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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
 読了。
 小説ではありません。2002年、イラク戦争が始まる直前、著者自身がイラクにある遺跡を取材するために訪れ、そこで見てきた人々の暮らしを綴ったもの。戦争が始まる前に、報道されないイラクの現実を世界に届けるためのメッセージとして出された本です。90ページくらいの薄いもので、半分くらいは写真です。

『もしも戦争になった時、どういう人々の上に爆弾が降るのか、そこが知りたかった。メディアがそれを伝えないのならば自分で行って見てこようと思った。』――本文より。

 正直、私は視野が狭く、ついでに頭も悪くて、政治や経済や社会といった大きな流れは、漠然としたことしかわからないのです。直接身近に迫ったこと以外は、日常生活レベルまでしか理解できない。
 この本は、政治の本ではありません。いや、中にはもちろん政治を語る文章があります。ブッシュ政権や小泉内閣への批判などがありますが、言葉の上での理屈としての政治評論ではない。
 開戦前の、あたりまえのイラクの人々の姿が、そこにあります。安いレストランで出された食事が、フランスの歌を歌う子ども達の笑顔が、日本語の書物がまぎれていた古書市で、嬉しそうに品定めする本好きの人々の様子が描かれています。

 初めて発行されたのは、2003年1月のこと。その後、2006年に文庫化されていて、ようやくそちらを購入。今さらに過ぎますが、もっと早くに読んでおくべきだったと後悔しました。
 見苦しく言い訳をするならば、丁度出版された前後、2003年の方も、文庫化された2006年の方も、それぞれ忙しい部署に配属されていて、本屋でじっくり本を選ぶ心の余裕がなかった。池澤さんの本はもっと前から好きだったのですが、この時期には探していませんでした。出ていることにさえ気付いていなかった。落ち着いてからまたぼちぼち集め始めたのですけれど、小説から先に買っていて、エッセイはほんのここ一月ほどでやっと手を出し始め、それでようやく気付いたという始末。
 出版当時に読んでいたら、自分に何ができたというわけでもないけれど。それでも読んでおくべきだったと思いました。

 薄い本なので、もしも本屋さんで見かけられることがあったら、ぱらぱらと立ち読みするだけでも。
 ちなみに英語版ならネット上で、フリーでダウンロードできます。「Cafe impala」でググっていただければ。英語の読めない私は普通に光文社文庫版を買いましたが……

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ハイ・クォリティの英語版PDFをダウンロードしました。
多分、辞書片手に読めるかなぁと思います。
スラスラとはいかないでしょうが、ゆっくりと時間みて読んでみます。

チラチラと写真みてましたが、人間ってイラクだろうが日本だろうが、アメリカだろうが、同じなんですよね。
仏教だろうがイスラム教だろうがキリスト教だろうが、子供たちの笑顔に違いはない……。
Posted by 山田さん 2009.02.17 Tue 19:10 編集
山田さん様へ
 そうなんですよね。新聞で死者の数を見て、ニュースの報道の文字を追うよりも、たった一度子どもの笑顔を見るほうが、胸に迫る。おかしなものです。
 本好きの人々が古書市で嬉しそうに本を選ぶ一節を読んだときが、一番イラクの人々を身近に感じた瞬間でした。いままでだって、あれだけ報道が流れて、もちろんまったくの無関心だったわけではないのだけれど。それでも無意識のうちには「遠い国の出来事」という感覚でいたんだなあと。それくらい、イラクは距離的に遠く、イスラムは心情的に遠かったです。

 時期を外した図書をおすすめしてしまいまして、失礼しました。
Posted by HAL.A URL 2009.02.17 Tue 21:40 編集
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