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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
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 物語はどこにでもあって、そう、たとえば私たちが使っているささやかな道具のひとつにでも、想像の翼をひとたびめぐらせれば易々とは語りつくせない来歴があり、知るべきことが無数にある。語られるべき物語は、どこにでも、ありふれたもののひとつひとつにも、数限りなく眠っている。
 味気の無い工業製品だって、語られるべきストーリーをちゃんと持っている。製造過程で携わった工業ラインの人間の生き方や、開発した研究者の想い、それがラインに乗るまでにあった会社の経営側との折衝や悶着、宣伝や営業の苦労。あるいは、製品の素材にまで遡れば、更なる物語があるかもしれない。
 まして、人の手で作られた工芸品ならなおのことだ。

 昨日の日記の椅子の話であれば、もうすぐ生まれてくる娘がいつか使うための、子ども用の木の椅子をつくり、背板に細工を施している父親の、鑿をつかう不器用な手つきや目線の動きであるとか、手を動かしながら妻と交わした何気ない会話であるとか、その冬の夜に部屋の中で燃えていた暖炉の、ぱちぱちと爆ぜる薪の音であるとか、そういうものこそ語りたいのだと、心のどこかで思っている。

 だけど世界を知り尽くし、語りつくすには人に許される時間はあまりに短すぎて、何かを伝えたいと思えば、物語を要約するほかない。本筋から逸れすぎると、読む人の根気も尽きることだし……。
 なにより主人公の座る椅子の来歴にまで遡って書いていたら、いつまで経っても話が終わらない。やはり小道具は小道具として、詳細は潔く省くべきなのだろうか。

 そう思う一方で、小道具としての椅子が、私の脳内にひっそりと場所を得た森の庵で、次第に質感を持ってくる。
 早世した父親が作って遺した子供用の椅子、素朴な彫りの飾り、枝に遊ぶ小鳥の意匠。あまり器用ではなかったのだろう、大味で、少し不恰好な細工。森の精霊に許しを乞い、樹齢何十年かの櫟の木を一本切り倒して、それを運んで家族の使う食卓と椅子を作った父親。生まれて間もなく病を得て亡くなっているため、主人公は顔も覚えていない。
 素人大工の作った椅子はとうに古びて壊れかけていて、よく軋むし、もう育った主人公が座るには小さすぎる。高いところに手を伸ばすための踏み台にするのも怖いような軋み方をするので、すでにほとんど使い道はないのだけれど、それでも主人公には捨てられない。壊して再利用する気にもなれない。
 家の中にはそういう古い道具類がたくさんあって、主人公である少女はひっそりと森の奥、今はひとりで暮らしながら、人恋しいと感じる自分の思いを押し殺そうとしている。彼女には、人と深く関われない事情があるからだ。……

 椅子のことを本文中で書くかどうかは決めていないのだけれど、そうやって細々とイメージワークを続けています。書く気は本当にあるのか……。あっためすぎて機を逸するんじゃないのか。いいかげんにしなさい、という声が自分の心の片隅から響く。まったくもう、飽きっぽいのに変な所で凝り性なんだから。

 ところでイチイのつもりで「櫟」と表記してたんですけど、クヌギも「櫟」と書くんですね。別の木なのに! ワープロ辞書では出てこないけど、Wikipedia先生が「櫟」のあいまいさ回避で二種類案内してらしたので、あれっと思って辞書引いてみました。そうしたら、確かに「クヌギ」の項目に「櫟・椚」と書いてある。
 ところが、ワープロ辞書ではさっと変換候補にでてくるクヌギの「橡」という字が、手持ちの国語辞典に載っていない。思わず漢語林を引っ張ってくると、こっちにはちゃんと、これでクヌギとも読むんだよ、と書いてある。それはいいんだけど、この橡という字は、「とち」とも読んで、トチノキのことらしい。トチノキのトチといったら、栃木の栃だと思ってた。(※そっちの字でも表記するようです)
 もちろんトチノキとクヌギは別の木。トチノキはトチノキ科で、クヌギはブナ科だそうです。
 なんでこんなことになってるんだろうと首をひねって、おかしな語源萌えが胸の奥で燻りはじめ、さらに調べたくなってきたところで、はっと我に返りました。放っておくとどこまでも脱線していくな、この女は!

 正直なところを言えば、実際の木材としてのイチイやブナやクヌギを触ってみてから何の木にするか決めたいくらい。というか、できることならば生えてる森林を見てから書きたい。……そのためだけに旅行とか行けませんから。そんな優雅な生活してませんから。

 そのうちホームセンターで木片でも買ってきて、ニヤニヤしながら下手くそな木彫り細工でもつくり始めそうな自分が嫌だ……楽しそうだけど、小説が先に進まないよ! 
 図鑑でも買おうかな……と思ったら、ネット上に樹木図鑑があった。インターネットってほんと便利ですね!
 そして樹木図鑑をながめてるうちに、軽く一時間とか経つんですよね。こうしてみると、自分が遅筆な理由がよく分かる……タイプ速度が遅いんじゃないんだよ。

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