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ル・グウィンのファンタジー・SF論「夜の言葉」を読みかかっています。
重たいです。そんで手厳しい。舌鋒鋭いというか。
十代とかで読んだらどう思ったかわからないけれど。読み手として年齢と読書量がじわじわ上がっていくにつれて、批判的な文章・断定形の文章は、鵜呑みにする前にワンクッション置くという反射が出来上がっていますので、ときに名前を挙げて他者の小説作品をバサッと容赦なく切り伏せるような論調の評論は、うんうん頷いて素直に鵜呑みにできないのですが。(まして、批判されている作品を自分が未読のときには)
でも、そこはそれ。読み進めるにつれて、その手厳しさが、文学というもの、ファンタジーやSFのもつ力や意味について、ものすごく真剣に考えていて、ものすごく真剣に小説を書かれている方だからこその、激しい論調なんだなというのがひしひしと伝わってきます。それが行き過ぎて、過激な意見になっているかも箇所があるかもしれませんが……。(それが本当に過激なのか、それともそれほど激しく批判されても当然というような駄作なのか、肝心の叩かれている作品を未読なので、個別には検証しません)
筆者自身もまた、前置きや注釈などで、後年考えが変わられた部分を示しておられたり、当時の周囲の状況から過剰な表現をしていたと自省を表明されている部分もあったりするようです。読むほうもそれを受けて、頭からすべて丸呑みにして読むのではなく、ひとつずつゆっくり咀嚼し、自分なりの考えと比較検討しながら読むのが相応しいのではないかと思います。
読んでいて、感銘を受けたり、激しく頷いたりするくだりがたくさんある一方で、ところどころかなり耳が痛いです。「ぎゃっ」ってなりながら読んでます。
書かれている全ての論に手放しで賛同出来るわけではないのですが、どの内容にも、けして軽くは読み流せない真剣さがあります。ファンタジー/SFを愛するものの一人として、けして無視しては通れない重要なテーマについて語られている、というほうが、ニュアンス近いかな。読み流せるところがなく、数ページの文章の中に重要なことがこれでもかと詰まっている。
いったん読み終えてから二読目に入るつもりで、あとでまた振り返って咀嚼しようと思ったところに、付箋をつけながら読みすすめていたら、あっというまに文庫本がハリネズミになりました……。ぐはっ。弱い頭がパンクしそうです。
ル・グウィンのファンタジーやSFで、ものすごく好きな小説が何作もあって、それでなかばミーハー根性で手を出したのですが、そんなふうに気軽に読み始めるような文章ではなかったなと、冷や汗どころか脂汗がでます。
それでももし自分が、あまりグウィンの小説を読まないうちにこの本に出会っていたなら、いまよりはもう少し気楽に流して読めたんじゃないかと思います……。「言の葉の樹」や「西のはての年代記」に心を揺さぶられる前だったら。
好きな小説の作者さんの言葉というのは、ファンにとっては重いですね。同じ内容でも、よく知らない人の口から聴くのと、尊敬する作家さんが論じているのでは、当たり前だけど重みが違って感じられるなと思います。
ゆっくり咀嚼していきたいです。長い付き合いになりそう。
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