ずばぬけた身体能力とわざをもち、怖いもの知らずとしか思えないこの男には、ただひとつの弱みがあった。一目ぼれしてさらってきた女、お国にだけは、まるきり頭があがらない。育ちのいいお国は、無門のもってくる稼ぎくらいではとても満足がいかず、もっと稼いでこないことには、家に上げさえてもくれない。(その家はもともと無門の家のはずなのだけれど)本来は怠け者で、あまり積極的に働く気もしない無門だが、お国を家に置いてからは、せっせと稼いでこねばならなくなる。
 やがて、伊賀者と織田家とのあいだにはりめぐらされた謀略が、かつてない壮絶な戦をまき起こすが……

 のぼうの城のときにも思ったけれど、まさしく極上のエンターテイメント。盛り上がる展開、ダイナミックな戦闘、なによりキャラクターの魅力!
 わけあって織田家についた武者・大膳との対決に話が向かっていくのだけれど、この大膳がまたすごく魅力的なんです。名を知られた武将で、いかにも武者然とした堂々たる戦いぶりの、気持ちのいい人物で、無門とは対照的。そのふたりの対決が熱い。
 非道をもって知られる伊賀に生まれ育ち、とりたてて疑問も持たないまま、金のためにいくらでも人を殺してきた無門が、物語の最後に、どんなふうにかわるのかということ。その変化も読みどころ。
 面白かったです。

拍手

プロフィール
HN:
朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
朝陽遥(アサヒ ハルカ)またはHAL.Aの名義であちこち出没します。お気軽にかまってやっていただけるとうれしいです。詳しくはこちらから
拍手コメントをいただいた場合は、お名前をださずにブログ記事内で返信させていただいております。もしも返信がご迷惑になる場合は、お手数ですがコメント中に一言書き添えていただければ幸いです。
twitter
ブクログ
ラノベ以外の本棚

ラノベ棚
フォローお気軽にどうぞ。
最新CM
[01/18 スタッフ]
[05/26 中村 恵]
[05/04 中村 恵]
[02/04 隠れファン]
最新記事
(04/01)
(01/25)
(01/02)
(08/01)
(06/05)
アーカイブ
ブログ内検索
メールフォーム
約1000文字まで送れます。 お気軽にかまってやってください。
カウンター
忍者ブログ [PR]