書き手が何歳くらいに見えるか、というような話を昨日書きましたが、年齢といえば、自分の書くものがどの年齢層の方まで通じるのか、ということもありますね。
上の世代の方からご覧になったときに、あまりに幼稚で読むに堪えなかったりして。あるいはお若い方が読まれたときに、退屈なだけで何が面白いかわからないものになってたりしないかなあとかって、たまにふと考えこんでみたり……
まあ、人を年齢や性別でひとくくりにしたって、実際にはそんなもん人それぞれなので、どこまでいっても結局は、一般論にしかならないんですけど。
そういえば、年齢や性別でレッテル貼られてひとくくりに語られるのって、十代のころ、すごくいやだったなあ。いまやぜんぜん気にならなくなってしまって、そういうところからどんどん、子どもだったころのこと、忘れちゃうんだなって思います。
まあ、あれこれ考えたところで、結局は自分に書けるものしか書けないか。ときには背伸びしてみるのも楽しいかもしれないけど、限度があるもんね。
話がちょっとかわりますが、性別といえば、人様の小説を読んでいて、たまに「ああ、これは女にはちょっと読むのが辛い」とか、逆に「あーこのシーンの機微は男性読者にはきっとピンとこないだろうな」なんて思う場合もあります。
この表現は女性読者にはなかなか受け入れがたいような気がする……とかって、ついついいらん口を出しちゃうときもあって。なんだかちょっと、もったいないような気がするんですね。最初から読者の半分近くを切り捨てるようなのって、不利なんじゃないかなって。
でもよくよく考えてみれば、じゃあそこで間口を広くとるのが、必ずしもいいことなのかなって思ったりもして。
しばらく前にツイッターで、ゲームデザイナー・作家の芝村裕吏さんが、人の心に深く届く文章というのは、切れ味の鋭い刃のようなものだという話をされていて、たいへん感銘を受けたんです。あるいは、小説というのは常に読者へのラブレターなのであって、ラブレターというものは、誰にでも聞こえのいいような言葉を書くのではだめだと。
(……と、記憶に基づいて書いていますので、細部が違っていたら申し訳ないです・汗)
それってホントに、そうだよなって思います。
そりゃ書き手としては正直、多くの人の心に届けば嬉しい。でも、全ての人にいいように読まれたいっていうのは、どのみち無理な話で。
女性読者のほとんどをばっさり切り捨てているような小説でも、その人を選ぶような箇所が、男性読者に熱烈にウケてがっつりハートをつかむのならば、それって書き手として大きな成果だし、プロならきっと、商業的にも成功ですね。
はじめからどちらかの性別、あるいは一定の年齢層をターゲットに据えるっていうのは、戦略としてまっとうです。もちろん、ターゲットのつもりじゃなかった層の人にも結果的に受け入れられたら、それはそれでもうけものだけど。
極端な話、官能小説とかBLとかってそういうことですよね。読者側にももちろん例外はいるけど……
軍事系のフィクションなんかもそうかな。ミリオタ以外の人にはちんぷんかんぷんだったりするけど、そのニッチが立派にジャンルとして成立している。裾野はほかの一般文芸に比べて広くないかもしれないけれど、そのかわり、そこには熱烈なファンがいるわけで。
逆に、古くから読み継がれている海外古典の名作なんかには、ぐっと普遍性の高いものが多いですね。時代や国がどれだけ違っても、ほとんどの人は人を愛し、憎み、嫉妬し、恋をしている。そういう題材は風化しづらいし、多くの人に通用する。
でも、じゃあ人を選ぶ小説が駄目なのかというと、そんなことはない。その時代の、中でも一定の層の人にしか通用しないような小説は、あっていい。というより、あるべきです。多数派に受け入れられる小説しかないという世の中は、つまらないから。
そういう諸々を考えると、「この場面は女性にはちょっと……」なんていうのは、やっぱり見当はずれな意見だったのかもなあとかって、反省してみたりもして。
そもそも先入観も偏見もなく、いろんなものを幅広く美味しくいただけちゃうほうが、読み手としては幸せなことなんですよね。あれ苦手これ嫌いそういうのダメって、偏食が激しいよりも、あれもこれもそっちも別腹で萌える! っていうほうが、人生きっと楽しい。
萌えの幅が広いほうが、書き手としての対応力も増えるかもしれないし。
どうしたって偏見を完全にはなくせないのが人間だけど、まあでも、幅を広げる努力はしてみてもいいのかもしれない。どうしても合わないものについては、それはそれで仕方ないんでしょうけど。
……なんてとりとめもなく考えつつ、じつは明日から出張です。ちょっとバタバタするので、二、三日ほどネット上にあんまり顔を出さないかもしれませんが、元気に働いていますので、ご心配なく。
何かご用がありましたら、若干レスポンスが遅れるかもしれませんが、どうかご容赦くださいませ。
多様性がなくなりますね。
それに理解できない分野を弾劾できるなら自分のお気に入りも危うい。
芝村さんの言葉はなんだかはっとさせられました。ラブレターは書けてないなぁって改めて自己満足を確認。素敵な言葉をありがとうございます。
精進のためにも中二病祭に参加させていただきます!
