小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
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某所の三語企画に投稿したもの。
自分で提案した制限に自分で苦しんだ挙げ句、中途半端な感じに。これぞまさに小説未満。
話が断片的で、完結したとは言いがたいです。続きもないです。雰囲気小説にも程がある!
本当にお暇な方だけ以下略。
----------------------------------------
――死者の魂は何処へ行く。
いつか、黒衣の墓守が言った。
――死は覆らない。何人も死者の尊厳を侵せはしない。理に抗えば、相応の報いがあるだろう。
少女は答えた。――復活こそが理。この現世の在り様こそが、間違いなのです。王は蘇り、世のひずみを正されるでしょう。
今宵こそが復活祭の夜。王国の人々にとっては、満願成就の夜だ。
天頂の青白い月が、ゆっくりと欠けていく。少女はひとつ、しんと澄んだ夜の空気を吸う。風が吹き、細く捩れた樹々がざわめく。人々はそれを喜びに揺れていると解釈した。
ゆっくりと拍子を取って、少女が歌い出す。透明な声は、どこまでも広がっていく。夜気の中に波紋を作り、遠く、遥か遠く。
それを呼び水に、無数の呪文が湧き起こる。千の真言、万の請願、億の祈り。重なり合い、大気に満ちる。唱和する人々の声に大地が揺れる。影の中に溶けていた群集が、顕かになる。
古い伝説があった。
永久凍土の底で、一人の生き神が眠っている。彼らの王だ。万年の刻を氷の中で眠り続ける。刻が至れば蘇りの儀を経て現世に舞い戻る。そして光の軍勢を率い千の王国を平らげる。この世に永遠の楽土を築き上げる……
人々は千年を耐えた。かつて、南の住み良い故郷を追われた民だ。貧しく痩せた北の荒野での暮らしは厳しい。麦も細々としかとれず、冬は長かった。子どもらは飢えと寒さに容易く命を落とす。彼らは故郷を奪った南方の民族を憎んだ。長年の間に降り積もった恨みは根深い。
そして、今宵が聖典の告げる刻。約束された復活の夜。王は蘇り、軍勢を率いて仇敵を撃つだろう。じきに彼らは故郷に帰る。懐かしい聖地、暖かく豊かな楽園へ。
舞台は万全だ。月蝕、星のめぐり、炎、清められた大地。大勢の祈り、歌と舞踊。千年樹、茨と蘇鉄、矢車草。生贄と、銀盆に敷き詰められた聖者の灰。神官が捧げ持つ銀の短剣と聖杯。蝋燭と飴細工のような硝子の錫杖。
やがて、湧き起こる光が世界を満たす。まるで無数の宝石を敷き詰めたよう。柘榴石に金緑石、紅玉に翡翠に琥珀に瑪瑙。日長石に真珠に珊瑚、黄水晶。――光の中、儀式は成立する。月の助けを借りて、潮の助けを借りて。生贄の血、多くの供物と祈りを引き換えに。
万年の氷が溶け、約束された夜、王は蘇る。人々の指標として、永遠の氷の中から。
魔法のように、氷が溶け消えた。
王の骸が中から御姿をあらわす。その容姿は逞しく、美しかった。
人々の間で歓喜のどよめきが上がる。色とりどりの花びらが撒き散らされる。
遠く、どこかで竜が吼える。ちょうど天使達が鳴らす喇叭の音のようだ。復活を言祝ぐようだ。
誰もが熱狂し、歓喜し、充足している。少女だけが不安を押し殺している。降り注ぐ黄金の光をくすませる影を。煌びやかに輝く水面に落ちた黒い染みを。
――蘇りなど、ありはせぬ。
いつか黒衣の男が言った。男の瞳だけが、強い光を宿していた。万年も生きて疲れきった老人のように。永遠の孤独だけを見据え続けてきたように。
弱まる光の中で、王がゆっくりと目を開く。少女は固唾を呑んでそれを見守る。表情は殺している。胸の中では、黒衣の言葉が鳴り響いている。死者の魂は何処へ。何処へ――
「復活おめでとう!」
誰かが大音声に言った。
民衆ではない。王に従うべく集った群衆の誰かではない。
たった一人の声が、万の歓声を破る。あたりはしんと静まり返る。祭壇、王の御許に歩み寄る、小柄な影。それは、人のような形に見えた。まだいとけない少年のような。
「ご苦労だった、人の子らよ」
子どもの姿から、大人の男の声がする。重く、荘厳で、邪悪な声だった。昏い歓びを内に秘めた、人ならぬものの声。群集がとまどい、ざわめきだす。
「どうした、喜べよ。お前らが待ちに待った王だ」
大仰な仕草で、少年は王を指し示す。弱まったとは言え、光はまだ満ちている。逆光になって、王の顔はよく見えない。
