小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
ツイッター経由で、ほかの方々の物書き進化録を見ていたら、だんだん羨ましくなってきて、マネしてみました。
「物書き進化録 リンク集」様 http://www3.rocketbbs.com/601/monokaki.html
ということで、↓のほうに、自分の新旧作から、冒頭部分を抜粋しています。
といってもここ数年、三語なんかもいれたら、やたらと本数を書いたので、とびとびにいくつか拾い上げています。それでもちょっと長いので、興味のない方、さらっとスルーされてくださいねー。
でも、初めて書いた小説はノートに鉛筆だったし、ここ何年かのしか残ってないよなあ……なんて思いながら、何気なくふっと本棚を見たら、隅っこで埃を被っていた、中1のときのノートが目に……あ、あれっ。わたしこれ捨ててなかったっけ(汗だらだら)
でもこれって小説? むしろ落書き? 落書きだよね? と思いつつも、あまりにいたたまれなくなったので、いっそ思い切って晒してみます。恥はかき捨て!(違)
『WAR』 1996年 非公開
大陸暦九一〇年 春――
なんということのない、その年。
十五年に渡って続いている戦争の中の、ある年。
しかし、彼らにとっての始まりではあった。少なくとも。
「もう十五歳。戦争に参加する歳になってしまったんですね……」
呟いた金髪の少年は、どちらかというと温和そうな顔立ちをしていた。手に下げる剣もあまり似合っていない。どこぞの商家か、貴族の一人息子というほうが似合いそうではあった。
……ぎゃー!(※中1のときです)
邪気眼まっしぐらなテイストの、戦争モノで異世界で血みどろのアレコレを書いていた記憶がうっすらあって、これ以上ページをめくる勇気が出てきません……。
小学校の四年か五年くらいのときに小説らしきものを書き始めて、二年か三年かたったころに、構成はデタラメながらも、いちおう「完」ってつけることができた、初めての小説でした。内容はひどい。
『新世界』 2000年頃 非公開
大移動、レイセウス革命、魔術師狩り。いくつもの名前で呼ばれるその事件は、歴史の教科書を開けば、かならず冒頭に記されている。
それはつまるところ王権が滅びて民主性が導入されたときのことであり、人が魔術や呪術といった得体の知れないまじないを捨てて本格的に科学の光で世界を照らし始めた第一歩であり、共和歴の始まりをさす言葉だ。
同時にこれは、魔術師の一族を皇家として大陸の半ば以上を支配していたカルデナ帝国が解体され、多くの小国が乱立した時期でもあった。現在の西大陸フィズグラントに存在する国々のほとんどがそのころ開国した共和国家であり、そのいずれの国でも歴史書はほとんど同じ時代から始まる。
共和歴元年、帝国崩壊。地方貴族の殆どが処刑され、あるいは私刑に遭い、王侯貴族とそれに連なるもの、魔術に僅かたりとも携わるものは滅ぼされる。残ったわずか二千足らずの魔術師達が船団を組み、北部の港より西大陸を離れたとされる。
暗殺者として育てられた少年の話。慕っていた兄貴分が、組織への裏切りの兆候を見せ始めたので、秘密裏に始末するように命令されて……云々。残念ながら邪気眼は高校に入っても治りませんでした。つくづく残念だ。
なんかおそろしいことに、高校の文芸部誌にのっけてもらったような気がしないでも……。
『焔神の末裔』2002年 非公開
それは真夜中、いくつもの松明と竈の炎に照らされてもなお薄暗い、小さな家の中での事だ。室内は、ランプに使われている獣脂が燃える匂いと、なによりも血と汗の臭気に満ちていた。
部屋の中にいるのは、まだ若い男と老爺が一人ずつ、中年を過ぎた女が一人。そして若い母親と、彼女がまさに今産み落とした赤子。それで全員だった。
生まれたばかりの赤子ははじめ、ぴくりとも動かなかった。焦った表情の男が、片手で赤子の身体を逆さに吊るし、空いた片手で強くその小さな身体を叩いた。打擲の音に、母親が悲鳴を上げて目を瞑る。男はその声を無視して続ける。二度、三度。女は、やめて、と出産で弱った身体で這い寄り、男を止めようとその足元に縋った。その手を、老爺が無言で引き離す。
四度目。それまで力なく垂れていた赤子の足が、僅かに撥ねた。
不老不死で激強の主人公が、村の掟によって殺されそうになっていた少女を単身助け出す……みたいな話でした。
あれっ……。構成はぐだぐだだし、内容は引き続き中二病全開なんだけど(※19歳時)、文章は、もしかしてわたし、いまもあんまり進歩して……ない……?(知りたくなかった事実)
いまはもう閉鎖された投稿サイト、アエーマ様に、思い切って投稿させていただいた記憶があります。だからこれ、ある意味わたしのウェブデビウ作なん……だ……。ぎゃー、はやまるんじゃない十九歳のわたし!
