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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
 読了。

 らい病院に勤める医師のサンダーズは、愛人に会うためにモント・ロイアルに向かっていた。
 近くの港までたどり着いてみると、その町は厳重な警戒に包まれていた。目的の町モント・ロイアルでは奇妙な現象が観測され、それも急速に周囲へ広がっているという。目的地まで向かう道はすでに軍隊に封鎖されていたが、サンダーズはなんとかして愛人に会おうと、調査団に同行することにした。
 入り込んだ森は、奇妙な姿を見せていた。不定期に森の中心から「波」が押し寄せてくると、あらゆる生物・非生物が、きらきらと輝く水晶に取り込まれ、結晶化していく。結晶に包まれたものからは、生も死も、時間というものがすべて失われるようだった……

 世界滅亡もののSF小説だけども、どっちかというと、SFというよりも幻想色が強いです。観念的というか……
 物悲しく美しい世界の終末。全世界がどうしようもなく美しい結晶に飲み込まれていこうとしているのだけれども、結晶化を一度でも体験した人間たちは、その魅力にとりつかれ、恐怖するどころか、結晶の森での永遠を、何ものにも換えがたい喜びと認識するようになっていきます。

 私の好みの問題ですけども、その現象が起きた理由にはもう少し、もっともらしい説明を書いてほしかった気がします。厳密な科学的考証とかはいらないんだけど、詳細が省略されすぎていてちょっと物足りなかったというか……

 本の外側から眺める絵としては、とても美しいけれども、どうもうまく小説世界に入り込めず、登場人物にもいまいち共感できなかったです。主人公が不倫の挙句に二股をかけているあたりも、いまいち感情移入しづらい一因かも。二股は、二人の対照的な女性の対比ということで、物語の構成上はずせないテーマだったのかもしれないんですが、まあとりあえず女の敵だよね!
 ということで、個人的な好みからするとやや不満足。しかし、好きな人は好きでしょうし、インパクトは強かったです。

 もうじき死のうとしている病人たちが、永遠を求めて行列をなし、森に向かっていく後ろ姿が、なんとももの寂しくて印象的でした。

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