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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
百田 尚樹
講談社
発売日:2009-07-15

 戦争で亡くなったという実の祖父は、かつて零戦の戦闘機乗りだった。
 祖父の死後、その軌跡を追うことにした姉弟。最初に会った人物からいきなり祖父のこと卑怯者、臆病者だと罵られ、衝撃を受ける二人。けれど根気強く、何人もの人々を当たっていくうちに、その印象は変わっていき……。

 命を惜しむだけで卑怯者と罵られ、特攻隊に喜んで志願することを当然とされる風潮の中で、堂々と死にたくないと言い放った士官。安全を重視した慎重な操縦もまた、仲間からの批判を受ける。けれどその操縦の腕は素晴らしく、我が身だけではなく僚機の安全にひどく心を砕くその姿に、憧れ、あるいは敬意を払うものもいた。語る人によって、まるで違う人物のように思われる彼の足跡をおっていった姉弟の目に映る、祖父の真実の姿とは。

 とてもよかった。ただ、ぜいたくをいえば、ちょっと姉弟が、いかにも舞台回し、という印象があったり、語り手たちの口調がどこか不自然だったりして、読んでいてときどき我に返ってしまうのが残念でした。
 あと、零戦最高! みたいな情熱が、ちょっとあふれすぎてしまっているような印象があって、戦争文学のつもりで読んでいいやら、フィクションの戦闘に血を滾らせて読んでいいやら、戸惑ってしまった感じも少々。

 ……などと、小さな不満は残るものの、全体としてはよかったです。愛した妻子のもとに戻りたいと公言し、臆病、卑怯者と罵られても、生き残るために必死で戦い抜いた男が、なぜ最後の最後に、特攻に散ったのか。胸が熱くなるシーンがたくさんありました。

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