『猫の流儀』 2008年 非公開
小学校に入ったころからつい最近までの約十年間、茜にとって、学校からの帰り道はたいてい憂うつだった。
いまどき親が共働きの鍵っ子というのは、それほど珍しくない。同じ境遇の友だち、つまりひとりっ子で鍵っ子の歩美やさゆりは、昔から一人で過ごす時間は別に苦にならないと言ってた。むしろゲームをしたり漫画を読んだりしても怒られない分、親が帰ってきたあとよりも楽だと言って笑ってたくらいだ。
まる四年ほど断筆したあと、やっぱり小説書きたい! ってなって、あたふたもがきだした一本目。書きたい気持ちだけがあって何かいていいかわかんなかったので、とりあえずウチの猫をモデルになんとなく書いてみた的な。
Total Creators! 様の旧サイトに投稿させていただいたのですが、あまりに内容がひどかったので、いまは公開していません。断筆がたたって、あきらかに勘が戻っていないです。継続は力なりってほんとだな……。
『娘へ。』 2009年3月
珍しくも軽快にキーボードを叩き続けていた指が何の拍子にかぴたりと止まり、私はパソコンの画面から視線を上げた。そうして初めて、いつもは周囲の家々から漏れ聞こえている微かな生活音がすっかり絶えて、辺りがしんと静まり返っていることに気付く。それもそのはず、壁の時計を見ると、時刻は既に午前四時を回っていた。
私はひとつ背伸びをして、自分で自分の肩を揉んだ。知らず、ううっと唸り声が漏れる。若い頃であれば、一晩中文章を書いた後の徹夜明けにそのまま出勤し、更に残業して帰る、などという無茶な真似も出来た。五十代も半ばを過ぎようという今になっては、そんな細やかな武勇伝も遠い夢のようだ。
文章がどうこうっていうよりも、なんていうか、つまらない冒頭だなあ……。話の主題がぜんぜん冒頭に出て着てない。
家族愛というか、父娘の話でした。自分の中の屈折したファザコンから出てきた家族小説……。
『或る娼妓の話』 2009年6月
悲しい、悲しいと女が云うので、何がそう悲しいのだと問うと、何もかもが悲しいのだと、涙ながらに訴える。其れ程迄に悲しいと云うのならば、如何して生きて居るのかと訊くと、此れ程悲しいのに死に切れぬ、此の身の浅ましさが余計に悲しいのだと、其の様な事を云っては又泣く。
やがて夕やみが窓辺に忍び入り、昇りかかった下弦の月が白壁に格子模様を落とす頃になっても、女は未だ泣き止まぬ。呆れ返って「自ら命を絶てぬと云うのならば、己が殺してやろうか」と訊くと、女は涙に濡れそぼった黒い目を瞬かせて、じっと此方の貌を見た。その睫毛から涙の一粒が零れ落ちるのに、何とは無しに気を取られて居ると、女は暫らく黙って居たが、やがて紅を注した唇を薄く開いて、「貴方も悲しいのですね」なぞと頓狂な事を云う。
ものすごく読みづらい文体なんだけど、なんか妙に気に入っています。古めかしい文章って、なんか無性に憧れがあるー。
あと多分、書きたかったのはジャイアン現象。ひどい男がちらっと優しさをみせると妙にときめくアレ。
『荒野に吹く風』 2009年10月
湿り気を孕んだ風が、ひとすじ強く吹き抜けて、その先でまたひとつ、古いビルが崩れた。
