万年筆は使ううちに書き手のクセになじんで書きやすくなっていくといいますが、どうやら本当のことで、何か月かの間、毎日使い続けているうちに、あるとき気がつくと、以前よりも書きやすい、インクのたっぷり出るペンに化けています。
そういうのって、お高い万年筆だけの話かと思っていたけれど、どうやら安いものでも同じようです。長持ち度合いでいえば、お高いやつのほうが長く持つそうなんですけど……(といいつつ、持っている廉価品も国産かドイツ製ばかりだから、安くてもあんがい長持ちするんじゃないかと踏んでいたり)
そもそも繊細な筆記具ですので、紙や、その日の湿度や、こちらの使用環境(机の高さや姿勢とか)、体調によってもそれぞれ微妙に手ごたえが違います。おや、今日は調子がいいなと思う日もあれば、いまは何だか書きづらいなという気がするときもあります。
なので、「あっ、手になじんだぞ!」というほどはっきりわかる劇的な瞬間があるわけではないのですが(私が鈍いというのもあるかもしれない)、それでもふっとある日気づくと、書き心地がよくなっている。お腹が減っているとき、いつの瞬間から自分が空腹だったかわからないけれど、とにかくさっきからずっと空腹だったんだと気付くような、そんな感じに似ています。
それに気付いたとき、なんだか嬉しくなって、そういう「育てる喜び」みたいなものをもう一度味わいたくなり、もう一本欲しいなー…………とか思い始めると、とても危険なことになります。(真顔)
さらに何年も使い続けるとますますレベルアップするらしいですから、同じものを長く大事に使ってじっくり育ててあげましょう。(自分に言い聞かせている)
万年筆には使う喜びの他に、コレクションする喜びというのもあるらしいですが、そっちを楽しむのはお金持ちの趣味だから! 稼ぎが追いつかないから!
あいにくと庶民なので、欲しいなー……という欲は、ちょっととっておいて、その分をちょっとずつ、万年筆貯金に回そうかなと思い始めています。衝動買いを堪えるたびに、五百円か千円か貯金箱に入れて、給料日や臨時収入のあったときにも、そこにちょっと足す。それを何年か続けて、何万円かの資金が溜まったころに、まだ新しい万年筆が欲しいかどうか、自分の胸に問いかけてみようかと。
その頃にはいま持っている万年筆たち(本妻とそのほかの廉価品)も、さらに書き味が向上しているでしょうから、それですっかり満足しきっていればそれでよし、その資金を何か別のことに回したらいいし、まだもう一本欲しいような気がしていたなら、がつんと奮発して、それこそ一生ものになるような、いい万年筆をじっくり吟味して買ったらいいんじゃないかな。
幸いにも長崎には老舗のマツヤ万年筆病院さんがあります。そちらではすべて点検調整して販売されているとのことで、しかもそのお店で買ったものは生涯保障だそうで、何かあればいつでも診ていただけるとか。いずれ娘さんが後を継がれるという話も伺いましたので、安心して買えるなと。(買う気満々じゃん?)
ちなみに写真はラミーのサファリ(インクはエルバン・ティーブラウン)なんですが、このあいだペリカンのロイヤルブルーのインクが使いたいがために買ったペリカーノも、すでに馴染んで、すごく気持ちのいい書き心地のペンになっています。本妻のセーラー製はなおのことだし、別にもう一本とか欲しがる必要は本当はまったくないです。所有欲って怖い……
万年筆のインクって、ものすごく物欲に訴えかける何かがあるなと思います。
秋口に、突然「秋っぽい色のインクが欲しい」というよくわからない衝動に背中を押されて、ふらふら吸い込まれるように買いました。エルバンのティーブラウン。
あのね、そういうのは、手紙を書く人のすることだから!
紙の手紙っていいなあと思うのですが、書く機会がありません。礼状を出すような機会も、ここ数年は絶えてない。
書きたければ別に、友達にでも書いたらいいんだけど、「なんで手紙?」ってなるよねいまさらね。実際、数年前に友達が手紙をくれたとき、「メールしてくれればいいのに、なぜわざわざ手紙?」と思ったもんね……。
母が留守にするときに、ときどき置手紙が残されていることがあるので、それがこのごろやり取りする唯一の手紙でしょうか。でも中身が「冷蔵庫に肉があるから焼いて食べてネ。母」とかなんだよね。肉……。いやまあ、焼くと切る以上の料理をする気がない娘が悪いんですが!
