小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
読了。
みをつくし料理帖第三弾。
江戸で女だてらに「つる屋」の料理人をつとめる澪。前作までにもさまざまな苦労を乗り越え、店も軌道に乗ってきたと思っていたころ。
前作までに、澪たちへ嫌がらせを繰り返していた料理人の男。悪事が露見して、それまでつとめていた大店を追い出されたその男が、澪たちのことを逆恨みして、姑息な手法でつる屋の客を奪い始めた。それがさらに思わぬ事態を招いて、つる屋に非常に不名誉な噂が立ち、客は激減。声を嗄らして濡れ衣を訴えても、客たちは耳を貸してはくれない。今度こそどうにも商売が立ち行かなくなったかと思われたつる屋だったが……
前作までの感想と重複しますが、どんなに辛いことがあってもあきらめない澪の姿に勇気づけられる思いがします。なんとも人のいいつる屋の面々、血はつながらなくても家族のように思い合うかれらの情が、じーんと胸に沁みます。
また、武士と町人という身分違いの恋が描かれているんですけども、澪のけなげさがまたせつない。
続きが楽しみなシリーズです。
みをつくし料理帖第三弾。
江戸で女だてらに「つる屋」の料理人をつとめる澪。前作までにもさまざまな苦労を乗り越え、店も軌道に乗ってきたと思っていたころ。
前作までに、澪たちへ嫌がらせを繰り返していた料理人の男。悪事が露見して、それまでつとめていた大店を追い出されたその男が、澪たちのことを逆恨みして、姑息な手法でつる屋の客を奪い始めた。それがさらに思わぬ事態を招いて、つる屋に非常に不名誉な噂が立ち、客は激減。声を嗄らして濡れ衣を訴えても、客たちは耳を貸してはくれない。今度こそどうにも商売が立ち行かなくなったかと思われたつる屋だったが……
前作までの感想と重複しますが、どんなに辛いことがあってもあきらめない澪の姿に勇気づけられる思いがします。なんとも人のいいつる屋の面々、血はつながらなくても家族のように思い合うかれらの情が、じーんと胸に沁みます。
また、武士と町人という身分違いの恋が描かれているんですけども、澪のけなげさがまたせつない。
続きが楽しみなシリーズです。
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読了。
セキュリティ会社が主催するイベント、ブレイクスルー・トライアル。北海道の人里離れた研究所に、最新のセキュリティシステムが配備されている。制限時間内にそのセキュリティを破り、所定のマーカーを建物内から持ち出してゴール地点まで脱出することができれば、一億円の賞金が支払われるという。
特殊な境遇で育った主人公は、それまでの人生と決別することを選び、このイベントに誘ってきた親友とともに、勤務先を退職してトライアルに挑む。
ところが、いざ建物に侵入してみると、参加者の中にはずいぶんと物騒な連中が混じっていて……
軽快というか、痛快でした。
冒頭の方で、すこし文章に読みづらい箇所があって、やや戸惑ってしまったのだけれども、読み進めていくうちに、加速するようにどんどん面白くなっていきました。ほっとするラストがすごく好きです。
細かい伏線というか、序盤で出てきたセリフを拾って後に出てくるジョークなんかがちょっと粋で、とにかく読んでいて楽しかったです。
セキュリティ会社が主催するイベント、ブレイクスルー・トライアル。北海道の人里離れた研究所に、最新のセキュリティシステムが配備されている。制限時間内にそのセキュリティを破り、所定のマーカーを建物内から持ち出してゴール地点まで脱出することができれば、一億円の賞金が支払われるという。
特殊な境遇で育った主人公は、それまでの人生と決別することを選び、このイベントに誘ってきた親友とともに、勤務先を退職してトライアルに挑む。
ところが、いざ建物に侵入してみると、参加者の中にはずいぶんと物騒な連中が混じっていて……
軽快というか、痛快でした。
冒頭の方で、すこし文章に読みづらい箇所があって、やや戸惑ってしまったのだけれども、読み進めていくうちに、加速するようにどんどん面白くなっていきました。ほっとするラストがすごく好きです。
細かい伏線というか、序盤で出てきたセリフを拾って後に出てくるジョークなんかがちょっと粋で、とにかく読んでいて楽しかったです。
読了。
顔見知りのあの子が誘拐されたと知った時、驚いたり悲しんだり哀れんだりする一方で、わが子が狙われなくてよかったと胸をなでおろしたのは私だけではあるまい――
近所で誘拐殺人事件が起きた。主人公は食品メーカーに勤務するサラリーマン。自分のことを、他人に無関心で冷酷な人間だと自覚しているが、妻や一男一女と暮らす平和な日常を、それなりに愛してもいる。
他人の不幸は、気の毒なことではあるが、それでも対岸の火事には相違ない。近所で起きた事件が、やがて東京近郊でたて続けに起きる連続誘拐殺人事件に発展したときにも、まだそう思っていた主人公だが、小学六年生の息子の部屋で、一連の事件の犯人しか持ちえないと思われる、数々の証拠品を見つけて……
深かったし、面白かったけれど、もうちょっと突っ込んだ結末まで読みたかった、というのが正直な感想です。
