小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
SFファンタジー。
もとは人間だったにもかかわらず、ある人物から化け物につくり変えられ、その手先として利用されていた男。理性を取り戻し、己を血に飢えた化け物へと変えた相手への復讐を誓った彼は、その旅の途中、森の奥でひとりの少女と出会う。
森にひっそりと住む、変わり者の少女。げてものを食べ、おかしな奇行に走るせいで、村の人々から頭が足りないのだと思われていた彼女は、男に出会ったことをきっかけに、急激な成長をはじめる。男とゆく旅路の中で、少女はやがて己に課せられた運命を知り……
失礼ながら、ものすごーーく「もったいない!」というのがいちばんの感想でした。SFファンタジーの大作になりそうな、面白い話の、あらすじを読んだような印象が。
ものすご美味しい設定が、あちこちにたくさん溢れているのに、展開が急すぎて、どうも演出不足の感がありました。キャラクターの心情を想像して味わうだけの暇がなかったです。
この三倍くらいのエピソードをいれて、じっくり丁寧に描いてあれば、きっと乙女のハートをがっつりつかむ名作になったのではないかという気がします。
もしかして、もっと、書かれていない間を、自分の妄想で補完しながらじっくり読めばよかったのかな、とも思います。子どものころって、そういう読み方が得意だったような気がするんだけどなと、自分にもちょっとがっかり。
それにしても、菅さんの小説って、もっとがつんと重たくて読み応えのあるような印象があったのだけれど、本作ではずいぶんとギャップが。もしかしてこれは、若書きというやつなのかな?
などと失礼なことをいいつつも、でもこの方の本はそのうちまた読みます。
もとは人間だったにもかかわらず、ある人物から化け物につくり変えられ、その手先として利用されていた男。理性を取り戻し、己を血に飢えた化け物へと変えた相手への復讐を誓った彼は、その旅の途中、森の奥でひとりの少女と出会う。
森にひっそりと住む、変わり者の少女。げてものを食べ、おかしな奇行に走るせいで、村の人々から頭が足りないのだと思われていた彼女は、男に出会ったことをきっかけに、急激な成長をはじめる。男とゆく旅路の中で、少女はやがて己に課せられた運命を知り……
失礼ながら、ものすごーーく「もったいない!」というのがいちばんの感想でした。SFファンタジーの大作になりそうな、面白い話の、あらすじを読んだような印象が。
ものすご美味しい設定が、あちこちにたくさん溢れているのに、展開が急すぎて、どうも演出不足の感がありました。キャラクターの心情を想像して味わうだけの暇がなかったです。
この三倍くらいのエピソードをいれて、じっくり丁寧に描いてあれば、きっと乙女のハートをがっつりつかむ名作になったのではないかという気がします。
もしかして、もっと、書かれていない間を、自分の妄想で補完しながらじっくり読めばよかったのかな、とも思います。子どものころって、そういう読み方が得意だったような気がするんだけどなと、自分にもちょっとがっかり。
それにしても、菅さんの小説って、もっとがつんと重たくて読み応えのあるような印象があったのだけれど、本作ではずいぶんとギャップが。もしかしてこれは、若書きというやつなのかな?