ということで、秋っぽいインクなんて買っても、有効活用的な意味ではとても微妙なのですが、しかし、セピア色のインク、目に楽しいです。使ってて幸せになれるから、まあいいか……。
エルバンって、ガラスペンのメーカーなんだそうです。ガラスペンも、いいよね……。美しいよね……。
たまに発作的に欲しくなるのですが、しかしどうせ猫に転がされて慌てるのがオチなのです。ちょっと楽しんだらすぐ仕舞い込んで、そのまま忘れて仕舞いっぱなしになるであろう。あまりに目に見えすぎているので、かろうじて自粛しています。安くもないしね……
万年筆のインクって、小瓶とかでもかなり長くもちます。ましてわたしの場合、本妻はセーラー万年筆製のやつなので、常用のインクは、セーラーのブルーブラックです。
こっちはがつがつ使うので、けっこう減りが早いんですが、それでも一年ほどかけて、ようやく一本をもうすぐ使い終わるというくらいです。それ以外の色は、そんなにたくさんは使わないので、まともに使い切るのには何年もかかりそうです。
だけど、万年筆のインクって、そんなには長持ちしないんだよ……。
保存状態次第ですが、目安としては、だいたい2年ほどで使いきった方がいいらしいです。だからさ、秋っぽい色のインクとか、そういう選び方をするのは、ちょっと危険だと思うな!(反省はしている)
冬っぽい色のインクは、かろうじて踏みとどまっています。というか、去年衝動買いしたパイロット色彩雫シリーズの「霧雨」が、まだまだ残っているんです。物欲……。
このインク、色味は味わいがあって好きなのですが、いかんせん薄いグレーなので、使いどころに悩みます。細めの万年筆に入れると、ものすごく見づらいです。中字の万年筆でも、いつもの感じでサラサラっと書こうとすると、ところどころ薄くなりすぎて読みづらくなる……。
難しい子です。
いまだったら、同じシリーズに「竹炭」という、最近発売されたもっと黒に近い濃いグレーが出ているので、そっちを買うところなのですg…………危ねえ!(物欲の沼に片足突っ込みかけていた)
なんか、万年筆好きの方々のブログなど拝見していると、たまに「友達と小瓶を持ち寄ってボトルインク半分こ」みたいな話題が出ていて、「あっいいなあ!」と思います。いろんなインクを楽しむ的な意味でも羨ましいし、その女子っぽいシェアが楽しそうでいいなあー。
トラベラーズノート、スケジュール帳の部分は12月始まりなので、まだ使いはじめていませんが、ノートリフィルのほうにはぼちぼち読んだ本のひとこと感想や、とりあえずのメモなどを取っています。
このノート、本来はそれぞれでカスタマイズを楽しむというツールのはずですが、センスがないのでオリジナリティを出すことは諦めて、いちおうチャーム(同じメーカーの既製品、別売)だけつけていました。が、使っているうちにそれもなんとなく邪魔に思えてきて、結局は外してしまいました。実用と装飾性の両立って、むずかしいですね。
なんかあれです。真冬に、おしゃれで可愛いんだけどすげえ寒そうな格好の女子っているじゃないですか。あれと同じだなって……。
見た目を取りたかったら、多少の不自由は堪えねばならんのだなと思って、なんとなく切ない気持ちになりました。
さておき、11月から1月まで、メーカーと販売店のコラボでキャンペーンをやっているというので、うかうかと釣られて、石丸文行堂(本店)へ行ってまいりました。
それぞれの文具店ごとにオリジナルスタンプが用意してあって、ノートを持っていくかその場で買えば、自由に押せるようになっています。石丸では三階の、階段を上がってすぐのところに特設コーナーができていました。
長崎バージョンのスタンプは、チャームが教会の形になっていました。これ可愛くていいなあ。
二種類以上のスタンプを集めるとオリジナルグッズ(ポストカードだったかな?)に応募できるそうなのですが、いかんせん長崎県内ではほかに販売店がないものですから、思わずちょっと遠い目になりました。佐賀か福岡まで行けというのか……
ですが、考えても見れば、もともとが「トラベラーズ」ノートなので、旅好きの人にはそこはたいした障壁ではないのかもしれません。キャンペーンの期間も三か月あるしね。
トラベラーではない私はまあいいやと思って、自分のノートにスタンプ押すだけで満足することにしました。まあね、ポストカードとかもし当たっても、たぶん引っ越しの時に失くすしね……でもなんだろう、なんかちょっと悔しいこの気持ちは。(田舎者の僻みです)