とはいえ、作品テーマとしての結論はしっかり描ききられているように思うので、文学作品として不完全ということはないと思うのだけれども……というか、むしろ結末を書いてしまえば、作品の主題としては蛇足になるのかもしれないのだけれども。
しかし、エンターテイメント作品のつもりで読むには、真相がどうだったのか、もう少しでもいいから、ほのめかしてほしかった気がします。ミステリの形式をとっているだけに、カタルシスの得られるはっきりした結末を期待してしまって、肩透かしを食らったというか……。
まえに読んだ歌野さんの『葉桜の季節に君を想うということ』の結末が、すごく意外性があって痛快だっただけに、そちらの方面に過剰な期待をしてしまったというのもあります。
……などと言ってはみても、内容そのものは、面白かったです。
わが子が犯した(と思われる)犯罪に、正面から向き合えない。その罪の大きさによりも、平和な日常生活を失うことにばかり怯えている小心な自分……。どこにでもいる普通の人間が、自分の心の弱さに振り回されて、保身を図りたがり、都合の悪いことを見なかったことにしたがる。けれど目を逸らして完全に知らないふりをすることもできない。その弱さが他人事じゃなくて、読みながら怖かった。
もし自分に子どもを育てた経験があれば、また違った感想が出てきたかも……とも思います。
顔見知りのあの子が誘拐されたと知った時、驚いたり悲しんだり哀れんだりする一方で、わが子が狙われなくてよかったと胸をなでおろしたのは私だけではあるまい――
近所で誘拐殺人事件が起きた。主人公は食品メーカーに勤務するサラリーマン。自分のことを、他人に無関心で冷酷な人間だと自覚しているが、妻や一男一女と暮らす平和な日常を、それなりに愛してもいる。
他人の不幸は、気の毒なことではあるが、それでも対岸の火事には相違ない。近所で起きた事件が、やがて東京近郊でたて続けに起きる連続誘拐殺人事件に発展したときにも、まだそう思っていた主人公だが、小学六年生の息子の部屋で、一連の事件の犯人しか持ちえないと思われる、数々の証拠品を見つけて……
深かったし、面白かったけれど、もうちょっと突っ込んだ結末まで読みたかった、というのが正直な感想です。
とはいえ、作品テーマとしての結論はしっかり描ききられているように思うので、文学作品として不完全ということはないと思うのだけれども……というか、むしろ結末を書いてしまえば、作品の主題としては蛇足になるのかもしれないのだけれども。
しかし、エンターテイメント作品のつもりで読むには、真相がどうだったのか、もう少しでもいいから、ほのめかしてほしかった気がします。ミステリの形式をとっているだけに、カタルシスの得られるはっきりした結末を期待してしまって、肩透かしを食らったというか……。
まえに読んだ歌野さんの『葉桜の季節に君を想うということ』の結末が、すごく意外性があって痛快だっただけに、そちらの方面に過剰な期待をしてしまったというのもあります。
……などと言ってはみても、内容そのものは、面白かったです。
わが子が犯した(と思われる)犯罪に、正面から向き合えない。その罪の大きさによりも、平和な日常生活を失うことにばかり怯えている小心な自分……。どこにでもいる普通の人間が、自分の心の弱さに振り回されて、保身を図りたがり、都合の悪いことを見なかったことにしたがる。けれど目を逸らして完全に知らないふりをすることもできない。その弱さが他人事じゃなくて、読みながら怖かった。
もし自分に子どもを育てた経験があれば、また違った感想が出てきたかも……とも思います。
読了。
某国の大統領がテロリストに拉致され、弾道ミサイルの発射スイッチがある軍事施設に監禁された。でもみんな、まだどこか他人事のような、現実感のないような気持ちで、遠くから騒いでいる。
そんな中、デザインコースの課題として、絵を描くために屋上に上がった主人公は、金髪リーゼントという、いかにも不良然とした同級生・国重をはじめ、ちょっとヘンテコな連中に遭遇する。最初はちょっと警戒した主人公だったが、話をしてみると、かれらはなかなか面白いやつらだった。そんな中、国重がおもむろに言った。「今日から俺たちは屋上部だ」
屋上部の活動内容は、屋上の平和を守ること。世界が弾道ミサイルの脅威に怯えて固唾を呑んで事態を見守る中、屋上部の四人は屋上の平和を守るため、という名目のもとに、好奇心から身の回りの奇妙な事件に首を突っ込み始めるが……
さわやか! 心あたたまるエピソードやユーモア、ほのかーな恋愛模様、起伏に飛んだ盛り上がる展開、痛快でさわやかなキャラクターたちと、わくわくしながら読める、極上のエンターテイメント作品でした。
薦めていただいたときに、伊坂幸太郎さんの影響が強いと聞いていたのですが、たしかになあ、と思いました。セリフ回しや文体がそっくりだし、用意された展開(劇画的というか、フィクション色の濃さ)、伏線の使い方なんかにも、色濃い影響を感じます。でも、キャラクター性だったり、テーマだったりという面で、伊坂さんの作品とはまた違う種類のよさがあるように思いました。
というかキャラクターがすごく好き。いいなあ国枝。いいなあ沢木。
読んでいてすごく楽しかったです。恵さま、教えてくださってありがとうございます!
