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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
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 読了。

 幼い頃に淡路から北海道へ入植した宗方家の兄弟には、アイヌの友がいた。兄の三郎は農学校で学んだ知識を活かし、アイヌの人々の力を借りて土地を開拓し、気候に適した作物を植え、牧場を初めることにした。
 おりしも、和人のアイヌへの迫害は勢いを増していたころだった。アイヌの子と親しくしているというだけで世間から白い目で見られる、そんな時代だった。
 初めての収穫の頃、近隣地域がバッタの大量発生により飢饉に見舞われた。作物の茎も葉もやられたが、いくらかのジャガイモだけが、かろうじて土の中に残されていた。
 乱獲のせいで、鮭も鹿も数を減らしていた。和人は援助を受けてかろうじて食いつないでいけそうだったが、アイヌの人々は、飢えて冬を越せずに死ぬしかないと思われた。
 飢える和人を差し置いて、アイヌの人々にこれを渡したことを人に知られれば、どんな目に合うか分からない。三郎は大きな選択を迫られた――。

 フィクションだけれど、作者の曽祖父とその兄をモデルにした、史実に沿った話だそうです。登場人物は創作だけれど、大筋は事実ということ。

 たまたま先般読んだエッセイ『ぐるりのこと』の中にも、アイヌの人々の伝承についてちらっと触れてあったんですけど、文字を持たない代わりに、とても記憶力のある人々だったとのこと。物語は全て、口承で語り継がれてきたんですね。

 話は『静かな大地』に戻りますが、作中で主人公の由良という女性が、自分の夫や子らにアイヌの伝承を話してきかせながら、喜んで話を聴く家族に対して、「これじゃだめだ」と首を振るシーンがありました。以下抜粋。
「ええ。今、わたしはこの話を十五分くらいで読んでしまったでしょう。でも本当は一時間も二時間もかかるお話なのではないかしら。
 同じような響きの言葉を何度も繰り返して、ゆっくりと少しずつ筋をたどって、聞いている人たちが心から怖がったり、安心したり、嬉しい気持ちになったり、そうやって楽しく一晩を過ごすようなお話。
 最初から最後まで筋を知っている人でも、モロタンネのお婆さんが話すとなれば、その話しぶりが聞きたくて冬の寒い道を遠くから歩いてやってくる。
 紙の上に字を書いたのを読んでも、そういう楽しさは伝わらないわ」――

 冬の長い夜、火を囲んで、目を輝かせる子どもたちや大人たちに向かって、語り部がゆっくりと抑揚をつけて語る話。
 ああ、物語の理想形だなあ……と、ぼんやり思い耽ってしまいました。紙に書かれた本を読むことも小説を書くことも、大好きなんですけどね。

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