無地のリフィルが二種類あるのですが、DP用紙(薄くて軽いやつ)のほうも、MD用紙(ちょっと厚くて少しザラザラしているやつ)のほうも、どっちも万年筆で書きやすくてほぼ裏抜けしないので、地味にいいなと思います。DP用紙のほうは、インクの発色もきれいな気がします。
トラベラーズノートには二サイズあるのですが、わたしは小さい方(パスポートサイズ)を買ってしまったので、腰を据えてじっくり何かを書くにはやや小さすぎるのですが、ちょっと雑感をメモしたりする分には、楽しくてよいなと思います。
うっかり大きいサイズのほうも欲しくなったりとかするけど、でもどうせ使いこなしきれずに無駄にするしね……。カバンに入れて持ち歩くには大きいし、家で机において使う分には、カバー邪魔だし。
大きいサイズ用の無地リフィルに、MD用紙のバージョンと、軽量紙のバージョンがあるらしくて、この軽量紙のほうが、万年筆での書き心地がいいという話をネットで見かけました。パスポートサイズのDP用紙とは、また違うんでしょうか。メーカーのサイトを見てもよくわかりませんが、わざわざ名称を変えてあるということは、きっと何か違うんでしょうね。
…………はっ。いやいや。買いません。買いませんったら。もしどうしても我慢できなくなったら、本体は買わずにリフィルだけ買って、ただのノートとして使う。(買う気じゃん?)
新しいノートを買うのって、どうしてこうわくわくするんだろう。物欲ってこわいですね!(真顔)
ときどき思い出したように万年筆の話をしていますが、万年筆ファンのあいだには、万年筆沼という用語があるらしいです。いつの間にか底知れない沼に足を踏みいれていて、ふと気がつくとまた新しい一本が増えている。物欲って怖いですね!
万年筆のインクにも、インク沼があるらしいです。綺麗なインクのボトルがふと気付けば一本、また一本。財布はどんどん軽くなっていき……
笑い話ではありません。
ペリカンの、ロイヤルブルーのインクが好きです。
書いた瞬間は紫ですが、しばらく経つと赤味がうせて、きれいなブルーになります。写真じゃ伝わらないかも?
数ヶ月前にたまたま目にする機会があったのですが、手持ちにペリカン社製の万年筆がありませんでした。しかし、違うメーカーの万年筆にインクを入れることには、リスクがあると聞きます。手持ちの万年筆は、いちばん上等なのから千円の安いのまで、すでにそれなりに使い込んでおり、愛着がわいています。うっかり変なことをして壊したら悔しいです。いつかもし壊すなら、使いこんだあげくに壊したいよねーと思います。
そういうことならペリカンの万年筆を買えばいいじゃんと思い立ち、ペリカーノを買ってしまいました。同社の廉価のカートリッジ式万年筆です。じつは少し前の話ですが、なんとなく後ろめたくていまごろ告白しています。
…………ええ。インクのために万年筆を買いました。
いくら廉価版でもさ、にせんえんするんだしさ、それってちょっとどうなの……?
ちょっと反省しています。
反省しつつも、ペリカーノ、とても書きやすいです。細字だけれど、日本製のペンの中字と同じくらいか、それより気持ち細いかくらいの字幅になります。
ちょっと前にLAMYのSafariを買ったときにも思ったけど、なんとなく、丸っこい字になる気がします。日本製のはそんなことなくて、なんとなく流れるような字になります。自分が書くと残念な感じですが、達筆の人が書いたら美しくなるんだろうなという線。
やっぱり、アルファベットを想定してつくられたペン先と、日本語を想定してつくられたペン先では、形状が違うんだろうなと思います。
同系統のペリカーノJrという万年筆は、よく文具店でも見かけますが、このペリカーノのほうは、すでに廃番になっているらしいです。地元の万年筆専門店に残っていたのが、赤とオレンジしかなくて、使いたいインクがロイヤルブルーなだけに、本当は青が欲しかったのだけれど、まあないならしかたないかと妥協しました。ペリカーノジュニアにしてもよかったんだけど、そっちはちょっとデザインが可愛らしすぎた。
いつかロイヤルブルーに飽きたら、そのときによく洗って赤インクに変えて、赤ペンとして使ってもいいかもいいかもしれない。
だけど、そのころには愛着がわいていて、インクを変えるのが忍びなくなっているかもしれない……。(あれ? また買うフラグ?)
