表裏一体

　今日は一週間ぶりに本も読んだし、小説も少し書きました。ほんとうは自分が、書いたものが人を勇気付けられるくらいの書き手だったらよかったのになあとか、悔しく思ったりしなくもないんですけども、でもめげてもしかたないので、書けるものを書いていきます。

　とりあえず書いてみたら、いちおうちゃんと筆が動いた自分に、ほっとする一方で、何を呑気なというような声が、やっぱり自分の中から聞こえてきます。だけど、本も読まず小説も書かずに、週末に一日中ＮＨＫニュースに見入って情報収集に努めているだけのタフさは、自分の中になかったです。それが情けない気もするけれど、無理してイライラを溜め込んで周りに撒き散らすよりは、まだしもかなということで。
　そしてわたしはいったい何を、誰に言い訳しているんでしょうか。言い訳したいようなこの感情は、どこからやってくるんでしょうか。

　テレビが通常番組に戻りつつありますね。それがいいことなのかどうか、きっぱりと断定できるほどの自論はないです。いい面も、悪い面もあると思います。まだまだ情報が得られなくて、不安を抱いていらっしゃる方も多いのではないかと思うし。
　その一方で、被害はあったものの家が無事だった方や、避難所でひとまずは食料等のある程度届いている方もいらっしゃって、そういう状況で、普通のテレビを見ることで、ほっとされる方もたくさんいらっしゃるでしょう。ずっと地震の被害ばかりを眺めていて、それで平気でいられるほど強い人は、少ないのではないでしょうか。

　もしかしたら、呑気な放送に苛立つ方もいらっしゃるかもしれないのだけど、それでも、お笑い番組やバラエティや楽しみにしていたドラマの続きを見て、ほっとされる方がいらっしゃるのであれば、やっぱり普通の放送って、大事なんじゃないかと思います。
　一方、物資がちゃんと届くかどうか不安の残る避難所で、悲しみに押しつぶされそうなときに、流れてくるコントや漫才を観たときに、ひとときの笑いが力になるのか、かえって苛立ちや悲しみを募らせるだけなのかということ。それは、安否のわからないご家族がいらっしゃるかどうかなど、その方の状況にもよるでしょう。そうした方々の心情を、正しく自分が察することができているとは思えません。観たいっていう人も、観たくないっていう人も、同じ避難所の中にいらっしゃるんじゃないかなっていう気がして、それが辛いような気がします。そんなのも、勝手な想像なんですけど。

　遠くで誰かが、寒さや食料に不安な思いを抱いていらっしゃって、そういうことを、他人事だと割り切れない感情が、人間の中にあるからこその、義援金や支援であり、そういう感情をうまく消化しきれないからこそのモヤモヤであり、そのストレスがあるからこその論争があって、批判が起きるんだよなあと思います。良し悪しというか、表裏一体なんだなあと。
　ツイッターをみていて、荒れたツイートなどが流れてくると、冷静になってほしいと思うのだけれど、この状況で冷静になれないのは、当たり前だとも思う。むしろ、心配する相手がいるからこその、激しい論調なのかもしれず。

　まずは一日も早く食料が行き渡り、一人でも多く、無事な方の消息がご家族に伝わるといいなと思います。


　続きに拍手コメへのお返事があります。

＞片桐さまへ
　返信不要とのことでしたが、お礼だけでも。ありがとうございました！
　こちらこそ、片桐さまのお言葉にいつも励まされています。そして、ああ、片桐さまはほんとうに根っから創作の徒として生まれてこられたんだなあと思うと、ちょっと妬けないでもないです（笑）
　書かずにはいられない業というものも、きっといいことばっかりじゃないというか、それはそれで、ときに苦しいものなんだろうなと思います。でもファンとしては、正直なところ、読みたい！　というのが本音だったりします。
　仰っていた小説、楽しみにしてますね！　いつもありがとうございます。

＞ねじ様へ
　ありがとうございます！　器量のぞみ、久しぶりに本棚から引っ張り出して、読み返しました。五年ぶりくらいかな？　『幻色江戸ごよみ』に収録されている短編ですね。で、読んで、思わず泣いてしまいました。こんないい話だったっけ。
　宮部さんの書くお話のほとんどは、怖くても悲しくても、最後にはじんわりあたたかいものが残りますね。
　
　リライトは、どうかほんとうにお時間がとれたら、ご無理のない範囲で！　楽しみなのはとても楽しみなのですが、大変なときにねじ様のご負担になっていたらと思うと、そのほうが申し訳ないです。
　拍手コメントありがとうございました！