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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
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 読了。


 そういう話を聞きながら、彼はこんなに人がしあわせそうに生きている土地は他にないと思った。食べるものは山と畑と川からもたらされ、湧き水が涸れることはない。お金はあまり村に入ってこないけれども、お金で買うのは服地とか、紙巻きタバコとか、懐中電灯の電池とか、そういう雑貨ばかり。キセルで吸うタバコならば自分たちのところで採れるので間に合う(吸わせてもらうと、とても甘いいい味がした)。


 本文より。

 大人の絵本。絵本といっても、ほんとの大人向け。そういう本って、ふだんはあまり読まないんですけど(好き嫌いではなく、貧乏性なので薄くて高い本には気後れしてなかなか手が伸びない。映画のパンフレットとか)、でも、池澤さんの本だから……!(←ファン根性)

 読んでみて、池澤さんらしいお話だなあと思いました。絵は渡邊良重さんという方で、シンプルな挿絵がなんかほっとする感じ。
 村で作ったミカンを籠に抱えて、山の上から延々と歩いて下り、町まで売りに行く人々。畑の世話をし、ヤギを飼って、病気になったら祈祷師に病気を追い払ってもらう暮らし。
 言葉の通じない異国、昔ながらの暮らしをしている山中のちょっと不思議な村に、いっとき自分も迷い込んだような気分になりました。

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 読了。

 早朝、公園のゴミ箱から、若い女性の腕だけが発見された。直後に同じ公園から見つけ出された、行方不明の女性・古川鞠子のハンドバッグ。しかし、テレビ局に犯人から電話がかかる。腕は鞠子のものじゃない、鞠子は別の場所にいる――
 世間の受けた衝撃をあざ笑うかのように、次々と起きる事件。被害者の家族を振り回し、その苦しむ姿を見て喜び、警察やマスコミを翻弄して楽しむ「犯人」。殺された女性たちと彼らの間には、まるでつながりが見つけられない。捜査は難航し、犯人を追う手がかりは絶望的に少ないように思われたが……

 次々に提示される衝撃的な展開。遺族、発見者、ルポライター、警察と、さまざまな関係者の視点から話が織り成されており、途中からは犯人サイドの視点に突入して、物語中盤で「真犯人」は読者の目にさらけ出されますが、「犯人」は変わらず世間を欺き続け、周囲の人々を手のひらの上で躍らせてはほくそ笑んでいる……
 あまり詳しい筋書きを書いてネタバレするのも何ですから、あとは控えますが、ともかく濃かった、そして面白かった。全五巻、あっという間に読んでしまいました。

 個人的には大満足。しかし「衝撃の問題作」とコピーに謳われるのもよく分かります。胸が悪くなるような犯人の行動、悪意。宮部さんの描写は、人物の内面に踏み込んで描かれるので、読んでいてけっこうつらい。少なくとも、猟奇描写や人の心の闇を描いた作品が苦手な方には、あまりおすすめできないかも。
 最終的には犯人との対決があり、しっかりしたストーリーの収束を迎えるんですけれども、犯人と闘うほうも、自分の心の弱さからときに間違い、後悔し、苦しみながら歩いていて、その関係者一人ひとりの生身の生活や苦しみが丁寧に描かれているからこそ、読んでいて夢中になって読めるし、苦しい。

 この作品のあとに出た『楽園』の方を先に読んだのですが、そちらは『模倣犯』に登場するライター・前畑滋子が主人公で、9年後の、また別の事件にまつわる話でした。そっちもすごく面白かったけども、やはりやるせない辛い事件を取り扱っているので、好みは分かれるかもしれません。

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 読了。

 らい病院に勤める医師のサンダーズは、愛人に会うためにモント・ロイアルに向かっていた。
 近くの港までたどり着いてみると、その町は厳重な警戒に包まれていた。目的の町モント・ロイアルでは奇妙な現象が観測され、それも急速に周囲へ広がっているという。目的地まで向かう道はすでに軍隊に封鎖されていたが、サンダーズはなんとかして愛人に会おうと、調査団に同行することにした。
 入り込んだ森は、奇妙な姿を見せていた。不定期に森の中心から「波」が押し寄せてくると、あらゆる生物・非生物が、きらきらと輝く水晶に取り込まれ、結晶化していく。結晶に包まれたものからは、生も死も、時間というものがすべて失われるようだった……

 世界滅亡もののSF小説だけども、どっちかというと、SFというよりも幻想色が強いです。観念的というか……
 物悲しく美しい世界の終末。全世界がどうしようもなく美しい結晶に飲み込まれていこうとしているのだけれども、結晶化を一度でも体験した人間たちは、その魅力にとりつかれ、恐怖するどころか、結晶の森での永遠を、何ものにも換えがたい喜びと認識するようになっていきます。

 私の好みの問題ですけども、その現象が起きた理由にはもう少し、もっともらしい説明を書いてほしかった気がします。厳密な科学的考証とかはいらないんだけど、詳細が省略されすぎていてちょっと物足りなかったというか……

 本の外側から眺める絵としては、とても美しいけれども、どうもうまく小説世界に入り込めず、登場人物にもいまいち共感できなかったです。主人公が不倫の挙句に二股をかけているあたりも、いまいち感情移入しづらい一因かも。二股は、二人の対照的な女性の対比ということで、物語の構成上はずせないテーマだったのかもしれないんですが、まあとりあえず女の敵だよね!
 ということで、個人的な好みからするとやや不満足。しかし、好きな人は好きでしょうし、インパクトは強かったです。

