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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
 読了。

 転校してきた少女は、とびきりの美少女で、とんでもない嘘つきで、目を疑うような変人だった。
 少女は開口一番、いった。「ぼくはですね、人魚なんです」
 人間は愚かでお調子者で寿命も短くてじつにばかみたいな生物だと波の噂で聞いたので、どんなにか人間が愚かか、生きる価値がないか、みんな死んじゃえばいいか、見ようと思ってやってきた。少女は、あっけに取られるクラスメートの前で、弾幕のようにまくしたてる。
「なんだ」と、しらけた気分で「あたし」は思う。この子はまだ余裕があるんだ、周りに関心をもっているし、構ってもらいたがっているし、子どものように駄々をこねているんだと。「あたし」にはそんな余裕はない。「あたし」は早く社会に出て、お金を稼いで、母親と兄貴を養わなくてはならない。「あたし」は早く「実弾」を手に入れたい。転校生のように、自分に注目を集めるために空想の弾幕を、砂糖菓子の弾丸を撃っているような余裕はとてもない……

 もう泣きそう。
 きっつい話です。悲しくて遣る瀬無くて、エグくて痛々しい。「泣ける」というのが、いい話だから泣けるというのではなくて、どうしようもなく壊れた人間と、それに振り回される子どもが、可哀想で、先の展開が、伏線で先に分かっているはずの真相があきらかになる過程が怖くて、もう見ていられない。
 けれど、読み終わった私の胸の一番真ん中に残ったのは、悲劇の部分よりも、重く遣る瀬無い事件と正面から向き合って、家族を守るために変わった、一人の青年の姿でした。

「いい本だ」といっていいかどうか分からない。悲しい話や、猟奇的な描写が出てくるものが苦手な方にはおすすめできませんが、しかし、猟奇性や奇抜さだけではない、深い部分ですごく胸に残る小説でした。

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