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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
 読了。

 ある家族の肖像を、家族の一人ひとりの視点から描いた、連作短編集。戦時に友を死なせ、もっとさかのぼればごく幼い頃に生まれてきたことを否定されて、己の生きる意味を見出せないまま、亡霊のように生きてきた父親。その夫との間に愛を築きあげることができず、かつて生まれたばかりで死なせてしまった息子のことを嘆き続けて、病み衰えている母親。晩生な長女と進歩的な妹、二人の娘たちのそれぞれの恋愛……
 それぞれの独立した短編を続けて読むと、大きなひとつの長編になっている形式です。

 重厚。ひとつひとつの短編が非常に重く、しかし心の機微が丁寧に描かれていて、引き込まれて一気に読まずにはいられない力がありました。普段は、「文学!」っていうイメージの作品って、なかなか手を出しかねてしまう軟派な読者なのですが、そういうことをしているからこんな名作を読み逃してきてるんだなと、真面目に反省……

 あと昭和の乙女の晩生さというか恥じらいって、なんか妙に萌えますね!(真面目な感想ぶちこわし!)

 もともと私は前から池澤夏樹さんのファンなのですが、福永武彦さんは、その池澤さんとご縁の深い作家さんで、池澤さんの解説やエッセイから名前を知って、前からずっと気になってはいたのでした。
 読んでよかった。もっと早くに読んでおけば良かった……とも思いはしたけれど、考えてみれば、学生時代にこの作品を読んでいたとして、よさが分かったかどうか。そういう意味では、いま読んで良かったのかな。むしろ、今よりも、もっと歳をとってから読んだほうが、分かるよさがあるような気もします……

 もうずいぶん前にお亡くなりになった方なので、文庫版の在庫を探すのが難しいみたいなんですが(そして全集はかさばるうえに高い……)、ぼちぼち他の作品も探してみたいと思います。

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