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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
 昨日の日記に拍手をくださった方、ありがとうございました! もしかして、同じように出ない本を待ってらっしゃる方だってりして……どきどき。

 今日はラノベじゃない本の話です。
 ロイス・ローリーの『ザ・ギバー』。
 高校の頃、図書室で読んで、忘れられなくなった本です。
 普段外国の小説ってあまり手を出さないのですが、これは印象に残ってて。高校時代はとにかくお金が無かったので、ハードカバーの本を買う経済力がなくて、大人になってから探したら見つけ切れなくて、最近になってやっとネットで中古品を買うことができたのですけれど。久しぶりに読んだらやっぱりよかったです。

 遠い未来。SFでいいのかな。人類は各地に小規模なコミュニティを作って暮らしています。最初はとても平和な始まり方。読んでいるうちに少しずつ、その社会の異常さが浮かび上がってきます。
 徹底的な管理社会。生まれてくる子ども達の数は決められている。子どもを生むのは、出産母の役割を与えられた女性だけ。
 子ども達は十歳からボランティア活動を行うようになり、その様子を観察され、十二歳になると、適職に任命されます。やがて成長すると決められた相手と結婚する。一つの家には父、母、男の子と女の子がひとりずつ与えられるから、人口はずっと変わりません。大人は子ども達が育つと「子育てを終えた大人の家」に移り、老人たちは老人が暮らす場所へ。やがて決められた年齢になって《リリース》されるまで。
 そこは完全な共産社会。必要なものはコミュニティから与えられます。食糧も医薬品も読む本も。管理されたその社会では、危険はほとんどありません。争いもなく、貧困も無く、飢餓も無く、大きな苦痛は何も無い。人は決められたことしかしない。ある意味では完全で、この上無く平和な社会。
 誰も、自分達の生活を疑問に思わずに暮らしています。そんな中、はるか古代からの記憶を受け継ぐ役目の人物が、たった一人います。記憶を伝える者。この人物だけが、古い時代の人々が持っていた記憶や生の感情を、己の《記憶》として受け継いでいます。かつての人類が持っていた、戦いや、貧困や、飢えや、そして愛の記憶を。

 生涯忘れられそうにない一冊です。

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No title
生涯忘れられない本ってありますよね。
ボクの場合、東野圭吾さんの秘密です。
あれがなかったら、ボクはミステリを書き始めなかっただろうなって作品です。
Posted by かなたん 2009.01.25 Sun 00:28 編集
Re: No title
 わ、ご訪問ありがとうございます!
 秘密。有名作品ながら、未読でありました。そのうち読んでみようと思います。
 実をいうと東野さんは出会いが悪くて、「幻夜」「白夜行」「毒笑小説」が、それぞれ面白いはずなのに、なぜかすごく苦手だったんですよね。でも「手紙」はよかったし、探偵ガリレオ「容疑者Xの献身」あたりははまって読みまして、作品ごとに自分の得手不得手が分かれているなあと。それで次はどれに手をつけようかと、選びあぐねていました。多作でいらっしゃいますし。
 なので、すごく参考になります。ありがとうございました。
Posted by HAL.A 2009.01.25 Sun 08:51 編集
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