朽ちて崩れていくのは廃墟ばかりではない、足元の路面もまた、舗装の下から生えてきた雑草に押し上げられて、罅割れ、歪んでいる。
その罅の下から、小さな黒い虫が一匹、這い出した。
思わず足を止めて見ていると、虫は何かを探すように、ひび割れだらけの路面を、小刻みに跳ねて行く。やがて着地した先には、人骨がひとつ。かつては服だったものの残滓を纏って、ビルの外壁に凭れ、足を投げ出している。虫は、その上腕のあたりに飛びうつると、その場でじっと動かなくなった。
あっ、これアレだ。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を読んで、廃墟ビルが朽ちてガラガラ崩れる様子に萌えた結果の産物だ。そんな動機!?
好きな感じの文章をただ延々と連ねた、文章萌え・空気萌えだけの産物で、ストーリー性はいつも以上に薄いです。
『かれの声』 2010年3月
大学生にもクラスというものがあるんだってことを初めて知ったときには、なんだか変な感じがしたものだ。何せ、実際に入る前には、学生たちがてんでばらばらに好き勝手な講義を選ぶという漠然とした(しかもちょっと誤解を含む)イメージがあったし、生憎とあたしには、あらかじめ詳細な情報提供をしてくれるような兄姉とか、仲のいいOBとかはいなかった。
そして、いざその集団の中に入ってみれば、高校のクラスとそれほど違わなかった。まあ、一浪も二浪もして入るようないい大学でもないことだし、ついこの前まで高校生だった連中が大半なのだから、考えてみれば不思議でもない。しいて違いを挙げるなら、少しクラスメイトとの距離感が変わったことと、高校のときほどクラス単位で行動してばかりではないことと、主な集まりの場所が居酒屋になったことくらいか(クラスの大半が未成年なのに)。
これも書き出しがつまんないなあ。佐波(主人公)の、ビミョーにやる気のない感じのひとり語りをやりたかったんだと思うんだけど、せめてもうちょっといいエピソードを思いつかなかったのかな。
もってうまれた特殊能力が災いして、ひとと話すことが苦手になった青年との出会い。ほんのり恋愛テイストのようなそうでもないような青春小説なんですけど、冒頭でそんな感じがぜんぜん出てないです。うー。
『ファナ・ティオトルの学び舎にて』 2010年11月
「よう、鳥野郎にワーキリー。てめえら、あいかわらず景気の悪いツラしてやがるじゃねえか」
僕でさえむっとしたというのに、鳥野郎と呼ばれたアカアシは、眉一つ動かさなかった。それどころか気さくに手を上げると、自慢の冠羽を嬉しげにゆらして、興奮した子どものような声で答えた。
「やあ、シャガン。見たよ、きみの彫ったティカ・ティギの女神像。魂を吸われそうだった」
つややかな羽毛に覆われた蝋羽族(ろううぞく)の表情は、僕らにはなかなか判別がつかないが、胸にぶら下げた翻訳機が伝えるアカアシの語調を聞いていれば、彼が本当にうれしそうに笑っていることは、誰にでもわかる。シャガンはまんざらでもなさそうに鼻をこすると、アカアシの撫で肩を無遠慮に叩いた。
多分このあたりで、ようやく、小説を書くときには冒頭のつかみが大事なんだということに実感がわきはじめていると思われます。って先月かよ! 遅すぎるよ!!
