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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
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 八年だか九年だかぶりの再読。

 初読は高校の図書室でした。『24人のビリー・ミリガン』とどっちを先に読んだんだったかな……。ぼろ泣きした覚えがあります。
 最近、文庫がよく本屋さんに平積みしてあるのを見かけていたので、懐かしくなってつい購入。そしてまた泣いた……。
 平日の夜だというのに、明日は仕事だから早く寝ないといけないと分かっているのに、うっかり午後九時ごろに1ページ目を開いてしまって、それから一度も手から本を離さず、読了した現在、午前零時三十分。私は馬鹿か。

 チャーリイ・ゴードンは子どもの頃から発達障がい(この本の中ではそう表現されてはいませんが。書かれたときにはまだ『発達障がい』という名称はなかったか、一般的ではなかったんじゃないかなあ)を抱え、ものを覚えるのが人よりずっと遅かった。彼をからかって笑う人は多かったけれど、人が笑っているとそれだけで嬉しかったチャーリイには、友だちがたくさんいた。
 だけど、チャーリイはいつも、賢くなりたかった。だから仕事帰りに学校に通って、読み書きも一生懸命覚えた。
 そんな彼に、大学教授が頭がよくなる手術を受けさせてくれるという。動物実験は繰り返されてきているが、人間に試すのはこれが初めてで、危険のある可能性は限りなくゼロに近いけれど、絶対ではないという。けれど、チャーリイは迷わなかった。手術が済んだら、賢くなるために一生懸命頑張ろうと、チャーリイは心に誓う……。

 一度も読まれていない方がいらっしゃったら、ぜひお勧めしたい。読んで絶対に損はない、心を打つ一冊。

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6/24追記。
『アルジャーノンに花束を』には、本当に色んなテーマが込められています。
 この本を読んでどこに強く胸を打たれるか、何を思うかということは、本当に人それぞれだろうなあ……。良著というものは、読む人の心をうつす鏡でもあると思います。

 幸せって何だろう。賢くなることは果たして幸福なのか。何かを得るために失わなくてはならないものの大きさ。人間の尊厳の物語であり、親子の物語でもあり、(チャーリイにそのつもりはないにせよ)親の愛を競うきょうだいの物語でもある。あるいはアリスとの愛の物語。
 色んなテーマが込められていても、全編を通して揺るがない確かな軸があるので、けして軽くならない。すごい本です。

 裏表になった劣等感と優越感。人を見下し、嘲笑し、蔑み、非難し、拒絶し、理解を諦め、嫌い、レッテルを貼り……。誰かを傷付けることで自分の弱い心を守ろうとする、そういう心の働きが、どれほど人を傷つけ、人と人の間を隔てているか。だけどそれはきっと、誰の心にも棲んでいる鬼で、見ない振りをしてもけして消えてなくなりはしない、私たちの業なのでしょう。
 だからこそ、人は自分の心の中の闇を否定するのではなく、見つめ、理解して、怯えなければならない。それは恥を知るということなのだと思います。

 読み終えるまでは、とにかく夢中で読みました。一晩おいた今日になって、これが内容を思い返しながら感じた、今の私の感想です。
 何年かして読み返したら、今度はどんなことを思うんだろう。きっと、今とは違う感想が出てくるんだろうな。
 そういう本に出会えることの幸せ、を噛みしめた一夜でした。

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無題
ちょっと作者のメッセージともHALさんの感想ともずれるかもしれないけれど、人って向上することをすごく望むよね。
賢くなりたい。美しくなりたい。お金持ちになりたい。良い人でありたい。
でもそれが達成されたときに必ずしも幸せになれるわけではない。
努力の証を教科書丸暗記で中身が無いと決め付けられ、美人は妬まれ、お金持ちは「金持ちのくせにけちだ」と倹約をののしられ、良い人ほど損をする。
幸せって欲しいけれど、どこに幸せを感じるかが大切だと思う、今日この頃です。
Posted by まりえ 2009.06.24 Wed 08:53 編集
無題
アルジャーノンに花束を。
ボクの中でもすごく大切な本です。
こんな話を書けるようになりたい今日この頃です。

今、アルジャーノンに絡めた作品を書いているのですが、かき分けの難しさを感じています。
ダニエル・キイスも凄いですが、訳者も凄いと思います。
Posted by かなたん 2009.06.24 Wed 19:40 編集
キャサリン様へ
 向上心って、すごくプラスに働くこともあるけれど、ひとつ間違えると人を視野狭窄に陥れる、厄介な代物ですよね。「もっと頑張ろう」が正しく作用する分には大歓迎だけど、頑張りすぎる人は、自分のことで手一杯になって、ときに人への思いやりを失う。

 人を思いやるためには、まず自分に余裕が必要で、だけど何かに必死にとりくむ時期だって、人には必要なんだとも思うんですよね。間違うことでしか学べないことがあるし、必死にならないと得られないものもあるから。

 たとえば自分の愚かしさや無力さから人を傷付け、激しい自己嫌悪に陥ったときに、「こんな自分のままじゃ嫌だ。変わりたい、頑張りたい」と思う。そういう意識の流れだって、人間のもつ聖性のひとつには違いないと思う。
 だけど、それは本人の内からの声だからこそ意味があるもので、人に強制される「頑張らないと」は、ときにとても苦しい……。
 でも、「頑張って」のエールにすごく助けられることもある。「頑張らなくてもいいんだよ」が常に正しいのかというと、「期待されていない」というのはやはり辛いもの。チャーリイだって、もっと時間をもらえれば、きっとパンの成型をできるようになったのに。
 こうしたことに、明確な正解はないのでしょうけれど。

 ……途中から豪快に話が逸れたような気がします(汗) 失礼しました!
Posted by HAL.A URL 2009.06.24 Wed 21:10 編集
かなた様へ
 名訳ですよね!!!
「よくぞこの人が訳してくれた!」と、英語が全く分からない私でも思いました。

 昔読んだ印象も強烈だったけど、また読むと、前とは違う感じかたをしたようです。もちろん今回もすっごく感動したんですけど。
 何年か経った頃に、また読んでみたい一冊です。
Posted by HAL.A URL 2009.06.24 Wed 21:21 編集
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