小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)
読了。
ときは1970年、世の中ではコールドスリープが実用化され、徐々に普及し始めている。(※1950年代に書かれた小説です)とはいえ、それでもまだ、未来の治療法にすがるしかない重病人でもなければ、確実に目覚められる保証もないコールドスリープを、高い金をはらってまでしようという人は、そうはいない。
そんな中、すばらしい発明を次々に生み出した天才技術者の主人公は、技術にしか興味が向かなかったのがわざわいして、友と思っていた相手に会社をのっとられ、恋人にも手ひどく裏切られて、失意のどん底にいた。やけになった主人公は、アルコールの勢いで魔が差して、コールドスリープを決意する。三十年後、いまのままの若い姿で、老婆になったもと恋人の前にあらわれて、その老いた姿を笑ってやろうという、暗い情熱を持って……。
保険会社との契約書にサインをした主人公だったけれど、酒が醒めると気が変わって、そんな消極的な手段ではなく、堂々と裏切り者のふたりにケンカをふっかけにいくことに決める。ところが、相手のほうが一枚上手だった。隙をつかれ、薬物で意思をうばわれて、むりやりコールドスリープの機械に押し込まれた主人公。次に目が覚めると三十年後、西暦2000年になっていた。
復讐すべき相手の消息をもとめ、同時にかつての知己のゆくえを探していた主人公だが、暮らしてゆくためにも、また、技術者としての情熱からも、あたらしい時代の技術を身につけて、あらためて身を立てることを考える。過去をどうにかふっきって、新たな人生を歩もうとしていた主人公だが、やがて未来の世界で、とんでもないものを見つけて……。
面白かった!!
いやもう、夢中で読みました。あと主人公はロリコン。
……と、感想がそれだけじゃいくらなんでもなんなので、もう少し詳しく。
設定としては、コールドスリープや時間旅行、パラドックスといった、わりと古典的なSF。
この本の面白さは設定じゃなくて、その設定をストーリー展開にフルに活かしてあることと、どん底に突き落とされていた主人公が、決意し、奮起して、壁にぶち当たって悪戦苦闘しながらも、やがて機転を利かして、幸福をつかみとる……という波乱に満ちた王道のストーリー。
あと、SF的小道具が、時間旅行のような大げさな部分ばかりじゃなくて、家政ロボットや製図機や、風邪の駆逐された環境だとか、進化型のファスナーだとか、そういう日常臭い部分に及んでいることで、ぐっと親近感というか、生活感が増していて、そこが個人的にとても好きです。
登場人物は、いいやつと嫌なやつがやたらはっきりしているところが、なんか良くも悪くもアメリカっぽいなあ。(←偏見に満ちた発言)しかしその分、後半の展開がものすごい痛快でした。
そしてなにより、猫かっこいいよ、猫……! 主人公の愛猫・ピートの男前っぷりがハンパじゃありません。大好き!
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朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
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