などと失礼なことをいいつつも、でもこの方の本はそのうちまた読みます。
PR
短編集。
靴磨きから成り上がって大企業の社長にのぼりつめた男。戦時中にもっとも過酷な最前線で戦って生き延びた旧日本軍の士官。故郷を遠く離れて上京したにもかかわらず、学生運動のとばっちりで学業に精を出すこともままならなくなった青年。大正時代の吉原女郎と、彼女に惚れて身請けしようとしている男。
時代のにおいがする作品というのは、いいものだなあと思います。
表題作『月島慕情』では、これまで辛い思いをしてきた吉原女郎のミノが、年もいってあきらめきった頃に、思いがけず身請け話をもらう。それも惚れた男から――。これでやっと自分も人なみの人生を送れると、幸せをかみしめるミノ。だけど、男のもとに身を寄せる寸前になって、相手がいったい何を捨てて自分と一緒になろうとしていたかを知り……。
『雪鰻』は、自衛隊の将校が、酔って鰻の包みを手に詰め所に立ち寄るところから話が始まります。将校は、当番の隊員に鰻をくれて、「自分は鰻は大好物だが、一生食べないと決めたのだ」という。悪酔いをしたふうの将校は、その理由、戦時中の体験を語りだした。
かつてもっとも過酷な最前線に配置された彼は、薬も弾薬も食べ物も、何もかもが底をつきかけた過酷な状況で、仲間たちが飢えと病気に苦しんでいるそのさなかに、とつぜん安全な地域まで呼び戻されたのだという。皇族のひとりが、前線で戦っている士官の話を聞きたいといいだしたという、ただそれだけの理由で。その会食の場でふるまわれたのが、鰻だった……。
泣けるお話が売りの浅田次郎さんですが、とりわけ印象深い作品が多かったです。哀愁と浪漫がぎゅぎゅっとつまった一冊。
靴磨きから成り上がって大企業の社長にのぼりつめた男。戦時中にもっとも過酷な最前線で戦って生き延びた旧日本軍の士官。故郷を遠く離れて上京したにもかかわらず、学生運動のとばっちりで学業に精を出すこともままならなくなった青年。大正時代の吉原女郎と、彼女に惚れて身請けしようとしている男。
時代のにおいがする作品というのは、いいものだなあと思います。
表題作『月島慕情』では、これまで辛い思いをしてきた吉原女郎のミノが、年もいってあきらめきった頃に、思いがけず身請け話をもらう。それも惚れた男から――。これでやっと自分も人なみの人生を送れると、幸せをかみしめるミノ。だけど、男のもとに身を寄せる寸前になって、相手がいったい何を捨てて自分と一緒になろうとしていたかを知り……。
『雪鰻』は、自衛隊の将校が、酔って鰻の包みを手に詰め所に立ち寄るところから話が始まります。将校は、当番の隊員に鰻をくれて、「自分は鰻は大好物だが、一生食べないと決めたのだ」という。悪酔いをしたふうの将校は、その理由、戦時中の体験を語りだした。
かつてもっとも過酷な最前線に配置された彼は、薬も弾薬も食べ物も、何もかもが底をつきかけた過酷な状況で、仲間たちが飢えと病気に苦しんでいるそのさなかに、とつぜん安全な地域まで呼び戻されたのだという。皇族のひとりが、前線で戦っている士官の話を聞きたいといいだしたという、ただそれだけの理由で。その会食の場でふるまわれたのが、鰻だった……。
泣けるお話が売りの浅田次郎さんですが、とりわけ印象深い作品が多かったです。哀愁と浪漫がぎゅぎゅっとつまった一冊。
時代もの、怪談。表題作ほか五篇を集めた短編集。
旅先で相部屋となった老女の昔語り。彼女の故郷の里には、ひそかにばんば憑きという秘法が伝えられているのだという。死んだばかりの者の魂を呼び出し、その死者に強く怨まれている生者の体へと下ろし、宿らせる。憎き仇の体に宿った亡霊は、恨みの一念でもてその者の魂を喰らいつくし、やがてすっかりと成り代わってしまう――『ばんば憑き』
博打眼という化生がいる。それと契約を結べば、どんなに大金のかかった勝負でもかならず勝つようになる。ただしその代わりに、そうやって稼いだ金をどんどん使って、博打や酒や女にひたすら蕩尽せねばならない。そのような暮らしをしていれば、やがて体もぼろぼろになって、長生きもせずに死んでしまうという――『博打眼』
怖かった。……のだけれど、おそろしくも悲しい話の合間に、思わずほっとして頬が緩むような心温まるエピソードが入ってくるのが、宮部さんの怪談の最大の魅力だと思います。あと、子どもたちがとびきり可愛いのも。
