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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
 読了。これはいい……! 心の中の「墓まで持っていきたい本リスト」に追加。
 掌編がたくさん集まって、全体としてはゆるやかにひとつのストーリーが流れる形。最初の数ページでいきなり惚れこんでしまいました。そして最後まで大満足。最後の『葡萄』のラスト四行がまたすごく良かった……

 百年と少し前の、日本のどこかにある地方が舞台。もの書きの主人公・綿貫が、亡くなった友人の住んでいた家に、持ち主に頼まれて住み着くようになったところから話が始まります。
 雨が降ると、最近逝ってしまったはずのその友人が掛け軸を通ってふらりと姿を現す。庭のさるすべりの木に懸想(!)されてしまって「どうしたらいいのだ」といいながらも、ときどき庭で本を読んでやる。河童が庭に迷い込む。狸に化かされる。床を突き抜けて部屋の真ん中に生えてきてしまったカラスウリを、伐らずにそっとしておく。

 主人公の人柄がなんとも言えずいいんですよね。清廉潔白だとか器が大きいだとかいうことではなくて、小人なので、見栄を張ったり、失敗したり、慌てたり、迷ったりと忙しいのだけれども、でも人がいい。
 掛け軸から出てくる友人の方もかなり魅力的です。他にもゴロー(犬)とか、ちょっとだけ出てくる鬼や河童といった脇役たちもそれぞれに味があって。

 こうして書いていると、やはり自分は読むときにストーリーや設定よりもまず人物、キャラクターの方に目を向けて読んでいるんだなあと、ふと思いつつ。

 実はすでに同じ作者さんの他の作品を衝動買いしそうになってるんですが(Amazonって怖いですね! 衝動買いしようとしたらあっという間すぎて)、実はもしかしたら引越しが近いかもしれなくて、そろそろ本を買い控えようと思っていた矢先で。自分の中から『これだけはまったんなら、他の本も買うって言ったって一冊二冊じゃきかないんだから、引越しが決まってからにするべき』という声がするのですが、さて……堪えきれる自信がない。うう。

 読んだきっかけは、お様のブログの紹介と、後押ししてくださった山田さん様のコメントでした。お二方に大感謝です。

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No title
 後押しした山田です……ヨイショヨイショ……フゥ。

 梨木香歩さんの作品は現在までに九冊読みました。
 どれも面白いし、それぞれに独自の世界を描いていますが、根底はしっかりと繋がっているように思えます。
 全部揃えるのも大変でしょうから、あえて三冊を選ぶとすると次のようになります(あくまでも僕の読んだ感想に基づいていますので、必ずしもHALさんに合うかどうかは判りません……むぅ)。

「村田エフェンディ滞土録」角川文庫
 あの「家守綺譚」にも登場したトルコに滞在中の村田氏のお話です。
 最後には綿貫、高堂、ゴローも登場します。
 あまり不思議な作品ではないです。
 むしろ「悲惨な現実……戦争(第一次世界大戦)」といったものが描かれています(それだけじゃないですが)。
 最後の場面では、泣いてしまいました。

「りかさん」新潮文庫
 お人形と話が出来る少女の物語です。
 これはかなり不思議な世界になります。
 ただその中でも「戦争」のおぞましさ、人間の醜さといったものが出てきます。
 アビゲイルという人形の話があるのですが、僕はこれを電車の中で読んでいて、必至に泣くのをこらえていました。
 戦争は第二次世界大戦ですね。

「からくりからくさ」新潮文庫
 上の「りかさん」の主人公が成人になってからの話です。
 他に三人の女性(うち一人は外人)が登場し、計四人で同居生活を始めるのですが、そこでの人間模様や、時空間が複雑に絡み合う世界はちょっと気を緩めると「あれ、ここどこ?」と迷子になりそうになります。
 実は読み終わった後に、本当に「ああ……」と声を上げてしまいました……感嘆の声です。
 個人的に(本当に個人的にですが)物凄い作品だと思います。

 ちなみに「ぐるりのこと」「春になったら莓を摘みに」も読んだのですが、これらはエッセイ集ですので、後回しでもいいかなと。
「裏庭」は児童ファンタジー大賞受賞作ということで、かなりファンタジーな世界です。だけどかなりシビアな世界だなとも思えます。
「エンジェル エンジェル エンジェル」は過去の罪に対する後悔、懺悔、許しの話。特に「嫉妬心」についての話かと。これもかなり重いです。
「西の魔女が死んだ」は映画化されただけあって、最も有名な作品かも知れませんが、個人的にちょっと薄味だったかなぁと。
「家守綺譚」はもう最高でした。

 って、本の購入を控えようとしているのに、こんな書き込みしても良かったのだろうか。
 梨木香歩さんにはまっている、というか一生付き合っていける作者さんに巡り合うことが出来たなという気持ちが強く(おさんに大感謝です)、いつもにまして書き込んでしまいました。
 お許し下さい。
Posted by 山田さん 2009.02.14 Sat 21:05 編集
No title
「裏庭」……児童文学ファンタジー大賞受賞作でした。
 失礼しました。
Posted by 山田さん 2009.02.14 Sat 21:10 編集
Re: No title
 わ、ありがとうございます!
 どうせ買うなら潔く今いっちゃえよ! という悪魔が耳元で囁いておりますw うーん、ダンボールが増えるだけといえばそれだけの話……?(誘惑に負けかけている)
 諦めてすぐ買うにせよ先延ばしにするにせよ、いずれは必ず読むつもりでいますので、大変参考になります。まずは「村田エフェンディ滞土録」からかな……。

 ……ところで、”後押し”の擬音がどことなく重たげなところが気になるのですがwww いやいや、この掛け声はきっと”後押し”にかかるものではなく、ありがたくも九冊の本を取り出して確認してくださったという擬音に違いない。……ですよね?(にっこり)

 と、つまらぬ冗談はこのくらいにして、あらためて、ありがとうございました!
Posted by HAL.A URL 2009.02.14 Sat 22:31 編集
No title
月刊アーカイブってどんな雑誌なんだろうと思っていた僕がいます。目が腐ってます。
さておき。
まいどです。
お気に召していただけたようで何よりで御座います。
それにしても、山田さんはよく本を読む人だなぁ。
HALさんの読了ペースも速いし。
僕はまぁ、のっそりもたもたやっていきますよ。
ちなみに僕は当分同じ作者さんの作品を読むつもりはないのです。コレはコレで僕の箱庭だから、コレはコレで良いのです。コレに連なるモノは何も要らない。そんな感じに浸っています。続きがあるなら読んでみたい気はしますけどねぇ。
さておき。
最近はめっきりチャットでお会いすることも減ってしまいましたね。寂しい限りです。また、お会いできる日を心待ちにしています。でわ。
Posted by 2009.02.15 Sun 01:31 編集
お様へ
 重ね重ねありがとうございました。他のおすすめの本にも手を出したいと思いながらも、私事の都合との間に折り合いをつけかねています。読みたい本が多すぎて……
 なるほど、続けて読んだりはされないのですね。私は本格的にハマったら、その方の本を執念深く追いかけるという性癖があるので(ストーカー?)、ちょっと不思議な感じがします。

 チャットは、お邪魔するとついほかの事を何もしなくなるので、入りびたりすぎないようにと思って自重しています……w
 またときどきふらりと寄せさせていただきますので、今後ともよろしくお願いしますです。
Posted by HAL.A URL 2009.02.15 Sun 08:51 編集
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