 もうじき死のうとしている病人たちが、永遠を求めて行列をなし、森に向かっていく後ろ姿が、なんとももの寂しくて印象的でした。

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 読了。

 少女は夜の町を逃げていた。パトカーのサイレンから。自分がはずみで大怪我を負わせてしまった、血のつながらない父親から。大人になんてなりたくないという自分の気持ちから。
 身を隠すために、ダストシュートから飛び込んだ少女は、ゴミの山の中に、奇妙なものを見つける。凍った裸の少女。その身体はどう見ても凍りついているのに、おかしなことに、その女の子は息をしていた。そして手に、似合わない銃を握り締めていた。
 おりしもその夜、学校の裏山に謎の隕石だかUFOだかが、墜落したというニュースが報道されていた。


 ――毎日どこかで、ぼくたちは大人にころされてる。心とか。可能性とか。夢見る未来とかを。足蹴にされて踏みつけられて、それでもまた朝になったら学校に行かないといけない。
 そういった殺戮は、日本中いたるところで毎晩のように起こっているんだ。この瞬間だって、泣きそうになって夜空を見上げている中学生は、ぼくだけじゃない。同じ夜空を見上げている誰かが、いるはずなんだ。

 青春小説。大人に対する不信感でいっぱいで、傷つきやすくて、家族や周りの大人の言動に傷ついたり怒ったりしてばかりいて、逃げ出したくて、息苦しくて仕方がない。
 同じ青春小説と言う触れ込みのものを読んでも、共感できるときとそれほど共感できないときがあるんですけども、桜庭さんの書く思春期は、なんだか自分にも覚えのある感情がよみがえってきて、胸に突き刺さります。主人公が少女だからかもしれないんですが……

 ちょっとラストが実験的な感じでして、わたしは割と何でも白黒つけたい性格なので、ストーリー上で明らかにされなかった部分に、ちょっともやもやするような感覚もあり、どちらかというと先に読んだ『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』のほうが好きだったかもです。

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 読了。

 新撰組に関する短編を集めた歴史・時代アンソロジー。(司馬遼太郎/柴田錬三郎/北原亞以子/戸川幸夫/船山馨/直木三十五/国枝史郎/子母沢寛/草森紳一)
 正直、司馬遼太郎さんのお名前に惹かれて買ったようなものなのですが、他の作品もそれぞれ楽しめました。

 北原亞衣子さんの『降りしきる』がちょっと印象深かったです。芹沢鴨が強引に押し倒した結果、芹沢に惚れて屯所に通いつめるようになった商家の娘・お梅が、一方では土方歳三のことをずっと気にしていながらも、意地を張ってその気持ちを伝えられないでいるうちに、芹沢を暗殺するために部屋に押し入った土方に、斬られて死んでしまうという悲恋のお話です。
 現代女性の価値観で読むなら、身勝手な男たちにぷんすか怒るべきでしょうか。それとも芹沢鴨の女でありながら土方歳三に気持ちの向いている主人公に、気の多い女だなあとあきれるべきでしょうか。いまとは価値観の違う歴史ものの、それもフィクションの部分に、自分の尺度を当てる無粋よりも、素直に物語の情感を楽しむのが正解かなと思います。女の意地がいじらしいような、かわいそうなようなで、ええなあと思います。悲恋系のストーリーを読むなら、ファンタジーか歴史モノがいいです。現代女性の悲恋ものだと、なんだか必要以上に感情移入したり、即物的なツッコミを入れたくなりますので。

 うーん、それにしても、一時に色んな作者さんの近藤像・土方像・沖田像を並べて読むと、興味深いような、混乱するような、不思議な気分になります。やっぱりイメージがちょっとずつ違いますねえ。
 歴史小説って、ある程度のところまでは史実(資料や当時を生き延びた人の談話)に基づいて書かれているけれども、細部については結局のところ、作者さんの想像で補うしかないわけで、同じ出来事が、別の作家さんの手にかかるとまったく違う色合いを帯びて描写されるというのが、面白いような気がします。

 土方歳三の最期なんて、司馬遼太郎さんの名作『燃えよ剣』では、死に場所を求めて戦いに戦った挙句、敵に囲まれて馬上で射撃されるという、渋いけれども派手なシーンでして、それがいかにも、凄絶な男の死に様というふうで、もちろん悲しいシーンではあるのだけれども、痺れるようなカッコよさなんです。
 それが、このアンソロジーに収録されている草森紳一さんの『歳三の写真』では、敵情を探ろうと屋根の上で双眼鏡を覗いているところを、撃たれて屋根から転げ落ちたという、ちょっと間の抜けた構図で、最初に読んだほうのストーリーの印象が強いだけに、あれっという感じ。
 ……と、後者も、ほんとうに間抜けな感じに書いてあるわけじゃなくて、これはこれで、前段における土方と写真についてのエピソードが、時代のうねりと取り残された旧時代の価値観の対比が、哀愁を感じさせて、いいラストなんですけれども。

 どこまでがきちんと資料の残されている史実で、どこからがフィクションなのか、不勉強なものでよく分からないのですけれども、司馬遼太郎さんの書かれる歴史上の人物のエピソードには、いつもロマンがあふれています。
 男のロマン的なものって、現実の生活の中では「ロマンで飯が食えるか!」って思うんですけど(←身もふたもない)、フィクションの中ではものすごく憧れがあって、でも自分が書こうとして書けるかというと、何をどうやっても水っぽくなるので、いいなあーと思うような作品を読むと、うれしいけれども、同時にちょっと悔しいです。

 ……これ、どっちかというと『燃えよ剣』の感想記事じゃない?
 ええと。
 ちゃんとそれぞれに面白かったですよ!

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プロフィール
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朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
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朝陽遥(アサヒ ハルカ)またはHAL.Aの名義であちこち出没します。お気軽にかまってやっていただけるとうれしいです。詳しくはこちらから
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