収録された六篇、いずれも秀逸でしたが、中では『博打眼』がいちばん好きでした。
『ぼんくら』『日暮し』でおなじみの政五郎親分、『あんじゅう』に出てきたお侍・青野利一郎や行然坊が登場するので、ファンにはそういう意味でも嬉しい一冊。
旅先で相部屋となった老女の昔語り。彼女の故郷の里には、ひそかにばんば憑きという秘法が伝えられているのだという。死んだばかりの者の魂を呼び出し、その死者に強く怨まれている生者の体へと下ろし、宿らせる。憎き仇の体に宿った亡霊は、恨みの一念でもてその者の魂を喰らいつくし、やがてすっかりと成り代わってしまう――『ばんば憑き』
博打眼という化生がいる。それと契約を結べば、どんなに大金のかかった勝負でもかならず勝つようになる。ただしその代わりに、そうやって稼いだ金をどんどん使って、博打や酒や女にひたすら蕩尽せねばならない。そのような暮らしをしていれば、やがて体もぼろぼろになって、長生きもせずに死んでしまうという――『博打眼』
怖かった。……のだけれど、おそろしくも悲しい話の合間に、思わずほっとして頬が緩むような心温まるエピソードが入ってくるのが、宮部さんの怪談の最大の魅力だと思います。あと、子どもたちがとびきり可愛いのも。
収録された六篇、いずれも秀逸でしたが、中では『博打眼』がいちばん好きでした。
『ぼんくら』『日暮し』でおなじみの政五郎親分、『あんじゅう』に出てきたお侍・青野利一郎や行然坊が登場するので、ファンにはそういう意味でも嬉しい一冊。
旧約、そして新約聖書へ。ユダヤ教からいかにしてキリスト教がうまれ、どのようにして拡がっていったのかということ。聖書を綴るヘブライ語、この言葉がもつ「過去形がない」という独特の性質のこと。その背景になったと思われる、砂漠の気候について。あるいは、聖書の不変性がどこからやってきたのかということ。朗誦によって、一言一句たがわず語られることこそが肝心であるとされた聖典、祭祀のありかた。イスラムにおける厳格な食事の既定、安息日にしてはならないとされること。あるいはユダヤ人とはどういう存在なのかということ。
聖書学の秋吉輝雄教授と池澤夏樹氏の対談をまとめた一冊。宗教や信仰についての本ではなく、聖書という書物とそれをめぐる歴史、文化についての本です。
まったく聖書に関する知識のないところから読み始めるとして、丁寧に読み解いていこうとすると、やや難解かも。けれど、じっくり読むと、とても興味深いです。
わたしの場合は、聖書そのものについての関心を満たすというよりも、どうしてこういう書物が生まれて、ほとんど内容のかわらないまま、何千年ものあいだずっと読み継がれてきたのかということ、その背景や、あるいは根源にあるものに、思いをめぐらせることそのものが、とても面白かった。
その土地の、気候や風土が、その民族の言葉を育む。その言葉の性質や暮らしのあり方が、聖典や信仰のあり方を形作る。世界を、人々を形作る、数え切れない要素。気候、風土、生態系、食文化、信仰、言語、文字、伝承、規範、技術、発明、歴史。民族のメンタリティと、そのメンタリティを作った土台、環境。
世界のつくりというものは、とても緻密で、複雑で、多様で、因果の糸が絡まりあっていて、一人の人間の頭では、とても理解しきれるものではない。ないのだけれど、その一端を垣間みたと思うときの、その感覚が好きです。
聖書学の秋吉輝雄教授と池澤夏樹氏の対談をまとめた一冊。宗教や信仰についての本ではなく、聖書という書物とそれをめぐる歴史、文化についての本です。
まったく聖書に関する知識のないところから読み始めるとして、丁寧に読み解いていこうとすると、やや難解かも。けれど、じっくり読むと、とても興味深いです。
わたしの場合は、聖書そのものについての関心を満たすというよりも、どうしてこういう書物が生まれて、ほとんど内容のかわらないまま、何千年ものあいだずっと読み継がれてきたのかということ、その背景や、あるいは根源にあるものに、思いをめぐらせることそのものが、とても面白かった。
その土地の、気候や風土が、その民族の言葉を育む。その言葉の性質や暮らしのあり方が、聖典や信仰のあり方を形作る。世界を、人々を形作る、数え切れない要素。気候、風土、生態系、食文化、信仰、言語、文字、伝承、規範、技術、発明、歴史。民族のメンタリティと、そのメンタリティを作った土台、環境。
