某所で火の国にコメントいただいてました。う、嬉しい……!
とこしえ世界の話は、まだ脳内地図のなかに書きたい地域やエピソードがいくつもあるのだけど、一本のストーリーに仕立てるほどまとまってなくて、いっとき時間がいりそうです。だけどいつか、また書く。
鳥たちの楽園の話は、すごくグロテスクな話になりかねなくて、いちど書きかけたのですが、慌ててストップしました。救いのない話を、救いのないままに書くのは避けたい。希望の残るオチを見出せたなら、いつか再挑戦します。
今日は思い切り惰眠をむさぼったあと、預かっている子猫と遊んで、そのあとはずっと池澤夏樹「氷山の南」を読んでいました。いい休日でした。
池澤さんの小説はいずれも、読んでいて、外の風を感じる作品ばかりです。ストーリーがどうとかいうよりも、そのもっと手前の部分で、この方のものの見方、その広い視点、透明なまなざしに、強く惹かれます。その叡智のおこぼれにあずかって、自分のものの見方も、知らずにとらわれていたくびきから放たれて、広がる……ような気がする。
ご本人もいつかエッセイの中で、本を読むことは旅をすることと似ているという話を書いておられましたが、まさしくそうした、旅をするように読む小説だと思います。家の中にいながらにして、南極海に悠然と浮かぶ巨大な氷山を思い、アボリジニの信仰と文化を思い、クジラの歌声を、アイヌの楽器の音色を、この耳で聞いたかのような気持ちになる。
読み終えて、クジラの歌について、インターネットで調べてみました。それから、アイヌの竹でできた楽器、ムックリのことも。どちらもYoutubeで聞くことができて、不思議な感慨がありました。「クジラの歌ってどんなだろう?」と思った五分後には、録音とはいえその歌声を耳にすることができる。インターネットというものは、すごい(善し悪しは別としても)。いまさらですが、あらためてしみじみと思いました。
いつか生で聞く機会があったらいいな。
そういえばクジラについては、池澤さんは「クジラが見る夢」というエッセイも出されています。写真がたくさん載った本で、素潜りの達人であるジャック・マイヨール氏とともに、野生のイルカやクジラたちと過ごした日々のこと。いま手元にあったのを確認したところ、新潮文庫版が平成十年四月刊行、もとは平成六年に出た本でした。
高校のときに池澤さんの本に出会って、ほれ込んで、自分でも少ない小遣いの中から、少しずつ集め始めて。クジラが見る夢は、ちょうどその頃に買ったものなので、思い入れがあります。
同様に、北海道出身の著者ご自身にもゆかりのあるアイヌの人々を描いた小説で、少し前に「静かな大地」という作品が出ていて、そちらも素晴らしかったです。
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