少年は自ら、その足元へ跪いた。王はかすかに頷いて、それを許した。
人々もつられて、その場にひれ伏す。重なり合う陶酔が夜気の中に満ちる。僅かにそこに、隠せない怯えの匂いが滲む。
少女は跪いて、ようやく震えている。見ないようにしてきた胸のうちの予感。それが当たったことを、今さら思い知る。
封じられていた王の遺骸。氷の中では、眠っているかのようだった。光を背にする姿は。外気に触れた王の肉体は、ただ骨の――
少女は叫ぶ。神官が、乱心した少女を取り押さえる。恐ろしい姿の王は、寛容に頷いた。その肉のない唇が震える。
『――よく、千年の刻を待った。わが忠実なる臣下よ、民よ』
黄泉の国から吹き上がってくる風のような。人の死に絶えた荒野を吹き抜ける声だった。
声が通り抜けた先の、人々が苦しみ始めた。胸を掻き毟り、呻き、くず折れる。一人残さず、地に倒れ伏した。少女だけが、悲鳴を上げ続けている。
王に従う少年が、薄く微笑んだ。調和を慶ぶように。
「蘇れ、民よ」
少年の姿に似合わない低い声が、告げる。楽しげな笑いを孕んでいる。
その言葉に従い、倒れた人々が起き上がる。その表情にいっさいの戸惑いは見られない。その肌からは一様に、血の気が失せている。死者たちは整然と、膝を折った。
少女はまだ悲鳴を上げている。少年はわずらわしげに振り返った。その視線に射止められ、少女の声が止まる。怯えは顔に張り付いている。喉をふさがれたように、声だけが出ない。
「巫女よ、お前は生かしておく。死者に立ち入れぬ場所に赴くときのために。よく仕えよ」
王は軍勢を率い、千の国を平らげるという。現世に楽土を築きあげるという。骨の王が。死者の王が――
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必須お題:「復活おめでとう!」「飴と蝋燭」「死者の魂は何処へ行く」
縛り「一文を20字以内に収める」「宝石の名前を出すこと」「ライトノベルに仕上げる」
任意お題:「死神の足音」「オブザデッド」「切なさと愛しさと心細さは切っても切り離せないんです」「ご飯、ごはん?ボクはご飯が食べたいの?」(使えず)
自分で提案した制限に自分で苦しんだ挙げ句、中途半端な感じに。これぞまさに小説未満。
話が断片的で、完結したとは言いがたいです。続きもないです。雰囲気小説にも程がある!
本当にお暇な方だけ以下略。
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――死者の魂は何処へ行く。
いつか、黒衣の墓守が言った。
――死は覆らない。何人も死者の尊厳を侵せはしない。理に抗えば、相応の報いがあるだろう。
少女は答えた。――復活こそが理。この現世の在り様こそが、間違いなのです。王は蘇り、世のひずみを正されるでしょう。
今宵こそが復活祭の夜。王国の人々にとっては、満願成就の夜だ。
天頂の青白い月が、ゆっくりと欠けていく。少女はひとつ、しんと澄んだ夜の空気を吸う。風が吹き、細く捩れた樹々がざわめく。人々はそれを喜びに揺れていると解釈した。
ゆっくりと拍子を取って、少女が歌い出す。透明な声は、どこまでも広がっていく。夜気の中に波紋を作り、遠く、遥か遠く。
それを呼び水に、無数の呪文が湧き起こる。千の真言、万の請願、億の祈り。重なり合い、大気に満ちる。唱和する人々の声に大地が揺れる。影の中に溶けていた群集が、顕かになる。
古い伝説があった。
永久凍土の底で、一人の生き神が眠っている。彼らの王だ。万年の刻を氷の中で眠り続ける。刻が至れば蘇りの儀を経て現世に舞い戻る。そして光の軍勢を率い千の王国を平らげる。この世に永遠の楽土を築き上げる……
人々は千年を耐えた。かつて、南の住み良い故郷を追われた民だ。貧しく痩せた北の荒野での暮らしは厳しい。麦も細々としかとれず、冬は長かった。子どもらは飢えと寒さに容易く命を落とす。彼らは故郷を奪った南方の民族を憎んだ。長年の間に降り積もった恨みは根深い。
そして、今宵が聖典の告げる刻。約束された復活の夜。王は蘇り、軍勢を率いて仇敵を撃つだろう。じきに彼らは故郷に帰る。懐かしい聖地、暖かく豊かな楽園へ。
舞台は万全だ。月蝕、星のめぐり、炎、清められた大地。大勢の祈り、歌と舞踊。千年樹、茨と蘇鉄、矢車草。生贄と、銀盆に敷き詰められた聖者の灰。神官が捧げ持つ銀の短剣と聖杯。蝋燭と飴細工のような硝子の錫杖。
