今回は中編部門からピックアップ。例によって、ほかにも良作力作いろいろとあったのですが、ここでは個人的な好みに基づいて、二作品紹介させていただきますね。
「吉祥寺宇宙人事情」 時雨煮さま
http://ncode.syosetu.com/n7463bh/
地球人にはその存在を知られずに、ひっそりと地球で暮らしている宇宙人たちがいる。主人公の亡くなった祖母は、どうやら彼らの「相談役」として、ひそかに活躍していたらしい。
祖母の葬儀が終わったあと、主人公はよくわけがわかっていないながら、その相談役を引き継いでみることに決めるが……
事件を解決すべく走り回る展開でありながらも、ストーリーとしては、全体的にのんびりとしています。宇宙スケールの設定など、ちょっとした拍子に垣間見えつつも、本編に悲壮感とか壮大なアレとかは、あんまり感じられない。手に汗にぎってとか、読んで滂沱の涙がとかいう作品ではないです。
だけど、声を大にしていいたい。わたし、このお話、大好きです。
キャラクターと、描写と、小道具、それからSF設定のさりげない魅せ方。妙に鈍くてすっとぼけた主人公が可笑しいやら、周りの宇宙人たちがみょうに親しみが持てるやら、猫に寄生した宇宙人たちが可愛いやら……もう大好き。それから小道具とか言葉選びのセンスが、絶妙にツボでした。
小説の本質は、筋書きや構成ではなくて、細部に宿ると思う。オススメです。
「星の海から“StackedAges”」 ぷよ夫さま
http://ncode.syosetu.com/n6383bh/
若くして宇宙軍の中佐になり巡洋艦の艦長を務める主人公は、これからおもむく外交任務のサポート役として、腕のいいテレパスを預かることになる。けれどやってきたそのテレパスは、たった十四歳の女の子で……
ライトなタッチの掛け合いから始まって、やがて壮大なスペースオペラへ。楽しくも美味しい小説でした。
じつは最初のほうを読んでいるときには、自分の好みからするとややライトすぎるかなあとか、描写や細部の設定がざっくりしてるなあとか、ちょっと思ってたんです。(ほんと棚上げで申し訳ない……!)
だけど、読んでいたらいつのまにかがっつりはまってました。はじめのうちにはちょっと気になっていたようなことも、読んでいるうちにだんだん味に思えてきた。
なによりキャラクターがよかったです。
ヒロインであるところのマキちゃんが、なんていうかもう、可愛すぎです。協力なテレパシーを持っているがゆえに、近くにいる人々の思考が筒抜けで伝わってしまう。そのせいで、いろんな大人の事情を見ながら育ってしまった女の子。そのぶんひねくれてるんだけど、でも芯のところはまっすぐで。
実はデキる男なのにすっとぼけた主人公もよかった。昼行燈とみせかけて、いざというときに見せる頼りがい。そして彼のとぼけたキャラクターのおかげで、重いはずのストーリーが読んでいてちっとも苦にならない。終始読んでいて楽しかったです。
期間中に間に合えば、短編からも何本か紹介したいなあ。掌編部門については、今回そもそも参加作品数が少ないですし、あらためてオススメをピックアップしなくても多くの方が読まれるんじゃないかなと踏んでますので、あえて割愛させていただこうかと思います。(すみません……)
ほかにも良作多数ですので、お時間のある方は、作品ページ(http://sffestafinal.kumogakure.com/sakuhin.html)のあらすじなど参考にされつつ、ぜひほかの作品も読んでみられてくださいね。
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