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このところわけもなく読書ペースが落ち気味なのですが、なんでなんだろうなあ。勢いの足りなさを、自分でちょっと悔しく思います。せっかくの読書の秋だったのにな。
暦ではまだまだ秋ですが、しかし実際的には、もう冬の入り口に片足突っ込みましたね。寒いです。寒いのがすごく苦手なので、とても憂鬱なのですが、しかし冬には猫が布団に入ってくるという楽しみもあるので、まあしかたがないかと思います。ストーブの前で猫玉に混じって丸くなるという楽しみもあるしね。しかし自分の部屋が寒すぎて、パソコンの前に長時間いられません。暖房器具……
そんなスローペースな読書生活ですが、一週間ほどかけて、バルザック「ゴリオ爺さん」を読みました。初バルザック。(オススメありがとうございます!)
最初のほうの文章がびっくりするくらいくどくて、そのくどい言い回しが面白いような気がする瞬間と、あまりのくどさに読み飛ばしたくなる瞬間が交互にやってきていましたが、そこを堪えて読んでいたら、中盤以降、いつの間にか読みふけっていました。そして夢中になって後半を読み、読み終わってがつんとヘコみました。
エグい小説でした。何がエグいって、猟奇描写がどうとかいうのはないのですが、「金がいかに人生を狂わせるか」というような小説でした。本来は愛情深い人からさえも、欲望が人間性を喪失させるという話です。
お金って、怖いです。大事だし、ないと困るんだけど、あればあったで、ある以上に際限なく使いたくなります。あるうちはいいのだけれど、なくなってもその依存性から抜け出すのが難しいという、しばしば悪魔のような顔を見せる存在でもあります。
もちろん、お金持ちの人がけちけちしてお金を遣ってくれないと、世の中の経済が回らなくなって貧乏人が困るので、お金を余らせている人には、ぜひとも浪費していただきたいものです。
しかし人というものは、ひとたび贅沢に慣れてしまうと、そうそう後戻りはできないものですね。生まれつきお金持ちの家で育った人が、貧乏な暮らしができないというのではなく、窮乏を知っている人でさえ、一度お金を持ってしまえば、なかなかもとの暮らしに戻る覚悟が決まらないものです。以前より収入が減り、節約せねばならないというのに、あるいは自分では節約しているつもりなのに、沁みついた習慣が元のペースでの購買をさせようとします。人間は基本的に、そういう習性を持っている。
たとえ破産して夜逃げしようが、不運に見舞われて働けない体になろうが、本来、福祉に頼って清貧に徹する覚悟さえあれば、ともかくなんとか生きてはゆける社会になっています。とても有難いことで、それに救われる人も実際にたくさんいます。でも、それを実践しつつ、その中に十分な幸福を見いだせる人は、あんがい少ない。もちろん、いないとは申しません。でも、周りがみんな豊かにしているように見えるときには、お金がないというのは、しばしばひどくつらく感じられるものです。
なんとか窮状から抜け出して、汗水流して働いて稼げるようになれれば、それが一番いい。でもそれができない場合もある。いま自分がすでに手に持っているものだけで満足できないというのは、人間を行動に駆り立てる原動力にもなりうるけれど、それが常にプラスに働くとは限らない。大半の人というのは、そんなに強くはありません。
社会に出て働くうちに、あるいは自分の身の回りで、お金で苦労する人を見る機会は、少なくなくて。困窮する人、飛び込んできたお金に踊らされる人たちと関わり、思い悩む機会が何度となくあって、その上でこういう小説を読むと、なんというか、ものすごく心に堪えるものがあります。本当に、お金は人をおかしくするんだよ……。
といっても、読みたくなかったというわけではなく、いい小説でした。娘たちに盲目的に愛と金を与え続けた不幸な父親が、ただどこまでも心の清い献身的な父性の塊だというわけではなく、人間的な、エゴに満ちた存在として描かれているのがよかった。
ちょっとしばらく忘れられなさそう。
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