頭の中ではそういうの、前々から知ってたんですけど、実際に書けるかどうかはまた別ということですね……。
『紫鱗に透ける』 2010年12月
カッターの刃を、少しだけ出す。指で押さえながら、ゆっくり、音をたてないように。
窓の外からは、うねるような蝉しぐれ。教壇からは、たいくつな数式のたいくつな解説。昨日もやったような問題を、どうして今日もまた大真面目に説明しているのか、意味がわからない。教師って人種はそろって、中学生なんてみんな馬鹿だと思ってる。
腕にうっすらと浮いた汗をぬぐって、カッターの刃先を、軽くあてる。ゆっくりと、浅く、切れ目を入れる。皮一枚だけ。
皮膚の下、鈍く光る鱗と鱗の境目に、刃を滑り込ませる。
鱗のある部分は、ほかよりちょっとだけ、皮膚が薄い。ひっかけた刃先を、軽く持ち上げる。かさぶたをはがすのよりも、もっと軽い手ごたえ。ぴり、とちいさく痺れるような痛み。
はがれた鱗が、かすかな音を立てて、ノートの上に落ちる。ちょうど爪くらいの大きさで、爪よりはずっと薄い。その下に透けて見える、書きかけて途中で飽きた数式。
最新作。
ということで、振り返って、懐かしさよりもむしろ、ダメージのほうが大きかった気が。あれっ(汗)
どちらかというと、自分の進歩の遅さのほうが目についた気がして、とほほな気持ちですが、しかし、それでも書きながら学んだことも、やっぱり色々あったなあと思いました。亀の歩みではありますが、地道に精進していきたいです。
あと、邪気眼はともかくとして、中二病はむしろ取り戻したいです。怖いもの知らずの十代のときのほうが、あきらかに話のスケールが大きかった……。
最後まで読んでくださった方がいらっしゃるかどうかわかりませんが、お付き合いくださった方、ありがとうございました!
「物書き進化録 リンク集」様 http://www3.rocketbbs.com/601/monokaki.html
ということで、↓のほうに、自分の新旧作から、冒頭部分を抜粋しています。
といってもここ数年、三語なんかもいれたら、やたらと本数を書いたので、とびとびにいくつか拾い上げています。それでもちょっと長いので、興味のない方、さらっとスルーされてくださいねー。
でも、初めて書いた小説はノートに鉛筆だったし、ここ何年かのしか残ってないよなあ……なんて思いながら、何気なくふっと本棚を見たら、隅っこで埃を被っていた、中1のときのノートが目に……あ、あれっ。わたしこれ捨ててなかったっけ(汗だらだら)
でもこれって小説? むしろ落書き? 落書きだよね? と思いつつも、あまりにいたたまれなくなったので、いっそ思い切って晒してみます。恥はかき捨て!(違)
『WAR』 1996年 非公開
大陸暦九一〇年 春――
なんということのない、その年。
十五年に渡って続いている戦争の中の、ある年。
しかし、彼らにとっての始まりではあった。少なくとも。
「もう十五歳。戦争に参加する歳になってしまったんですね……」
呟いた金髪の少年は、どちらかというと温和そうな顔立ちをしていた。手に下げる剣もあまり似合っていない。どこぞの商家か、貴族の一人息子というほうが似合いそうではあった。