やがて、湧き起こる光が世界を満たす。まるで無数の宝石を敷き詰めたよう。柘榴石に金緑石、紅玉に翡翠に琥珀に瑪瑙。日長石に真珠に珊瑚、黄水晶。――光の中、儀式は成立する。月の助けを借りて、潮の助けを借りて。生贄の血、多くの供物と祈りを引き換えに。
万年の氷が溶け、約束された夜、王は蘇る。人々の指標として、永遠の氷の中から。
魔法のように、氷が溶け消えた。
王の骸が中から御姿をあらわす。その容姿は逞しく、美しかった。
人々の間で歓喜のどよめきが上がる。色とりどりの花びらが撒き散らされる。
遠く、どこかで竜が吼える。ちょうど天使達が鳴らす喇叭の音のようだ。復活を言祝ぐようだ。
誰もが熱狂し、歓喜し、充足している。少女だけが不安を押し殺している。降り注ぐ黄金の光をくすませる影を。煌びやかに輝く水面に落ちた黒い染みを。
――蘇りなど、ありはせぬ。
いつか黒衣の男が言った。男の瞳だけが、強い光を宿していた。万年も生きて疲れきった老人のように。永遠の孤独だけを見据え続けてきたように。
弱まる光の中で、王がゆっくりと目を開く。少女は固唾を呑んでそれを見守る。表情は殺している。胸の中では、黒衣の言葉が鳴り響いている。死者の魂は何処へ。何処へ――
「復活おめでとう!」
誰かが大音声に言った。
民衆ではない。王に従うべく集った群衆の誰かではない。
たった一人の声が、万の歓声を破る。あたりはしんと静まり返る。祭壇、王の御許に歩み寄る、小柄な影。それは、人のような形に見えた。まだいとけない少年のような。
「ご苦労だった、人の子らよ」
子どもの姿から、大人の男の声がする。重く、荘厳で、邪悪な声だった。昏い歓びを内に秘めた、人ならぬものの声。群集がとまどい、ざわめきだす。
「どうした、喜べよ。お前らが待ちに待った王だ」
大仰な仕草で、少年は王を指し示す。弱まったとは言え、光はまだ満ちている。逆光になって、王の顔はよく見えない。
少年は自ら、その足元へ跪いた。王はかすかに頷いて、それを許した。
人々もつられて、その場にひれ伏す。重なり合う陶酔が夜気の中に満ちる。僅かにそこに、隠せない怯えの匂いが滲む。
少女は跪いて、ようやく震えている。見ないようにしてきた胸のうちの予感。それが当たったことを、今さら思い知る。
封じられていた王の遺骸。氷の中では、眠っているかのようだった。光を背にする姿は。外気に触れた王の肉体は、ただ骨の――
少女は叫ぶ。神官が、乱心した少女を取り押さえる。恐ろしい姿の王は、寛容に頷いた。その肉のない唇が震える。
『――よく、千年の刻を待った。わが忠実なる臣下よ、民よ』
黄泉の国から吹き上がってくる風のような。人の死に絶えた荒野を吹き抜ける声だった。
声が通り抜けた先の、人々が苦しみ始めた。胸を掻き毟り、呻き、くず折れる。一人残さず、地に倒れ伏した。少女だけが、悲鳴を上げ続けている。
王に従う少年が、薄く微笑んだ。調和を慶ぶように。
「蘇れ、民よ」
少年の姿に似合わない低い声が、告げる。楽しげな笑いを孕んでいる。
その言葉に従い、倒れた人々が起き上がる。その表情にいっさいの戸惑いは見られない。その肌からは一様に、血の気が失せている。死者たちは整然と、膝を折った。
少女はまだ悲鳴を上げている。少年はわずらわしげに振り返った。その視線に射止められ、少女の声が止まる。怯えは顔に張り付いている。喉をふさがれたように、声だけが出ない。
「巫女よ、お前は生かしておく。死者に立ち入れぬ場所に赴くときのために。よく仕えよ」
王は軍勢を率い、千の国を平らげるという。現世に楽土を築きあげるという。骨の王が。死者の王が――
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必須お題:「復活おめでとう!」「飴と蝋燭」「死者の魂は何処へ行く」
縛り「一文を20字以内に収める」「宝石の名前を出すこと」「ライトノベルに仕上げる」
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朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
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