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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
森見 登美彦
角川書店
発売日:2008-03-25

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 大学三回生の春までの二年間、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。異性との健全な交際、学問への精進、肉体の鍛錬など、社会的有為の人材となるための布石をことごとくはずし、異性からの孤立、学問の放棄、肉体の衰弱化などの打たんでも良い布石を狙い澄まして打ちまくってきたのは、なにゆえであるか。
 責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。
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 本文より引用。なんだこれ、なんだこれ! と笑いながら読みすすめ、さらに切々たる訴えが続いたあとには、 
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 今ここにある己を引きずって、生涯をまっとうせねばならぬ。その事実に目をつぶってはならぬ。
 私は断固として目をつぶらぬ所存である。
 でも、いささか、見るに堪えない。
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 このすっとぼけた語り口!
 本作に限らず、森見登美彦さんの語りはだいたいこんな調子。まれにしっとりした空気にも出会いますが、基本的にはコミカルでユーモラス。

 さて本作、主人公は京都の「腐れ大学生」、相当年季の入った古アパートの四畳半で暮らしています。青春をこじらせて孤高の己を気取りながらも、どうしようもなく寂しさをもてあまし、高めなくてもいい方向に精神を高めて、全力で阿呆な行動に情熱を燃やす。

 登場人物の駄目さかげんが、ものすごくツボです。主人公も大好きなんだけど、樋口師匠……! 飄々としたいい男ぶりと、それにもかかわらずの生活力ゼロっぷりのギャップがたまりません。

 森見さんの小説の舞台は、本作に限らず、ほぼすべての作品で京都です。現実の京都のまちがモデルだけれども、そこにちょっとファンタジーが入り込んでいる。森見さんの京都には、人間に混じって天狗や狸が暮らしていて、なぜかきらきらと輝く叡山電鉄が軌道のないはずのところを走り、偽電気ブランなるうさんくさい酒が地下で出回っている。
 ほとんどの作品でそうした世界観がつながっているので、どれか一冊だけを読んでも「?」と思うところが残るんじゃないかと思います。読もうかなという方は、できれば何冊か続けて読んでみられることをおすすめします。

 本作をきっかけにじわじわとはまって、四月、ずっと森見登美彦さんの小説をおいかけていました。文庫化したものは、もうおおむね読み終えてしまって、いまとても寂しいです。転勤のときに持っていける冊数を考え、本は極力文庫で買う派なのですが、我慢できるかなあ……。うう。

 また他の本についてもちょっとずつレビューしますが、最高に好きだったのは『有頂天家族』だったことだけ、先に書き残しておこうかな。狸の兄弟が可愛すぎて、思わず萌え死ぬかと……!

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