小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
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読了。
周囲からは散々、天然、ちょっとずれてると言われるけれども、どうやら癒し系ではないらしい。そんな大学生・香恵はある日、部屋のクローゼットの奥から、前の住人の忘れ物らしいノートを見つける。
ノートの持ち主は、どうやら小学校の先生らしい。はじめは人のプライベートを覗くのに気が引けて、そのままにしていた香恵だったが、一度読み始めると、魅力的な持ち主の人柄や、明るくけなげな生徒たちのようすにすっかり惹かれてしまう。
一方、香恵はアルバイト先の文具店で、万年筆を買いに来たある青年に出会う。ちょっとしたきっかけで、青年に惹かれるようになっていく香恵だが……
うわあ、この本、なんかすごく好き!
展開はそれほど捻っているわけではなくて、読んでいて何となく先の察しはつく。描写がすごく美しいとか、特別な強い個性があるとか、そういうことでもない。人間関係がややシンプルで、もう少し奥行きがあってもいい気がする。主人公がせっかく大学生なのに、大学生らしさがあんまり出てない。
そういうケチをつけようと思えば、いくつも思いつくんだけども、いいものはやっぱりいい。軽いタッチで一気に読めて、読んでて面白かったし、じんとくる場面もいくつもあった。
いい小説って、減点法では図れないですよね。
主人公は友だち思いで気遣い屋だけれども、まだちょっと幼くて、その分、純粋さが残っている。主人公を好きになれるかどうかで、好みが分かれるかもしれませんが、私はこのキャラクター、ちょっとツボに入りました。
この方、『犯人に告ぐ』の人なんですね。そっちもそのうち読もうっと。
周囲からは散々、天然、ちょっとずれてると言われるけれども、どうやら癒し系ではないらしい。そんな大学生・香恵はある日、部屋のクローゼットの奥から、前の住人の忘れ物らしいノートを見つける。
ノートの持ち主は、どうやら小学校の先生らしい。はじめは人のプライベートを覗くのに気が引けて、そのままにしていた香恵だったが、一度読み始めると、魅力的な持ち主の人柄や、明るくけなげな生徒たちのようすにすっかり惹かれてしまう。
一方、香恵はアルバイト先の文具店で、万年筆を買いに来たある青年に出会う。ちょっとしたきっかけで、青年に惹かれるようになっていく香恵だが……
うわあ、この本、なんかすごく好き!
展開はそれほど捻っているわけではなくて、読んでいて何となく先の察しはつく。描写がすごく美しいとか、特別な強い個性があるとか、そういうことでもない。人間関係がややシンプルで、もう少し奥行きがあってもいい気がする。主人公がせっかく大学生なのに、大学生らしさがあんまり出てない。
そういうケチをつけようと思えば、いくつも思いつくんだけども、いいものはやっぱりいい。軽いタッチで一気に読めて、読んでて面白かったし、じんとくる場面もいくつもあった。
いい小説って、減点法では図れないですよね。
主人公は友だち思いで気遣い屋だけれども、まだちょっと幼くて、その分、純粋さが残っている。主人公を好きになれるかどうかで、好みが分かれるかもしれませんが、私はこのキャラクター、ちょっとツボに入りました。
この方、『犯人に告ぐ』の人なんですね。そっちもそのうち読もうっと。
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読了。漱石って、学生時代の『坊ちゃん』以来のような気がする……!
画家である主人公は、俗世を離れた目で風景を見るために旅に出て、山奥の温泉町に宿を取る。そこで主人公が見た風景や感じたこと、芸術論、そして宿で出会った女とのやりとり。
絵を描こうとしてみたり、句をひねってみたり。どういう手法を使ったらそのときに感じていることをそのまま表現できるか、といったことを、形式に囚われず試行錯誤する主人公。
描写が美しくてよかった……けれど、文学初心者には難易度が高い! ばーちゃん、せっかくもらってきたけど(※数日前の日記を参照)、私には少し難しかったよ。っていうか、祖母は文学どころか読書初心者のはずなんですが、まともに読んだんでしょうか。孫はびっくりです。
芸術作品や文学からの引用なんかが大量にあって、もちろん文庫本の後ろにちゃんと注釈がついてるんですけど、注釈を確認するためにページを往復するだけで疲れるくらい、頻繁に出てきました。
この際、せっかくだからいちいち調べて教養を深めればいいんだけども、途中から飽きて、気になるところだけ注釈を見て、あとは何となくノリで読みました。そんなことだから知識が増えないんだよ!
