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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
ラスト・イニング (角川文庫)
ラスト・イニング (角川文庫)


 文庫版全6巻+『ラスト・イニング』まで読了。

 じきに中学一年生になる原田巧は、幼いころにボールに魅入られて以来、これまでただひたすらに、いい球を投げることばかりを考えてきた。マウンドからキャッチャーミットまでの18.44メートル。その距離を割いてミットに飛び込む白球。巧にはときどき、ボールが生きて鼓動を打っているように感じられる……。
 ピッチャーとしての素晴らしい才能に恵まれ、ほんの子どもの頃から日々の練習をたゆまず己に課して、野球のことばかりを考えて生きてきた巧。野球だけが大切なことで、そのほかの雑事は何もかも、わずらわしいと思ってきた……。
 父親の転勤に従って、中学進学と同時に引っ越して祖父宅に住むこととなった彼は、中学に入る直前の春休みに、ひとりの少年とであう。永倉豪と名乗る、その同い年の少年は、よく手入れのされたキャッチャーミットをもっていた。

 豪と出会い、仲間たちと出会って、それまで野球以外のことはどうでもいいと思っていた巧が、少しずつかわっていく。
 悪い人間ではないのだけれど野球に無理解な両親、体が弱くてムリをするとすぐに熱を出すのに、自分の真似をしたがる弟。野球とぜんぜん関係のない、納得のいかない指導を押し付けてくる監督……。

 何度となく涙腺が熱くなりました。鋭く尖った、清冽な文章もよかったのだけれど、なにより、キャラクターとその変化が、すごく魅力的でした。
 主人公の巧もだけど、キャッチャーの豪も、弟の青波も、チームメイトもライバルも、それから大人たちも。それぞれに悩み、傷つき、少しずつかわっていく姿に胸が熱くなります。野球以外のことはどうでもいいといいながらも、人を傷つけてしまうたびに、自分も傷つく巧。いつかついていけなくなって、巧の球を捕ることができない日がくるのではないかと悩む豪。兄に憧れながらも自分の弱い体と戦い続ける青波……。思春期の、鋭く尖った感性と、傷ついてもそれを飲み込んで乗り越えていく柔軟さと。
 野球小説として、青春小説として、友情ものとして、あるいは親子の、兄弟の絆を描いた作品として。読んでよかった!

 あと、どうでもいいけど年々青春小説(マンガ)に弱くなっていく自分を感じます……か、加齢のせいにはしたくない。

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