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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。

 書き終わってしばらくすると、書いた経過を何でもかんでも忘れてしまうので、「火の国~」を書いた時のログを、備忘を兼ねて残しておきます。
 ミステリでもないし、ネタバレといってもたかが知れてますが、苦手な方は読み飛ばしていただければ幸いです。

「火の国~」の中で、死者の国についての話を書きました。
 地下世界は、なにせ水の多い湿った岩窟ですから、清潔を保っていなければ、すぐに疫病にやられて全滅してしまうでしょう。なので、エルトーハ・ファティスでは掃除と洗濯と水浴びがとても重要な役割をもっていて、下水の管理も徹底しているはず……というようなことを考えたのが、たしか最初のきっかけでした。
 具体的には、交わらないいくつかの地下水脈があって、用途によって厳密に水場を使い分けているっていうのを考えていました。上水道、下水道、水耕栽培、それから水葬。

 穢れに敏感な文化なのだと思います。文字通りの汚穢もですが、死者は、死んだら早いうちに、水に流してしまう。とくに病で死したる者は、大急ぎで流さねばならない。そうせねば、骸を依りしろにして、疫神がその力をふるう。(……と、ファンタジー的表記に変換しました。)

 なので、彼女らにとっての想像上の死者の国は、流れてゆく水の先にある、水底の国です。冷たく早い水の流れに揉まれて、死者のなきがらが流されてゆきます。その行き着く先は、せめて穏やかで静かな場所であってほしいと、残されたものは思うでしょう。それで、水底の国は静謐な場所で、人々はそこでたゆたいながら眠っているのだという話になりました。
 それなら地上の、火の国では、死者の国はどういうものだといわれているのだろう。何か、地下でいう死者の国とは雰囲気の違う冥府だったら、対比になっていいなあ、と漠然と思いました。

 そんなふうに考えながら書いていたら、ヨブが話し始めてくれました。地上では、死者は地面の下に埋めてしまう。肉体はそこで朽ち、魂は骸を抜け出て、冥府に向かうのだと。
 砂漠でいう冥府は、きっと乾いた場所でしょう。あまり細かいところまでは決めていませんが、星のない闇夜かもしれません。

 ちょっと話が脇道にそれますが、冥府といえば、地球上の砂漠地帯に本当に存在する「死者の町」についての話がとても印象深くて、けれどそのまま借用するには、ちょっと世界観のイメージが違うかなあと思ったんです。なので、作中では、魂だけがどこかこの世ではない冥府に旅立つことにしたのですが、しかし、そういう都合を無視すれば、死者の町のほうがうつくしい気がします。

 本物の死者の町が、美しいものかどうかは、よく知らないのですが。いつか勉強しようと思いつつも、実際のものがどういう感じなのかを知る前に、勝手な想像を膨らませて、自分の頭の中だけの死者の町を描いてみたいような気もします。

 さておき、ヨブたちの暮らす砂漠の伝承によれば、世界の始まりには、ただ暗闇があり、その中から闇が凝って大地が生まれたことになっているそうです。その大地には、死せる人と死せる獣とがいたのだと。やがて天に星が生まれ、空が巡るようになり、昼と夜とがわかれて、生者が地上に暮らすようになった。
 生きている者が死んで死者になるのが普通なのに、その話を信じるならば、生者よりも死者が先にいたことになる。それが不思議だと、トゥイヤが首をかしげます。
 それを受けてヨブが、生まれてくる前には、人は皆、死んでいる――砂漠ではそのようにいうのだと説明する。

 その話は、どこからやってきたんだろうなあと、書き終わってからいまさら、なんとなくいつまでも考えています。そんな話を、自分のあたまで思いつくとは思えないので(……)、たぶんどこかで元ネタ的な、発端になった話を聞き込んできたのだと思うんですけど。

 ファンタジーを書くにあたって、これまで吸収してきた萌えを、いろんなところから引っ張ってきているんですけど、あいにくの残念な記憶力なので、元ネタがどこにあって、もともとはどういう形だったのか、すっかり思いだせなくなっていて、微妙に悶々とします。というか、元ネタが本当にあったのかどうかも、自信がありません。
 書く前のプロットと推敲で何回も何回も反芻するから、たまに本当に自分で考えたことでも、元ネタがどっかにあるような気がしているときがあります……。それもどうなんだろう。

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