芝村さんはとても個性的な方なので、合う合わないがわかれるようですが、熱烈なファンの多い作家さんでもあるんですよ~。ゲームのシナリオやキャラクターデザイン、漫画の原作など、幅広く活躍されているのですが、ちかごろ出された小説「マージナル・オペレーション」がツボにはまって、あらためてハマりなおしたところでした。
中二病イベント参戦してくださるとのこと、とても嬉しいです! 年内いっぱいやっておりますので、楽しんで書かれてくださいませね。楽しみにお待ちしています!
久々すぎて名義表記の違いに一瞬戸惑ってしまいました。。。
以降、もっと定期的に訪問を心がけます。
様々な作品を評し評され、自分の視界が少しでも広がれば素敵ですよね。
またお邪魔します。
批評ってむずかしいですね。それぞれのポリシーもあるし、よかれと思っていったことがとんだ見当違いだったり、かえってマイナスに働いたりもして……。批評をお願いに行くほうにも覚悟と割り切りがいるし、批評する側も、その姿勢を問われるなあと、つくづく思います。
そうなんです、いまさらながら、ようやく改名(?)いたしました。心機一転……というわけでもないのですが、ずっと昔に使っていた筆名に戻す次第と相成りました。あらためまして、どうぞよろしくお願いいたします!
まさに多様性がなくなりますよねw
個人的には「〇〇がダメとか受け付けないなんて、本当はよくないことなんだよなあ」と言うのはそうじゃなくて、これを受け入れる、あれを拒むの選択すべてを認めてでの多様性なのかなとかも思います。
あれも受け付けない、これも受け付けない、という人もそれはそれでひとつの性格で、そういう人が作る独特の世界も、魅力的かも知れませんよ!偏りだって個性!
ところで自分は、どうせ作るなら万人に面白いと言ってもらえる作品が目標ですwたとえ理想だよといわれたとしても……!
まさに多様性がなくなりますよねw
個人的には「〇〇がダメとか受け付けないなんて、本当はよくないことなんだよなあ」と言うのはそうじゃなくて、これを受け入れる、あれを拒むの選択すべてを認めてでの多様性なのかなとかも思います。
あれも受け付けない、これも受け付けない、という人もそれはそれでひとつの性格で、そういう人が作る独特の世界も、魅力的かも知れませんよ!偏りだって個性!
ところで自分は、どうせ作るなら万人に面白いと言ってもらえる作品が目標ですwたとえ理想だよといわれたとしても……!
コメントありがとうございます。なんだろう、巧い人、面白い小説にこそ、気になったところがあると余計に口出しをしたくなるような、妙な心理があるなって思います……
しかしなんでも正直にいえばいいってもんじゃないなと思って、しみじみ反省しました。その方が好きで書かれている場合には、完全に余計な口出しですもんね。
なんだろう、嫌いなものが多いよりは、好きなものが多いほうが、人生が楽しいよなあとかって思います。どうしても嫌いなものがあるのなら、無理して食べることはないんだけど、嫌いなものが多い=通な自分カッコイイ、みたいなのは、ちょっと違うなっていうか。偏食そのものは、まあそんなに恥じなくたっていいんでしょうけど、わざわざ自慢することでもないかなって。
書き手のほうが、お子様舌にもピーマンが美味しく食べられる工夫をすることは、いいことだと思うんですけども。馬鹿だなあピーマンのこの苦みが美味しいんじゃないかっていう人がいる以上、読み手がわから書き手に対して「ピーマン入れるなよ」っていうのは、ちょっとどうなんだろうなって。
読書って、読み手側からは作者との一対一の関係だけど、書き手がわからはそうではないっていう、当たり前といえば当たり前の部分ですよね。作者さんはうちの母ちゃんじゃなくて、レストランの料理人さんですもんね。お客さんは自分ひとりじゃないのに、なんか、感想を書くときには、案外それを忘れそうになってるなって思いました。
本当に料理が不味くて、指摘してもらったほうがためになる場合もあるかもしれないので、難しいところだとは思うんですけど。
……って、だんだん何の話だかわからなくなってきました。すみません(汗)
全ての人に愛されるのは無理でも、多くの人に楽しんでもらえるものが書けたら、やっぱり書き手としては幸せですよね。ちょっとは見習います。理想は高く!
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