……ぎゃー!(※中1のときです)
邪気眼まっしぐらなテイストの、戦争モノで異世界で血みどろのアレコレを書いていた記憶がうっすらあって、これ以上ページをめくる勇気が出てきません……。
小学校の四年か五年くらいのときに小説らしきものを書き始めて、二年か三年かたったころに、構成はデタラメながらも、いちおう「完」ってつけることができた、初めての小説でした。内容はひどい。
『新世界』 2000年頃 非公開
大移動、レイセウス革命、魔術師狩り。いくつもの名前で呼ばれるその事件は、歴史の教科書を開けば、かならず冒頭に記されている。
それはつまるところ王権が滅びて民主性が導入されたときのことであり、人が魔術や呪術といった得体の知れないまじないを捨てて本格的に科学の光で世界を照らし始めた第一歩であり、共和歴の始まりをさす言葉だ。
同時にこれは、魔術師の一族を皇家として大陸の半ば以上を支配していたカルデナ帝国が解体され、多くの小国が乱立した時期でもあった。現在の西大陸フィズグラントに存在する国々のほとんどがそのころ開国した共和国家であり、そのいずれの国でも歴史書はほとんど同じ時代から始まる。
共和歴元年、帝国崩壊。地方貴族の殆どが処刑され、あるいは私刑に遭い、王侯貴族とそれに連なるもの、魔術に僅かたりとも携わるものは滅ぼされる。残ったわずか二千足らずの魔術師達が船団を組み、北部の港より西大陸を離れたとされる。
暗殺者として育てられた少年の話。慕っていた兄貴分が、組織への裏切りの兆候を見せ始めたので、秘密裏に始末するように命令されて……云々。残念ながら邪気眼は高校に入っても治りませんでした。つくづく残念だ。
なんかおそろしいことに、高校の文芸部誌にのっけてもらったような気がしないでも……。
『焔神の末裔』2002年 非公開
それは真夜中、いくつもの松明と竈の炎に照らされてもなお薄暗い、小さな家の中での事だ。室内は、ランプに使われている獣脂が燃える匂いと、なによりも血と汗の臭気に満ちていた。
部屋の中にいるのは、まだ若い男と老爺が一人ずつ、中年を過ぎた女が一人。そして若い母親と、彼女がまさに今産み落とした赤子。それで全員だった。
生まれたばかりの赤子ははじめ、ぴくりとも動かなかった。焦った表情の男が、片手で赤子の身体を逆さに吊るし、空いた片手で強くその小さな身体を叩いた。打擲の音に、母親が悲鳴を上げて目を瞑る。男はその声を無視して続ける。二度、三度。女は、やめて、と出産で弱った身体で這い寄り、男を止めようとその足元に縋った。その手を、老爺が無言で引き離す。
四度目。それまで力なく垂れていた赤子の足が、僅かに撥ねた。
不老不死で激強の主人公が、村の掟によって殺されそうになっていた少女を単身助け出す……みたいな話でした。
あれっ……。構成はぐだぐだだし、内容は引き続き中二病全開なんだけど(※19歳時)、文章は、もしかしてわたし、いまもあんまり進歩して……ない……?(知りたくなかった事実)
いまはもう閉鎖された投稿サイト、アエーマ様に、思い切って投稿させていただいた記憶があります。だからこれ、ある意味わたしのウェブデビウ作なん……だ……。ぎゃー、はやまるんじゃない十九歳のわたし!
