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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
白鳥異伝 下 (徳間文庫)
白鳥異伝 下 (徳間文庫)


 文庫版上下巻、読了。

 古代日本を舞台にしたファンタジー。『空色勾玉』続編。
 遠子と小倶那のふたりは、勾玉を祀る巫女の一族・橘の家で、双子の兄妹のようにして育った。小倶那は橘の実子ではなく、赤子のうちに川を流されてきたところを拾われた養い子で、長く、その素性は知れなかった。
 子どものころから、誰よりも互いに大切に思いあっていた二人。しかし彼らが健やかな若者に成長したある日、都から訪れた貴人が、小倶那のうまれ素性に察しをつける。そのことをきっかけに、やがて、かれらはどうしようもなく、互いに敵対する運命に飲み込まれていき……

 面白かった。前作『空色勾玉』より断然よかったのは、主人公たちだけじゃなくて、菅流や七掬といった脇役が、とっても魅力的だったからだと思います。世界観も、王道のストーリーも、ともにすごく好みです。面白かった。
 ……のですが。
 それだけに、あとほんのもう少し、と、激しく思ってしまうんです……。前作でも同じことをいいましたが、今回、さらに強く同じことを感じました。

 このままでももちろん名作で、とっても面白い本。でも、あともうほんの少しだけ、キャラクターの関係性と心情描写が、丁寧に掘り下げて描ききられていれば、私にとって、一生の宝物になるような、最高の傑作になったと思うんです……。それがたまらなくもどかしくて、歯軋りするくらい悔しい。読者は好き勝手なことをいうものですが、本気でいいたい放題だなあと、我ながら思います。ファンの方に申し訳ないことを。うー。うー。

 遠子と小倶那が、深くお互いに惹かれあい、思いあっているのだということを、彼らの言葉と行動によって、しっかりと語らせていることには違いないのだけれども、彼らが「どういうふうに」思いあっているのかというところの描写が、弱いように思えてしまいました。
 キャラクターの関係性が、心情のゆれが、ストーリーの枠に収まる定型を超えていないというか、ストーリーに引きずられてしまっているというか。人物の設定が、生きた血肉になっているように感じられなかったというか。
 ストーリーがしっかりしているので、キャラクター性としては、それでも充分なのかもしれないんですけど、生きた人間としての複雑な心情のあや、には、もう少し届いていないような。
 たぶん、わたしが求めるたぐいのものを追求するには、尺が足りないんだと思うんです。倍くらいの長さで、一人ずつの関係性を、ちゃんと書いてあれば、きっと(わたしにとっては)倍くらい面白かった。展開や設定がすごくいいだけに、そこ、もっともっと活かせたでしょう!? と絶叫していました……。

 たぶん、このシリーズを好きなほかの方々からしてみれば、とんでもない難癖というか、ただのワガママです。というか、わたしはどれだけワガママなんでしょうか。
 なんでこんなに悔しがってるかというと、好きなタイプの作品だからです……。作風やジャンルがちょっと違っていれば、それくらいのことを、いちいちこんなに強調して惜しんだりしません。普通に妥協して楽しく読みます。自分でもそういうワガママはどうかと思います……

 でも面白かったです。
 いずれ続編の『薄紅天女』も読んでみようと思います。

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