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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
約束 (角川文庫)
約束 (角川文庫)


 読了。

 親友に目の前で死なれた少年、足に障害をおってから引きこもるようになった青年、突然耳が聞こえなくなった少年……
 友情や家族愛や恋愛をテーマにした現代小説の短編集。

 全体的に、よかったのはよかったんだけど、ときどき感動を狙いすぎているというか、あざといとまではいかないんだけど、魂の篭もっていない話が混じっている気がして……そ、それはあんまりにも意地悪すぎる批評かなあ。
 すごい辛口なことをいって申し訳ないのだけれども、作家が自分で生きてきて痛切に感じたことを書いている、という手触りが薄い作品が、たまに混じっている気がします。全部じゃないです。たまにです。中の『夕日へ続く道』なんかかなり好きでしたし。

 なにも石田さんがそういう作家さんだというわけじゃなくて、私の行間を読み取る能力とか、感受性とかが鈍いだけなのかもしれないんですが……というか、シロートとはいえ書き手として、お前に人のことは言えるのか。うっ……。

 あっ、誤解を招きそうなことを書きましたが、何も、小説書きは体験談を書けということではないです。ないのだけれど、厚みのあるものを書きたいときには、まさに自分が生きていて感じたことを中心にすえて書かなければならない、ような気がします。
 私小説やエッセイということではなくて、ストーリーや設定は架空でも、登場人物の心情はホンモノを、自分が生きてきた中でつよく感じたことを書かないといけない、というか。……自分の耳もすごく痛い痛い痛い。ええと。

 それにもちろん、荒唐無稽な、あるいは幻想的な、現実の自分とは関係のない小説を書くのも、すごくいいことだと思うんです。現実には体験できないことを仮想体験したり、空想に遊ぶのだって、小説の大きな魅力だもんね。それはまあそれとして。
 それでも本気で人を感動させようというときには、想像しただけの心情では難しいんだよなあと、自戒もこめて思います。そうすることがどれだけ怖くても、中心には自分のことを書かないと。そうでなければ、自分に本当に身近な、その生き様をよく見てきた人をモデルにするというのも、ありかも。

 主軸として感動を求めるタイプの作品じゃなかったら、そんなことはべつにぜんぜん気にしません。架空の物語としてふつうに楽しみます。

 ということで、面白くはあったんだけど、感動ものとしては、ちょっとものたりない感じだったかなあ。そういえば、『4TEEN』のときにもそう思ったのでした。直球で感動を狙うよりも、池袋ウエストゲートパークシリーズみたいな、もっとエンターテイメントに徹した作品のほうが、この方の小説は面白いような気がするなあ。
 しかし『スローグッドバイ』は素直に面白かったし、また何かそのうち探して読んでみようと思います。

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