万年筆のインクというのは、よくよく洗ってもペン芯の中にわずかに残るらしくて、そしてインクとインクの相性によっては、混ざると固まって不調の原因になったりするらしいです。同じメーカーのインクでも、色によって素材は違うので、混ぜないほうが無難なんだとか。中には混ぜても大丈夫なケースもあるらしいですが、怖いのでやりません。
また万年筆自体も、真新しく入れたばかりのインクよりも、しばらく入れて使って馴染んでいるインクのほうが、インクフローがいいようです。だから大事にしたい万年筆は、いちどインクを決めたら、できればずっと変えないほうがいいんだとのこと。
きれいな限定色インクも素敵だけど、長く使いたいペンに入れるなら、スタンダードカラーが無難ということですね。
……またいつかほしいインクが出てきたら、万年筆を買っちゃうんじゃないかという気がして、自分で自分が恐ろしいです。
微妙に感覚マヒしかかってるけど、千円とか二千円とかって、筆記具にかける費用としては、決してはした金じゃないからね? メイドインジャパンは優秀だから、100円のボールペンでも気持ちよく書けて長持ちするんだからね?
先日、友がよんまんえんするスーベレーンM605限定シルバートリムを衝動買いするところを目撃しました。
正直いうとものすごく羨ましいし、本音をいうと真似したいのですが、お金がありませんし、それにわたしにはすでに愛用の、セーラー社製の本妻があります。見た目はちっとも可愛くないけれど、書き味は自分にぴったりの、大事な一本です。ここは何が何でも涙をのんで我慢します。しますったらします。うらやましいけど! だって高いし!
何かの節目の年とか言い訳をつけて、数年後にスーベレーンを買っていたら、指さして笑ってやってください……。ほんとにやりそうで怖いよ! そんな買い物に見合うだけの稼ぎはないよ!
老魔法使いの話を、ぽつぽつ下書きしています。
手書きです。これをパソコンに移しながら推敲を重ねていくのか、それともいつものようにあくまで下書きとわりきって、また頭から書きなおすのか、まだ決めてはいませんが、手書きだけあって筆が粗く、とてもそのまま使えるレベルではないので、どのみち手は入れます。
数多くの名作を万年筆と原稿用紙で生み出されているかの作家・浅田次郎さんが、某文具雑誌のインタビューで、「パソコンで打てば余計な言葉が増えて文章が軽くなる、手書きならば無駄な文章など書かない」というような話をされていて、読んだときには「ははあなるほど」と感服しましたが、あとではたと我に返って、いやそうかなあと首をかしげました。
なんか、手書きのほうがどこまでも言葉が遊び、話があちこちに逸れて行きます。当初の予定からふらふら離れて、「あっいかんそういう展開にするつもりじゃなかった」と我にかえる率が、パソコンよりもむしろ高いような気がします。
これは世代の差でしょうか。もうパソコンで書いてきた年月のほうが、手書きよりも長いからなのか。
それとも、あれか。パソコンだとときどき戻って文章を削ったり、練り直したりしながら進めて行くところが、手書きだと自分の字が汚くて読み返したくないものだから、よけい後ろを振り返らないのか。
……多分それだよ、という気がします。
もともと字が汚い上に、頭から文章の出てくる速度を殺したくなくてあわてて書きとめようとするのが、よけいに悪いのかもしれません。誤字だらけ、訂正だらけでぐちゃぐちゃになるし。
むう……なんだろう。もっとこう、文豪気どりで心を落ちつけて、一語一語を吟味しながら、一筆入魂の気迫で…………すみません言ってみただけです。
「近ごろ眼精疲労が激しいことだし、ここはプロットや下書きを万年筆とノートでやろう」と最初に思った(というか、自分にそういう言い訳をして万年筆を買おうと思った)ときには、もっとなんかこう、優雅なひとときみたいなものを漠然と思い浮かべていたのですが、いざ使っているときには、がちゃがちゃ慌てて筆を動かしているだけっていうか、別に高尚な空気とかは欠片もないです。うん……
便利は便利なんです。万年筆に慣れたら筆圧が落ちたので、長時間書いていても、手があまり疲れません。実用的には満足なんです……が。
なんだろう。考えてもみれば当たり前のことなのですが、優雅というのは、道具が優雅なだけではだめで、それを使う人間のほうに、あらかじめそのような心持ちが備わっている必要があるんですよね。うんまあ、何事もそういうものだよね……(しょんぼり)
優雅な性格ってどこかに売ってませんかね……五千円くらいで。(まずその金額しか出てこない時点で無理だと思う)
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