残念ながら、どうも主人公の心情の流れにうまく共感できない箇所が多くて、のめりこんでは読めませんでした。芸術的な感受性が足りなかった! こういうのを馬の耳に念仏というんだな。
けれど、描写がところどころものすごく美しくて、理解に乏しいなりにも、読んでよかったです。
いちばん好きなところを引用。
----------------------------------------
雨が降ったら濡れるだろ。
霜が下りたら冷たかろ。
土のしたでは暗かろう。
浮かば波の上、
沈まば波の底、
春の水なら苦はなかろ。
----------------------------------------
主人公が、スウィンバーンという詩人の詩や、ミレーのオフェーリヤ(絵画)を思い浮かべながら、土左衛門が果たして絵になるかどうかといったことに思いを巡らせるところ。
きれいな描写や、はっとするような詩句がたくさんありました。言葉への感性が鋭い人だったんだなあ、旧千円札の人。
画家である主人公は、俗世を離れた目で風景を見るために旅に出て、山奥の温泉町に宿を取る。そこで主人公が見た風景や感じたこと、芸術論、そして宿で出会った女とのやりとり。
絵を描こうとしてみたり、句をひねってみたり。どういう手法を使ったらそのときに感じていることをそのまま表現できるか、といったことを、形式に囚われず試行錯誤する主人公。
描写が美しくてよかった……けれど、文学初心者には難易度が高い! ばーちゃん、せっかくもらってきたけど(※数日前の日記を参照)、私には少し難しかったよ。っていうか、祖母は文学どころか読書初心者のはずなんですが、まともに読んだんでしょうか。孫はびっくりです。
芸術作品や文学からの引用なんかが大量にあって、もちろん文庫本の後ろにちゃんと注釈がついてるんですけど、注釈を確認するためにページを往復するだけで疲れるくらい、頻繁に出てきました。
この際、せっかくだからいちいち調べて教養を深めればいいんだけども、途中から飽きて、気になるところだけ注釈を見て、あとは何となくノリで読みました。そんなことだから知識が増えないんだよ!
残念ながら、どうも主人公の心情の流れにうまく共感できない箇所が多くて、のめりこんでは読めませんでした。芸術的な感受性が足りなかった! こういうのを馬の耳に念仏というんだな。
けれど、描写がところどころものすごく美しくて、理解に乏しいなりにも、読んでよかったです。
いちばん好きなところを引用。
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雨が降ったら濡れるだろ。
霜が下りたら冷たかろ。
土のしたでは暗かろう。
浮かば波の上、
沈まば波の底、
春の水なら苦はなかろ。
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主人公が、スウィンバーンという詩人の詩や、ミレーのオフェーリヤ(絵画)を思い浮かべながら、土左衛門が果たして絵になるかどうかといったことに思いを巡らせるところ。
きれいな描写や、はっとするような詩句がたくさんありました。言葉への感性が鋭い人だったんだなあ、旧千円札の人。
読了。池澤夏樹個人編 世界文学全集より。
第一次大戦の前後、アフリカで17年のあいだ農園を経営していたデンマーク人の作者が綴る、アフリカの高原への愛の歌。
美しく詩的な描写で綴られる日々、行間に滲む農園と土地の人々への深い愛情と憧憬。
すぐそばにライオンやヒョウが行き来する、禁猟区を含んだ広大な丘陵の土地を持ち、借地人たちの力を借りながら、手探りで経営する農園。
キクユ族やマサイ族の人々のふしぎな気風や習慣、西洋とかけはなれた価値観。初めて自分の半生を綴ってもらったという土地の男がみせた文章への感動、文字とのはじめての出会いということ。ヨーロッパ式とはまったく異なる裁判と賠償の考え方。身を飾ることに誇りを持つ黒い肌の優美な娘たち、好奇心に満ちた牧童、祭りがあると聞いて遠くから集まってくる人々の踊りの輪。
賢い猟犬や、農園の牛や馬たち、迷い込んできた美しい仔鹿や、色とりどりに皮膚を輝かせるイグアナ、西洋にいるときとは違う暮らしぶりをみせるコウノトリの群れ、高い山の稜線を歩くバッファローたち……。
もちろん、起きる出来事はいいことばかりではなく、そこで見るものも美しいものばかりではない。暮らしの中で起きた不幸な事故、旱魃、蝗害、人々の諍い。どうしても折り合わない、土地の人との価値観もある。それでも筆者の語るアフリカは、驚くほど美しい。
やがて経営が立ち行かなくなり、アフリカを去るまでの濃密な十七年間を、ずっと後になってから綴ったとのこと。
解説で、アフリカの日々が作者の記憶の中で蒸留され、美しい結晶になったと表現されているけれど、まさにそういう感じです。
詩的で美しい情景には、はっとして何度も読み返したくなる箇所がたくさんあります。とても印象深い一冊。
