冬眠でもするのか

　この一週間ほど、どういうわけか眠くて眠くて、夜も２３時ごろには朦朧としている始末、しかも目覚めがすっきりしているかというとそんなことはなく、昼間もやっぱり眠いです。いったい何がわたしをこれほど睡眠に追い立てるのでしょうか。疲労がたまるような極端なハードワークもなければ、運動もしていないし。
　昔からわりと、いやなことがあると、とにかく寝て忘れようとする性質なのですが、このごろそんなふうに強烈なストレスの原因があっただろうかと思っても、特別な心当たりはありません。小さなイライラや、日常茶飯事になっているようなストレスはありますが、そういうものの蓄積でしょうか。でもそんな繊細な神経の持ち合わせはないはずなんだけどなあ。

　まさか、引きこもりすぎて太陽光を浴びていないのが原因？　えー。
　仕事にはいちおう毎日ちゃんといってるんですけど、まだまだ家を出るころは夜もあけやらぬ薄暗い中で、職場につくころにはいちおう日は昇っていますが、それにしても朝陽の恩恵に浴する時間が短いです。なんとなく不健康的でよくないなあと思います。明日あたり、引きこもるつもりでいましたが、ちょっとくらいは外を出歩こうかな……でも週末雪だし、太陽でないかな。

　太陽いっぱいの南の島が出てくる小説でも読もうかなあ。燦々と日の光のふりそそぐ感じの小説世界にどっぷり浸ったら、体が太陽光を浴びたと錯覚して調子がでたりしないでしょうか。そんな都合よくはいかないか。

　体が錯覚云々はさておき、そういう擬似体感を求めるとき、小説には、マンガや映像では得られないものがあるなあと思います。
　わたし、マンガが大好きです。家が傾きそうなほど溜め込むくらい、とても好きですが、大好きなマンガを読んでいるときに、作品世界に自分が入り込んでいるような錯覚は、あんまり覚えません。登場人物を、近いけれども確実に少しの距離のある、どこかから眺めていると思います。それは、登場人物の気持ちに寄り添っていないということではないのだけれど、少なくとも、同化はしていません。

　絵のパワーってすごいものですし、たとえば小説だと延々と文章を重ねて語らないと伝わらないような、強烈なインパクトのものだったり、微妙で繊細なニュアンスだったりが、わかりやすく、短く、かつさりげなく提示できます。
　でも小説には、ひとつだけ、絵や映像作品にはなかなか持てない種類のパワーがあって、それは読み手が登場人物や作品世界に限りなく近づいて、その世界を味わえるということです。……と思います。たぶん。（自信を持てよ！）

　目の前に射す陽光の微妙な色合いや、肌にふれる空気の湿度や、手に触れたぬくもりや、舌に広がる汗の味や、話している相手の声の抑揚や、そういう、視覚以外の五感に訴えるパワーは、絵よりも文のほうが、強い。それは、書き手の技量の問題だけではなく、おおいに読むほうの能力と嗜好とにかかわっているので、書き手が力をつくすだけで、万人に味わってもらえる類のものではないです。
　だけど、いま自分は本を手に持ってページをめくっているいるという現実を完全に忘れて、登場人物と一体になってその世界を体験する、実際に自分がその世界に足を踏み入れていたかのような錯覚を覚える、そういうときの距離の近さについては、小説にまさる手法は、そうそうないと思います。

　……自分に絵が描けないからって、絵描きさんをひがんでるわけじゃないですよ？　ほんとですよ？（説得力がない）
　ちょっとウソです。絵が描ける人のことはいつもすごく羨ましいです……。

　こういうことを、こんなところでいくらぶつぶつ呟いていても、自分が作品世界に踏み込めそうなリアリティを演出できていない以上、果てしなくかっこ悪いだけですよね、そうですよね。いつものネガティブ魔人が目覚めてきたので、今日はもう寝て現実逃避します。明日明後日はいろいろ書こうっと。