世界のつくりというものは、とても緻密で、複雑で、多様で、因果の糸が絡まりあっていて、一人の人間の頭では、とても理解しきれるものではない。ないのだけれど、その一端を垣間みたと思うときの、その感覚が好きです。
戦争で亡くなったという実の祖父は、かつて零戦の戦闘機乗りだった。
祖父の死後、その軌跡を追うことにした姉弟。最初に会った人物からいきなり祖父のこと卑怯者、臆病者だと罵られ、衝撃を受ける二人。けれど根気強く、何人もの人々を当たっていくうちに、その印象は変わっていき……。
命を惜しむだけで卑怯者と罵られ、特攻隊に喜んで志願することを当然とされる風潮の中で、堂々と死にたくないと言い放った士官。安全を重視した慎重な操縦もまた、仲間からの批判を受ける。けれどその操縦の腕は素晴らしく、我が身だけではなく僚機の安全にひどく心を砕くその姿に、憧れ、あるいは敬意を払うものもいた。語る人によって、まるで違う人物のように思われる彼の足跡をおっていった姉弟の目に映る、祖父の真実の姿とは。
とてもよかった。ただ、ぜいたくをいえば、ちょっと姉弟が、いかにも舞台回し、という印象があったり、語り手たちの口調がどこか不自然だったりして、読んでいてときどき我に返ってしまうのが残念でした。
あと、零戦最高! みたいな情熱が、ちょっとあふれすぎてしまっているような印象があって、戦争文学のつもりで読んでいいやら、フィクションの戦闘に血を滾らせて読んでいいやら、戸惑ってしまった感じも少々。
……などと、小さな不満は残るものの、全体としてはよかったです。愛した妻子のもとに戻りたいと公言し、臆病、卑怯者と罵られても、生き残るために必死で戦い抜いた男が、なぜ最後の最後に、特攻に散ったのか。胸が熱くなるシーンがたくさんありました。
祖父の死後、その軌跡を追うことにした姉弟。最初に会った人物からいきなり祖父のこと卑怯者、臆病者だと罵られ、衝撃を受ける二人。けれど根気強く、何人もの人々を当たっていくうちに、その印象は変わっていき……。
命を惜しむだけで卑怯者と罵られ、特攻隊に喜んで志願することを当然とされる風潮の中で、堂々と死にたくないと言い放った士官。安全を重視した慎重な操縦もまた、仲間からの批判を受ける。けれどその操縦の腕は素晴らしく、我が身だけではなく僚機の安全にひどく心を砕くその姿に、憧れ、あるいは敬意を払うものもいた。語る人によって、まるで違う人物のように思われる彼の足跡をおっていった姉弟の目に映る、祖父の真実の姿とは。
とてもよかった。ただ、ぜいたくをいえば、ちょっと姉弟が、いかにも舞台回し、という印象があったり、語り手たちの口調がどこか不自然だったりして、読んでいてときどき我に返ってしまうのが残念でした。
あと、零戦最高! みたいな情熱が、ちょっとあふれすぎてしまっているような印象があって、戦争文学のつもりで読んでいいやら、フィクションの戦闘に血を滾らせて読んでいいやら、戸惑ってしまった感じも少々。
……などと、小さな不満は残るものの、全体としてはよかったです。愛した妻子のもとに戻りたいと公言し、臆病、卑怯者と罵られても、生き残るために必死で戦い抜いた男が、なぜ最後の最後に、特攻に散ったのか。胸が熱くなるシーンがたくさんありました。
プロフィール
HN:
朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
朝陽遥(アサヒ ハルカ)またはHAL.Aの名義であちこち出没します。お気軽にかまってやっていただけるとうれしいです。詳しくはこちらから
拍手コメントをいただいた場合は、お名前をださずにブログ記事内で返信させていただいております。もしも返信がご迷惑になる場合は、お手数ですがコメント中に一言書き添えていただければ幸いです。
拍手コメントをいただいた場合は、お名前をださずにブログ記事内で返信させていただいております。もしも返信がご迷惑になる場合は、お手数ですがコメント中に一言書き添えていただければ幸いです。
ブクログ
ラノベ以外の本棚
ラノベ棚
ラノベ棚
フォローお気軽にどうぞ。
リンク
アーカイブ
ブログ内検索
カウンター