『猫の流儀』 2008年 非公開
小学校に入ったころからつい最近までの約十年間、茜にとって、学校からの帰り道はたいてい憂うつだった。
いまどき親が共働きの鍵っ子というのは、それほど珍しくない。同じ境遇の友だち、つまりひとりっ子で鍵っ子の歩美やさゆりは、昔から一人で過ごす時間は別に苦にならないと言ってた。むしろゲームをしたり漫画を読んだりしても怒られない分、親が帰ってきたあとよりも楽だと言って笑ってたくらいだ。
まる四年ほど断筆したあと、やっぱり小説書きたい! ってなって、あたふたもがきだした一本目。書きたい気持ちだけがあって何かいていいかわかんなかったので、とりあえずウチの猫をモデルになんとなく書いてみた的な。
Total Creators! 様の旧サイトに投稿させていただいたのですが、あまりに内容がひどかったので、いまは公開していません。断筆がたたって、あきらかに勘が戻っていないです。継続は力なりってほんとだな……。
『娘へ。』 2009年3月
珍しくも軽快にキーボードを叩き続けていた指が何の拍子にかぴたりと止まり、私はパソコンの画面から視線を上げた。そうして初めて、いつもは周囲の家々から漏れ聞こえている微かな生活音がすっかり絶えて、辺りがしんと静まり返っていることに気付く。それもそのはず、壁の時計を見ると、時刻は既に午前四時を回っていた。
私はひとつ背伸びをして、自分で自分の肩を揉んだ。知らず、ううっと唸り声が漏れる。若い頃であれば、一晩中文章を書いた後の徹夜明けにそのまま出勤し、更に残業して帰る、などという無茶な真似も出来た。五十代も半ばを過ぎようという今になっては、そんな細やかな武勇伝も遠い夢のようだ。
文章がどうこうっていうよりも、なんていうか、つまらない冒頭だなあ……。話の主題がぜんぜん冒頭に出て着てない。
家族愛というか、父娘の話でした。自分の中の屈折したファザコンから出てきた家族小説……。
『或る娼妓の話』 2009年6月
悲しい、悲しいと女が云うので、何がそう悲しいのだと問うと、何もかもが悲しいのだと、涙ながらに訴える。其れ程迄に悲しいと云うのならば、如何して生きて居るのかと訊くと、此れ程悲しいのに死に切れぬ、此の身の浅ましさが余計に悲しいのだと、其の様な事を云っては又泣く。
やがて夕やみが窓辺に忍び入り、昇りかかった下弦の月が白壁に格子模様を落とす頃になっても、女は未だ泣き止まぬ。呆れ返って「自ら命を絶てぬと云うのならば、己が殺してやろうか」と訊くと、女は涙に濡れそぼった黒い目を瞬かせて、じっと此方の貌を見た。その睫毛から涙の一粒が零れ落ちるのに、何とは無しに気を取られて居ると、女は暫らく黙って居たが、やがて紅を注した唇を薄く開いて、「貴方も悲しいのですね」なぞと頓狂な事を云う。
ものすごく読みづらい文体なんだけど、なんか妙に気に入っています。古めかしい文章って、なんか無性に憧れがあるー。
あと多分、書きたかったのはジャイアン現象。ひどい男がちらっと優しさをみせると妙にときめくアレ。
『荒野に吹く風』 2009年10月
湿り気を孕んだ風が、ひとすじ強く吹き抜けて、その先でまたひとつ、古いビルが崩れた。
朽ちて崩れていくのは廃墟ばかりではない、足元の路面もまた、舗装の下から生えてきた雑草に押し上げられて、罅割れ、歪んでいる。
その罅の下から、小さな黒い虫が一匹、這い出した。
思わず足を止めて見ていると、虫は何かを探すように、ひび割れだらけの路面を、小刻みに跳ねて行く。やがて着地した先には、人骨がひとつ。かつては服だったものの残滓を纏って、ビルの外壁に凭れ、足を投げ出している。虫は、その上腕のあたりに飛びうつると、その場でじっと動かなくなった。
あっ、これアレだ。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を読んで、廃墟ビルが朽ちてガラガラ崩れる様子に萌えた結果の産物だ。そんな動機!?
