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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
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 読了。上下巻。

 ――自分の足りないところについては、今さら言われるまでもなく、ほうはよく承知している。なにしろ名前の「ほう」は、阿呆のほうだ。
 そんな衝撃的なモノローグとともに登場する少女・ほうは、生まれのせいで幼い頃から大人たちに邪魔者扱いされ、ろくな面倒もみてもらえずに育ち、そのせいで物ごとを知りません。周りの人々からは、頭が足りないのだと言われ続けています。
 意地の悪い大人たちから苛められ、足りないと罵られ、理解の追いつかないことで叱られて。不遇の身であるほうは、けれど、ここぞというときにはいつも、彼女を見守ってくれる優しい人々に出会います。彼らに助けられ、色々なことを教えてもらいながら、少しずつ少しずつ、少女は成長していきます。

 ときは江戸の頃、山海に囲まれて雷害の多く、信心深い土地・丸海に、江戸から加賀殿と呼ばれるひとりの重罪人が流されてくる。流れてきた噂によると、加賀氏はある日気がふれて、自分の妻子を手にかけたのだという。
 罪人とはいえ元高官であり、藩としてはおろそかに扱うこともできない。かといって罪人を厚く遇しすぎても、お上の怒りを買うおそれがある。どちらに転んでも、それが格好の藩のお取り潰しの口実になるかもしれない……。
 さまざまな思惑が絡み合い、陰謀が張り巡らされる中、ものごとの真相は人々の目からは隠される。加賀殿が悪霊になって祟っているのだ、加賀殿がこの地にやってきたことで災いを呼んでいるのだと、そんな不安をはらんだ噂ばかりが渦巻いていく……。

 人々の信心の下に都合よく覆い隠された陰謀。止めようもなく流れていく大きな運命、個人の意思ではどうにもできないことに翻弄され押しつぶされていく人々の、やるせなさ、無力感。悲しい行き違いにより失われていく命……。
 そんな中でも、不器用ながら、精一杯生き抜こうとする人々が登場します。誰かの幸福を願い、何かを守ろうとして走り回る。自分の無力さに押しつぶされそうになりながら、できることを探そうとしている人々の姿が、眩しい。

 悲しい話なのだけれど、最後にはひとつのささやかな、しかし忘れがたい救いが残されます。
 宮部ワールドの魅力は、やるせない、悲しい事件を取り扱った小説でも、必ず救いがあり、読み終えて心に残るのは、人の優しさや情であることだと思います。
 鬼よ悪霊よと恐れられる加賀氏の思わぬ人柄をはじめ、登場する人物たちの人柄、魅力が強く胸に迫る一作。

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