小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。

さよならドビュッシー
読了。
とつぜんの火事によって、姉妹のようにして育った従姉妹と祖父とを同時に失い、己の手足も自由にうごかせなくなった主人公。入学が決まっていた音楽学校に、どうにか入ることはできたものの、家が裕福なことや悲劇の主人公として注目されていることから、同級生からは妬まれる。
つらいリハビリと、周囲のいやがらせ。火傷の後遺症で初心者用の練習曲さえまともに弾けなくなった彼女を、それでも再び鍵盤に向き合わせ、根気強く導いたのは、魔法使いと呼ばれる、若き天才ピアニストだった。
ミステリとしてのエンターテイメント性も充分だし、それ以上に青春ものとして、音楽ものとして、たっぷりの感動が待っている。
……のだけれど、どうせなら、ミステリ要素を排してでも、もっと人間を描くことに力点を置いたほうが、さらに面白かったんじゃないのかなあ……という気持ちが少々残りました。
全部が全部そうなんじゃないんですけど、人間心理の描写が不十分に思えたシーンが何箇所か。それは、読み終わったあとで思い返せば、構成上やむをえないと思うのだけれど、「どうせなら……」と思ってしまうのは、わたしが謎にあまり重点を置いていないから。ミステリ読むのは好きだけど、本質的にはミステリ読みじゃないんでしょうね。
物理トリックなんかはかなりどうでもいいし、叙述トリックやどんでん返しは、痛快で好きなんだけれど、それよりもどちらかというと、人間を描いたものであってほしい。
あと、一人称の書き方でちょっと違和感があったのかな。たとえば、主人公が感動に打ちのめされているはずのシーンなのに、主人公の視線が、その感動の対象だけでなく、周囲の人々をいがいと冷静に観察している余裕があったりとか。そういうアラを、つい気にしてしまいました。
うーん、これは、読み手になりきれなかったわたしの負けって気がするなあ。なんていうか、もったいない読み方をしてしまった。小説は減点法で読むものじゃないのに。
……と、いろいろいいつつも、中盤以降、そんなアレコレを吹き飛ばすくらいの感動でした。
リンクはハードカバー版ですが、いまは文庫版も出ています。
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