小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。

インシテミル (文春文庫)
読了。
その求人情報誌に載っていた、人文科学的実験の被験者というアルバイトの広告は、時給一一二〇百円となっていた。
誤植だと思いながら冷やかしのつもりで応募したもの、危ないとわかっていながら金がどうしても必要だったもの、応募した動機はさまざまだったが、ともかくその地下の施設には、十二人の男女が集められた。
その地下施設にあるのは、生活に過不足のない共用空間のほかに、鍵のかからない個室がひとつずつ、それから、監獄と、霊安室。
期間は七日間。何もせず、ただそこですごすだけでも、時給十一万二千円。さらに次の場合、破格のボーナスが加えられるのだという。
すなわち、
人を殺した場合。
人に殺された場合。
人を殺したものを指摘した場合。
人を殺したものを指摘したものを補佐した場合。
面白かった!!
いや、あらすじからして怖そうで、血みどろぽくて、読むかどうか長く迷っていたのですが、読んでみたらすごく面白かったです。
金銭の絡む殺人ゲームという、強い悪意のにおう筋書きには変わりありませんが、そこは語りと描写の妙というべきでしょうか。そういう悪趣味な茶番に怒りと嫌悪を見せる登場人物たちや、にもかかわらず起きてしまう殺人事件の動機など、そうした部分の書き込みが丁寧なことにくわえ、主人公の人がらの愛嬌もあって、思うほどはドロドロしていませんでした。むしろスリルと人物の内面描写のバランスがよくて、読みやすかったです。
わたしはどうも普段から、本格ミステリの類は苦手で、トリックなんかも凝っていれば凝っているほどむしろ苦痛なほうでして、推理がどれほど緻密でも、登場人物の心情の描写が楽しめなければちっとも面白く感じないという、軟派を通り越してむしろ虚弱なミステリ読みなのですが、しかし本作は、推理ものとしても楽しめました。
ふだんは推理小説をまったく推理せずに読む私が、一生懸命事件を整理しながら追いかけたくなりました。本格ミステリが好きな人の気持ちが、ちょっとわかった気がする。
絶妙の伏線の配置と語り、丁寧な謎解き、事件と人物描写のバランス、続きが気になって次のページをどんどんめくらずにはいられない展開。
これまで読んだ米澤さんの作品の中で、一番好きでした。次点は『犬はどこだ』かなあ。
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