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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
 読了。

 早朝、公園のゴミ箱から、若い女性の腕だけが発見された。直後に同じ公園から見つけ出された、行方不明の女性・古川鞠子のハンドバッグ。しかし、テレビ局に犯人から電話がかかる。腕は鞠子のものじゃない、鞠子は別の場所にいる――
 世間の受けた衝撃をあざ笑うかのように、次々と起きる事件。被害者の家族を振り回し、その苦しむ姿を見て喜び、警察やマスコミを翻弄して楽しむ「犯人」。殺された女性たちと彼らの間には、まるでつながりが見つけられない。捜査は難航し、犯人を追う手がかりは絶望的に少ないように思われたが……

 次々に提示される衝撃的な展開。遺族、発見者、ルポライター、警察と、さまざまな関係者の視点から話が織り成されており、途中からは犯人サイドの視点に突入して、物語中盤で「真犯人」は読者の目にさらけ出されますが、「犯人」は変わらず世間を欺き続け、周囲の人々を手のひらの上で躍らせてはほくそ笑んでいる……
 あまり詳しい筋書きを書いてネタバレするのも何ですから、あとは控えますが、ともかく濃かった、そして面白かった。全五巻、あっという間に読んでしまいました。

 個人的には大満足。しかし「衝撃の問題作」とコピーに謳われるのもよく分かります。胸が悪くなるような犯人の行動、悪意。宮部さんの描写は、人物の内面に踏み込んで描かれるので、読んでいてけっこうつらい。少なくとも、猟奇描写や人の心の闇を描いた作品が苦手な方には、あまりおすすめできないかも。
 最終的には犯人との対決があり、しっかりしたストーリーの収束を迎えるんですけれども、犯人と闘うほうも、自分の心の弱さからときに間違い、後悔し、苦しみながら歩いていて、その関係者一人ひとりの生身の生活や苦しみが丁寧に描かれているからこそ、読んでいて夢中になって読めるし、苦しい。

 この作品のあとに出た『楽園』の方を先に読んだのですが、そちらは『模倣犯』に登場するライター・前畑滋子が主人公で、9年後の、また別の事件にまつわる話でした。そっちもすごく面白かったけども、やはりやるせない辛い事件を取り扱っているので、好みは分かれるかもしれません。

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