好きな感じの文章をただ延々と連ねた、文章萌え・空気萌えだけの産物で、ストーリー性はいつも以上に薄いです。
『かれの声』 2010年3月
大学生にもクラスというものがあるんだってことを初めて知ったときには、なんだか変な感じがしたものだ。何せ、実際に入る前には、学生たちがてんでばらばらに好き勝手な講義を選ぶという漠然とした(しかもちょっと誤解を含む)イメージがあったし、生憎とあたしには、あらかじめ詳細な情報提供をしてくれるような兄姉とか、仲のいいOBとかはいなかった。
そして、いざその集団の中に入ってみれば、高校のクラスとそれほど違わなかった。まあ、一浪も二浪もして入るようないい大学でもないことだし、ついこの前まで高校生だった連中が大半なのだから、考えてみれば不思議でもない。しいて違いを挙げるなら、少しクラスメイトとの距離感が変わったことと、高校のときほどクラス単位で行動してばかりではないことと、主な集まりの場所が居酒屋になったことくらいか(クラスの大半が未成年なのに)。
これも書き出しがつまんないなあ。佐波(主人公)の、ビミョーにやる気のない感じのひとり語りをやりたかったんだと思うんだけど、せめてもうちょっといいエピソードを思いつかなかったのかな。
もってうまれた特殊能力が災いして、ひとと話すことが苦手になった青年との出会い。ほんのり恋愛テイストのようなそうでもないような青春小説なんですけど、冒頭でそんな感じがぜんぜん出てないです。うー。
『ファナ・ティオトルの学び舎にて』 2010年11月
「よう、鳥野郎にワーキリー。てめえら、あいかわらず景気の悪いツラしてやがるじゃねえか」
僕でさえむっとしたというのに、鳥野郎と呼ばれたアカアシは、眉一つ動かさなかった。それどころか気さくに手を上げると、自慢の冠羽を嬉しげにゆらして、興奮した子どものような声で答えた。
「やあ、シャガン。見たよ、きみの彫ったティカ・ティギの女神像。魂を吸われそうだった」
つややかな羽毛に覆われた蝋羽族(ろううぞく)の表情は、僕らにはなかなか判別がつかないが、胸にぶら下げた翻訳機が伝えるアカアシの語調を聞いていれば、彼が本当にうれしそうに笑っていることは、誰にでもわかる。シャガンはまんざらでもなさそうに鼻をこすると、アカアシの撫で肩を無遠慮に叩いた。
多分このあたりで、ようやく、小説を書くときには冒頭のつかみが大事なんだということに実感がわきはじめていると思われます。って先月かよ! 遅すぎるよ!!
頭の中ではそういうの、前々から知ってたんですけど、実際に書けるかどうかはまた別ということですね……。
『紫鱗に透ける』 2010年12月
カッターの刃を、少しだけ出す。指で押さえながら、ゆっくり、音をたてないように。
窓の外からは、うねるような蝉しぐれ。教壇からは、たいくつな数式のたいくつな解説。昨日もやったような問題を、どうして今日もまた大真面目に説明しているのか、意味がわからない。教師って人種はそろって、中学生なんてみんな馬鹿だと思ってる。
腕にうっすらと浮いた汗をぬぐって、カッターの刃先を、軽くあてる。ゆっくりと、浅く、切れ目を入れる。皮一枚だけ。
皮膚の下、鈍く光る鱗と鱗の境目に、刃を滑り込ませる。
鱗のある部分は、ほかよりちょっとだけ、皮膚が薄い。ひっかけた刃先を、軽く持ち上げる。かさぶたをはがすのよりも、もっと軽い手ごたえ。ぴり、とちいさく痺れるような痛み。
はがれた鱗が、かすかな音を立てて、ノートの上に落ちる。ちょうど爪くらいの大きさで、爪よりはずっと薄い。その下に透けて見える、書きかけて途中で飽きた数式。
最新作。
ということで、振り返って、懐かしさよりもむしろ、ダメージのほうが大きかった気が。あれっ(汗)
どちらかというと、自分の進歩の遅さのほうが目についた気がして、とほほな気持ちですが、しかし、それでも書きながら学んだことも、やっぱり色々あったなあと思いました。亀の歩みではありますが、地道に精進していきたいです。
あと、邪気眼はともかくとして、中二病はむしろ取り戻したいです。怖いもの知らずの十代のときのほうが、あきらかに話のスケールが大きかった……。
最後まで読んでくださった方がいらっしゃるかどうかわかりませんが、お付き合いくださった方、ありがとうございました!
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朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
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自己紹介:
朝陽遥(アサヒ ハルカ)またはHAL.Aの名義であちこち出没します。お気軽にかまってやっていただけるとうれしいです。詳しくはこちらから
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