小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。

元刑務官が明かす死刑のすべて
読了。
刑務所の中、死刑囚が収容される一角。刑が確定したあとも、その執行までには何年もの時間がかかる。やけになった囚人の暴動を防ぐ為に、直前まで知らされずにひっそりと執行される死刑……。
書店で見かけ、これは知っているようで知らない世界だと思い、ふらりと手にとってみました。ドラマの中では、刑事や裁判関係はよく出てくるけれど、死刑囚が執行までをどんなふうにすごすかは、あまり語られないですよね。
人を処刑する立場の人々の心理、長年の間の閉鎖環境がもたらした弊害と秘密主義、死刑制度の問題と、死刑廃止運動がかえってもたらした悲劇。わたしたちが普段は眼を逸らしている現実。もと刑務官が綴るノンフィクション。
内容そのものは、読んでよかったと思うのですが、ところどころ暴露本みたいな色があって、それがちょっと苦手だったかもしれません。もちろん、正義感から書かれているということは、読んでいてわかるのだけれど、糾弾調の文章だと、共感よりも、警戒心のほうがつい先に立つというか。この方の仰ることは、物事の大切な一面だけれど、またほかの角度から見つめなおす前に、この意見だけを頭から鵜呑みにするのは、やや尚早ではないかというような。
長年のあいだに降り積もった苦悩や不満がそうさせるのでしょうし、激しい論調になるのは、心情的にはわかる気がする。けれど、人は何かを糾弾するときには、とても視野が狭まるものだから、それをすべての真実であるかのように鵜呑みにして読むのは、ちょっと危険だなとも思います。そういうとき、ひとは自分の立場に偏ったものの見方をするものだから。
もっとも、一見、冷静で公平にみえる文章のほうが、ほんとはもっと騙されそうで危ないのかもしれないんですけど。
さておき、興味深い一冊でした。死刑廃止論の理想と現実。死刑が確定しても、せめて人として死なせたい、罪の重さを自覚して悔いてから死んでほしいという思い。中には以前と人が変わったような、悔悟の色の強く見て取れる死刑囚もいて、そうした囚人と長く日々をすごしたあとに、その相手を刑場に引き立てていく……。
死刑確定者の数であるとか、拘置所の組織であるとか、そういう部分にも意外な思いがしました。
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