第一次大戦の前後、アフリカで17年のあいだ農園を経営していたデンマーク人の作者が綴る、アフリカの高原への愛の歌。
美しく詩的な描写で綴られる日々、行間に滲む農園と土地の人々への深い愛情と憧憬。
すぐそばにライオンやヒョウが行き来する、禁猟区を含んだ広大な丘陵の土地を持ち、借地人たちの力を借りながら、手探りで経営する農園。
キクユ族やマサイ族の人々のふしぎな気風や習慣、西洋とかけはなれた価値観。初めて自分の半生を綴ってもらったという土地の男がみせた文章への感動、文字とのはじめての出会いということ。ヨーロッパ式とはまったく異なる裁判と賠償の考え方。身を飾ることに誇りを持つ黒い肌の優美な娘たち、好奇心に満ちた牧童、祭りがあると聞いて遠くから集まってくる人々の踊りの輪。
賢い猟犬や、農園の牛や馬たち、迷い込んできた美しい仔鹿や、色とりどりに皮膚を輝かせるイグアナ、西洋にいるときとは違う暮らしぶりをみせるコウノトリの群れ、高い山の稜線を歩くバッファローたち……。
もちろん、起きる出来事はいいことばかりではなく、そこで見るものも美しいものばかりではない。暮らしの中で起きた不幸な事故、旱魃、蝗害、人々の諍い。どうしても折り合わない、土地の人との価値観もある。それでも筆者の語るアフリカは、驚くほど美しい。
やがて経営が立ち行かなくなり、アフリカを去るまでの濃密な十七年間を、ずっと後になってから綴ったとのこと。
解説で、アフリカの日々が作者の記憶の中で蒸留され、美しい結晶になったと表現されているけれど、まさにそういう感じです。
詩的で美しい情景には、はっとして何度も読み返したくなる箇所がたくさんあります。とても印象深い一冊。
読了。
ヨークシャーにある<嵐が丘>という屋敷の主人に拾われた少年ヒースクリフは、長じるにつれてその家の娘・キャサリンと愛し合うようになるが、キャサリンは貧しいヒースクリフではなく、近くに屋敷を構えるリントン家の嫡男との愛のない結婚を選ぶ。屋敷を去ったヒースクリフは、数年を経て、どこから稼いだのか莫大な富を抱えて、復讐のために<嵐が丘>に戻ってくるが……。
数年前までリントン家の屋敷だった<鶫の辻>に間借りすることになった主人公は、ひどく偏屈な貸主・ヒースクリフと、彼とともにくらす奇妙な家族にに興味を引かれる。間借りする屋敷に仕える女中頭が、前からこの土地に暮らしているというので、彼の生い立ちを話し聞かせてもらうことにした……というところから話が始まる。
以後、女中頭の語る昔語りを中心に、主人公が現在見聞きした内容が混じって、過去と現在の嵐が丘のようすが語られていく。
冒頭、まだ女中頭の過去語りに入る前、物語時間でいう“現在”のヒースクリフが、キャサリンの亡霊が現れたと聞いて、気が狂ったように嘆き取り乱す一幕があって、それが最後まで話のキイになっています。
要約すると復讐の物語なんだけれども、その一幕があったことで、ヒースクリフの胸を占めているのが自分を虐待した人々への憎悪だけではなく、いまもキャサリンへの激しい愛と憎しみとの両方に心が引き裂かれて苦悩しているんだということを演出しています。
全体に鬱々とした話なんだけれども、映画のような、人々の悲哀の合間にふと混じる遠景や、季節の移ろいを描く描写の美しさがみごと。
ヨークシャーにある<嵐が丘>という屋敷の主人に拾われた少年ヒースクリフは、長じるにつれてその家の娘・キャサリンと愛し合うようになるが、キャサリンは貧しいヒースクリフではなく、近くに屋敷を構えるリントン家の嫡男との愛のない結婚を選ぶ。屋敷を去ったヒースクリフは、数年を経て、どこから稼いだのか莫大な富を抱えて、復讐のために<嵐が丘>に戻ってくるが……。
数年前までリントン家の屋敷だった<鶫の辻>に間借りすることになった主人公は、ひどく偏屈な貸主・ヒースクリフと、彼とともにくらす奇妙な家族にに興味を引かれる。間借りする屋敷に仕える女中頭が、前からこの土地に暮らしているというので、彼の生い立ちを話し聞かせてもらうことにした……というところから話が始まる。
以後、女中頭の語る昔語りを中心に、主人公が現在見聞きした内容が混じって、過去と現在の嵐が丘のようすが語られていく。
冒頭、まだ女中頭の過去語りに入る前、物語時間でいう“現在”のヒースクリフが、キャサリンの亡霊が現れたと聞いて、気が狂ったように嘆き取り乱す一幕があって、それが最後まで話のキイになっています。
要約すると復讐の物語なんだけれども、その一幕があったことで、ヒースクリフの胸を占めているのが自分を虐待した人々への憎悪だけではなく、いまもキャサリンへの激しい愛と憎しみとの両方に心が引き裂かれて苦悩しているんだということを演出しています。
全体に鬱々とした話なんだけれども、映画のような、人々の悲哀の合間にふと混じる遠景や、季節の移ろいを描く描写の美しさがみごと。
読了。アフリカ文学初体験!