某国の大統領がテロリストに拉致され、弾道ミサイルの発射スイッチがある軍事施設に監禁された。でもみんな、まだどこか他人事のような、現実感のないような気持ちで、遠くから騒いでいる。
そんな中、デザインコースの課題として、絵を描くために屋上に上がった主人公は、金髪リーゼントという、いかにも不良然とした同級生・国重をはじめ、ちょっとヘンテコな連中に遭遇する。最初はちょっと警戒した主人公だったが、話をしてみると、かれらはなかなか面白いやつらだった。そんな中、国重がおもむろに言った。「今日から俺たちは屋上部だ」
屋上部の活動内容は、屋上の平和を守ること。世界が弾道ミサイルの脅威に怯えて固唾を呑んで事態を見守る中、屋上部の四人は屋上の平和を守るため、という名目のもとに、好奇心から身の回りの奇妙な事件に首を突っ込み始めるが……
さわやか! 心あたたまるエピソードやユーモア、ほのかーな恋愛模様、起伏に飛んだ盛り上がる展開、痛快でさわやかなキャラクターたちと、わくわくしながら読める、極上のエンターテイメント作品でした。
薦めていただいたときに、伊坂幸太郎さんの影響が強いと聞いていたのですが、たしかになあ、と思いました。セリフ回しや文体がそっくりだし、用意された展開(劇画的というか、フィクション色の濃さ)、伏線の使い方なんかにも、色濃い影響を感じます。でも、キャラクター性だったり、テーマだったりという面で、伊坂さんの作品とはまた違う種類のよさがあるように思いました。
というかキャラクターがすごく好き。いいなあ国枝。いいなあ沢木。
読んでいてすごく楽しかったです。恵さま、教えてくださってありがとうございます!
読了。
廃校に作られたリングで夜な夜な開かれる、非合法のガールズファイト。それを観に集まってくる興奮したようすの客、客、客。
スポットライトに照らされて、それぞれのスタイルで、泥まみれのショーファイトを演じる、二十歳かそこらの女の子たち。
フィクションのような異様な舞台で戦う、格闘技がないと息もできないような、そんなどこか壊れた少女たちと、それぞれのちょっと特殊な恋。
庭の山茶花の木立に落っこちて、枝をバリバリ折りながら、なんとか怪我もせず着地した。冬だった。わたしは山茶花の赤ピンクの花に埋もれて、灯りのついた二階の窓を見上げた。母親の顔が見えた。鬼だった。もう帰れないと思った。
月明かりが白かった。北陸のその町では雪が降っていた。
十五歳。
――夜の街に出た。
本文より。
なんというかディープな設定なのに、切なくて、どこかほっとする、すごくさわやかな読後感でした。桜庭さんの作品って、女の子たちに感情移入しやすくて好きです。
また折をみて、他の作品も探してみようと思います。最近なんだか気になる作家さんが多すぎて困る……!
廃校に作られたリングで夜な夜な開かれる、非合法のガールズファイト。それを観に集まってくる興奮したようすの客、客、客。
スポットライトに照らされて、それぞれのスタイルで、泥まみれのショーファイトを演じる、二十歳かそこらの女の子たち。
フィクションのような異様な舞台で戦う、格闘技がないと息もできないような、そんなどこか壊れた少女たちと、それぞれのちょっと特殊な恋。
庭の山茶花の木立に落っこちて、枝をバリバリ折りながら、なんとか怪我もせず着地した。冬だった。わたしは山茶花の赤ピンクの花に埋もれて、灯りのついた二階の窓を見上げた。母親の顔が見えた。鬼だった。もう帰れないと思った。
月明かりが白かった。北陸のその町では雪が降っていた。
十五歳。
――夜の街に出た。
本文より。
なんというかディープな設定なのに、切なくて、どこかほっとする、すごくさわやかな読後感でした。桜庭さんの作品って、女の子たちに感情移入しやすくて好きです。
また折をみて、他の作品も探してみようと思います。最近なんだか気になる作家さんが多すぎて困る……!
プロフィール
HN:
朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
朝陽遥(アサヒ ハルカ)またはHAL.Aの名義であちこち出没します。お気軽にかまってやっていただけるとうれしいです。詳しくはこちらから
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