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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
 読了。

 主人公・リョウの両親の仲は、壮絶に悪かった。母親はリョウを「父派」だと思っていてリョウの分の食事を作らず、父親は離婚しない理由を訊かれても、「結婚して子どもがいるのといないとでは、会社でまわりの目が違う」と、当の子どもに漏らすような人間だった。
 リョウはそんな自分が不幸だなんて思ったこともなかった。悪いことはいくらでも降りかかってきて、自分の周りを通り過ぎていく、それはそういうもので、それに対して自分ができることなんて、何一つないと思って生きてきた。
 ある日、立ちくらみを起こして崖から落ちたリョウは、自分は死んだと思ったのにもかかわらず、家から少し離れた公園で目を覚ます。狐につままれたような思いで家に帰ると、そこには知らない女がいて、自分はこの家の娘だという。
 話を聞けば、女は生まれなかった自分の姉で、自分には弟なんていないという。初めは新手の詐欺か、空き巣の苦し紛れだと思っていたリョウだったが、家の様子を見て話を聞くうちに、女のいうことが、どうやら本当らしいと分かる。ここは自分の生きていた場所とは違う、もうひとつの可能世界、自分の世界では生まれる前に流れたはずの姉が無事に生まれ、かわりに自分が生まれなかったパラレルワールドなのだという仮説を、信じざるを得なくなる。
 帰る方法を探すリョウの目に映るその世界は、はじめ、自分のいた世界とほとんど変わらないように見えた。だが、『姉』と一緒に歩くうちに、二つの世界の決定的な違いが、徐々に分かってくる。その違いとは……

 胸苦しい、すごくやるせないストーリーでした。けれど、ただ悲劇的なだけではなくて、いろいろと考えさせられる話でもありました。

 物語の巧みさに引き摺られて、救いを願うような気持ちで読んでしまうのだけれども、最後に主人公がどうなったのか、あえて具体的には描かれておらず、想像させる結びになっているのですが、それがまた、想像すればするだけ苦しい。
 小説は後味が良くないと・ハッピーエンドじゃないと! という方にはオススメできませんが、ともかく、がつんとパワーのある一冊です。

 米澤さんの本は今後、いろいろ手を出してみようと思います。というか『さよなら妖精』を積んでいます。本を積みすぎです。もうちょっと自重しようよ……

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