池澤夏樹個人編・世界文学全集より。同じ巻に『アフリカの日々』も入っていて、そちらはヨーロッパ人の目から見たアフリカ、こちらはアフリカ人の書くアフリカ。
とりあえず薄いほうから読んでみました。
主人公は、父親が彼のために専属でつけてくれたやし酒作りの名人が作るやし酒を、毎日浴びるほど飲んで暮らしていた。
しかし、ある日名人はやしの木から落ちて死んでしまう。もう彼の作るやし酒が飲めないことを嘆く主人公は、「死者も死んでしばらくはこの世界にとどまるものだ」という古老たちの言葉を信じ、なんとしても名人を探し出して、またやし酒を作ってもらおうと、ジュジュ(呪術の道具)を手に持って、長い旅に出る。
これは……文学・小説というよりも、どちらかというと神話・民話の部類なんじゃないかなあ。
鍛錬された作家の書く洗練された小説を読むことに慣れていると、ガツンとやられた感じがします。第一声は「なんじゃこりゃ!」。でたらめというか、はちゃめちゃというか、トリッキーというか、いやはや。
ナイジェリア人の作者さんが英語で書いたものを、さらに邦訳してあるそうです。土屋哲さんの訳もなかなかすごい。名訳というか迷訳というか、冒頭から引用すると、
---------------------------------
わたしは、十になった子供のころから、やし酒飲みだった。わたしの生活は、やし酒を飲むこと以外には何もすることのない毎日でした。当時はタカラ貝だけが貨幣として通用していたので、どんなものでも安く手に入り、おまけに父は町一番の大金持ちでした。
---------------------------------
もう冒頭から眩暈がします。
解説を見てみると、原文からしてユニークな造語交じりの、独特の英語だったそう。
神々と精霊と人と、それから“生物”というおおざっぱなくくりで説明される何者か。そういう不思議な存在が、全部ごた混ぜの一緒くたに出てきます。
全体にユーモラス。ヘンテコな生き物やヘンテコな人々がいっぱい出てきて、大騒ぎです。
主人公もかなりのお調子者。法螺を吹いたり、見栄を張ったり、そのまま張った見栄を自分で信じ込んだり、おっかない生き物からあわてて逃げ隠れしたり。かと思えば襲い掛かってきた人や生き物に反撃して、大量虐殺を繰り広げているシーンも数箇所あったようなんですが……それって物語の主人公的にアリなの!? というツッコミは、無粋ってものでしょうか。
生も死も混沌として、平気で死者がその辺をうろうろしているし、死んだり生き返ったりけして死ななくなったりするし、主人公はたびたび旅の目的を忘れて寄り道して、何年ものあいだ面白おかしく遊び暮らしたり。
常識に囚われた固い頭で読むと「!?」となります。でも、神話とか民話とかって、そういうものですよね。
サムソンが神のお告げに従って髪を切らなかったら、怪力になって敵を一網打尽。そこで「なんで??」とか「いや、無理だろ……」とか言っても始まらない。
ということで、うまくこのお話の世界に入り込むことができれば、すごく面白いです。
美しく「完全な紳士」と見えた男は、実は体の各部を所有主から借りていただけで、借りた部分を返していくと、最後には頭ガイ骨だけが残る。
この世の何ものよりも素晴らしくドラムを打ち、踊り、歌う「ドラム」「ダンス」「ソング」という生き物がいて、彼らのようすを見聞すると、誰もどこまでもついて行かないではおられない気持ちになる。
何でも食べてしまい、いつもおなかをすかせている「飢えた生物」が、飢えのあまり主人公の妻を食べようと襲い掛かってくる。……
読む人によって好みはわかれるかもしれないけれど、独特の魅力があります。
池澤夏樹個人編・世界文学全集より。同じ巻に『アフリカの日々』も入っていて、そちらはヨーロッパ人の目から見たアフリカ、こちらはアフリカ人の書くアフリカ。
とりあえず薄いほうから読んでみました。
主人公は、父親が彼のために専属でつけてくれたやし酒作りの名人が作るやし酒を、毎日浴びるほど飲んで暮らしていた。
しかし、ある日名人はやしの木から落ちて死んでしまう。もう彼の作るやし酒が飲めないことを嘆く主人公は、「死者も死んでしばらくはこの世界にとどまるものだ」という古老たちの言葉を信じ、なんとしても名人を探し出して、またやし酒を作ってもらおうと、ジュジュ(呪術の道具)を手に持って、長い旅に出る。
これは……文学・小説というよりも、どちらかというと神話・民話の部類なんじゃないかなあ。
鍛錬された作家の書く洗練された小説を読むことに慣れていると、ガツンとやられた感じがします。第一声は「なんじゃこりゃ!」。でたらめというか、はちゃめちゃというか、トリッキーというか、いやはや。
ナイジェリア人の作者さんが英語で書いたものを、さらに邦訳してあるそうです。土屋哲さんの訳もなかなかすごい。名訳というか迷訳というか、冒頭から引用すると、
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わたしは、十になった子供のころから、やし酒飲みだった。わたしの生活は、やし酒を飲むこと以外には何もすることのない毎日でした。当時はタカラ貝だけが貨幣として通用していたので、どんなものでも安く手に入り、おまけに父は町一番の大金持ちでした。
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もう冒頭から眩暈がします。
解説を見てみると、原文からしてユニークな造語交じりの、独特の英語だったそう。
神々と精霊と人と、それから“生物”というおおざっぱなくくりで説明される何者か。そういう不思議な存在が、全部ごた混ぜの一緒くたに出てきます。
全体にユーモラス。ヘンテコな生き物やヘンテコな人々がいっぱい出てきて、大騒ぎです。
主人公もかなりのお調子者。法螺を吹いたり、見栄を張ったり、そのまま張った見栄を自分で信じ込んだり、おっかない生き物からあわてて逃げ隠れしたり。かと思えば襲い掛かってきた人や生き物に反撃して、大量虐殺を繰り広げているシーンも数箇所あったようなんですが……それって物語の主人公的にアリなの!? というツッコミは、無粋ってものでしょうか。
生も死も混沌として、平気で死者がその辺をうろうろしているし、死んだり生き返ったりけして死ななくなったりするし、主人公はたびたび旅の目的を忘れて寄り道して、何年ものあいだ面白おかしく遊び暮らしたり。
常識に囚われた固い頭で読むと「!?」となります。でも、神話とか民話とかって、そういうものですよね。
サムソンが神のお告げに従って髪を切らなかったら、怪力になって敵を一網打尽。そこで「なんで??」とか「いや、無理だろ……」とか言っても始まらない。
ということで、うまくこのお話の世界に入り込むことができれば、すごく面白いです。
美しく「完全な紳士」と見えた男は、実は体の各部を所有主から借りていただけで、借りた部分を返していくと、最後には頭ガイ骨だけが残る。
この世の何ものよりも素晴らしくドラムを打ち、踊り、歌う「ドラム」「ダンス」「ソング」という生き物がいて、彼らのようすを見聞すると、誰もどこまでもついて行かないではおられない気持ちになる。
何でも食べてしまい、いつもおなかをすかせている「飢えた生物」が、飢えのあまり主人公の妻を食べようと襲い掛かってくる。……
読む人によって好みはわかれるかもしれないけれど、独特の魅力があります。
プロフィール
HN:
朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
朝陽遥(アサヒ ハルカ)またはHAL.Aの名義であちこち出没します。お気軽にかまってやっていただけるとうれしいです。詳しくはこちらから
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