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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
 読了。

 気が利かなくてちょっと間の悪いところのある主人公は、同じ大学で知り合った友人たちとの四人組で、それなりに楽しい青春を送っていた。――その事件が起きるまでは。
 ある日、四人で集まっているところに、かれらの教授の息子である小学生の男の子が通りかかる。しばらく雑談を交わして別れたあと、主人公たちはまた別の場所で、再び少年の姿を目撃する。少年が散歩に連れていた飼い犬が、急にものすごい勢いで走り出し、少年はそれに引き摺られて、走行中のトラックの前に――
 飛び出した犬の視線の先には、友人がいた。なぜ犬は急に走り出したのか。意図的に犬をそんなふうに走らせることが可能だったのか。もしそうだとしたら、なぜそんなことをしなくてはならなかったのか。主人公は謎を追い始めるが……

 面白かった! いままで読んだ道尾さんの本のなかでは、『ラットマン』のつぎに好きかもです。キャラクターもよくて、主人公のお人よしでちょっと間の抜けたところが、話が進むにつれて、だんだん愛しく思えてきました。何よりストーリーの数々の仕掛け。巧みに誘われるミスリード、意表をつく展開とどんでん返し。青春と友情、疑念とすれ違い。そしてほろ苦い余韻を残しつつも、さわやかで心温まる結末。
 いい小説でした。

 続きに拍手へのお返事です。

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 読了。

 十年後、もしきみが自力で人生を建てなおしていたら、これを渡そう。
 高校のとき、<委員長>というあだ名で呼ばれ、優等生として過ごしていた日々。恋をしていた。相手は典型的な不良少女だった。その彼女に約束した。彼女が自力で人生を建てなおし、まっとうな暮らしを送っていたら……
 それから十年。ニューヨークへの留学中にある事件に巻き込まれて、辛く苦しい日々を過ごしていた主人公は、そのころに交わしたそんな約束を思い出し、帰国する。約束の相手と会うために。

 読みやすく、続きが気になってどんどん読んでしまう展開が、途中まですごく面白かった……んですが、後半に進むにつれてだんだん、セリフが台本みたいになっていって、展開自体はおもしろいのに、それぞれの登場人物が重い過去を背負っている、その厚みというかリアリティがあまり感じられなかったです。残念。

 筋書きがすごくいいだけに、心情描写をもう一歩踏み込んであれば、もっとずっと感動できただろうなあと思えて、すごくもったいない感じがします。自分の感情移入能力の低さに問題があるのかもしれないですが……(汗)

 しかしストーリーは面白かったので、懲りずにそのうち別の作品に手を出してみたいです。

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 上下巻読了。

 近隣の地域で次々に起きた自殺事件。かれらの自殺の直前に撮られた写真を見ると、なぜか背には、二つの眼のようなものが映りこんでいた。
 寂れた小さな村の民宿に泊まり、観光のつもりでぶらぶら滝つぼを見に行った主人公・道尾。しかしそこで、心霊現象としか思えない、不気味な声を耳にする。二泊するつもりだった宿もキャンセルし、急いで逃げ帰った道尾だが、偶然、旧友の真備が心霊研究で名を知られていることを耳にして、十年ぶりに彼に会いに行く。
 霊は本当に存在するのか。どうか存在してほしいと狂おしく願い続けながら、霊現象と思しき自称の真贋をたしかめていく真備。変人にしか見えない彼だが、霊現象を捜し求めているのには、理由があって……

 真備シリーズの一作目。怖いの苦手なんですけども、ホラーと見せかけて、これはきっと理路整然たる仕掛けがあるミステリだ! と思ってがんばって読みました。ミステリかつホラーだった……ううっ。
 でも面白かったので、シリーズの続きもぼちぼち読みます。とりあえず次の『骸の爪』はもう読了したのですが、そちらの感想はまた後日。

 ワトソン役であるところの人物が、道尾さんご自身をモデルにしていらっしゃるらしく、そのまま道尾という名前のホラー作家で、そして見事にワトソンでした。(なんだその感想……)京極堂とか御手洗潔シリーズとかもだけども、ワトソン役の存在は、もう探偵小説の形式みたいなものですよね。探偵が常人の理解を超えた頭脳と感性を持つ変人であるのもね。
 べつにそれがどうだと言っているわけではなくて、さすがの構成と筆致で、最初から最後まで楽しく読ませていただきました。
 事件は解決したものの、真備の過去など、まだまだ伏線と想像の余地を残した終わりで、先を読むのを楽しみにします。

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 読了。

 連作短編集。
 山中に聳える大楠の巨木。樹齢千年を数えるといわれるその大楠は、人々の営みを見つめ続けていた。
 地方に官吏として赴任し、地方豪族に裏切られて樹海をさまよう貴人。心中の相手を待っている女郎。空襲にあい、いままさに焼夷弾に焼かれようとしている少年。貧しい農村に産まれ、わが子を育てきれずに池に沈めようとする女。大楠を神木と祀る神社が経営する幼稚園で働く保育士。経営が立ち行かなくなり無人社となった神社の境内で、やってこない恋人を待つ女性……
 千年前から現代にいたるまでの、大楠にまつわるさまざまな人々のエピソードが絡まりあい、時空を超えて出会う。

 連作短編集の形式をとって、過去と現(近)代のエピソードを交互にいったりきたりしながら、徐々に全体の時系列が進んでいくという構成。それぞれの短編の中で、過去と未来のふたつのストーリーが絡み合い、対比をなしています。
 荻原さんって、ハートフルな人情ものからどたばたコメディ、サラリーマン小説、ホラー、凄惨な事件にまつわる重たいミステリエトセトラ……と、本当に幅広いタッチをもつ作家さんなんですが、その中で本作はかなり重いほうで、ほろ苦くてやるせないエピソードが多かったです。

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 読了。

 主人公の由紀夫には、四人の父親がいる。母親が若い時分に四股をかけたのだという彼らは、なんと全員で一軒の家に住み、それぞれ全員が「由紀夫は俺の子だ」といいながら、由紀夫の世話を焼こうとする。
 そんな特殊な環境で育った由紀夫は、それなりに平穏な高校生活を送っていたはずだったが、友達が不良に絡まれているのをほうっておけなかった一件をきっかけに、次々ととんでもない事態に巻き込まれていき……

 面白かった!
 巧みな伏線の構築による、めまぐるしくも痛快な展開。クセのあるキャラクターたち。四人それぞれに個性的な父親たちが、また面白い。ユーモアたっぷりの会話が楽しく、ほのぼのしたエピソードあり、スリリングな展開あり、読み終えてほっとできるラストがありと、まさに極上のエンターテインメント作品。思い切り楽しめました。

 伊坂さんの作品のなかで、『陽気なギャング』シリーズ、『ゴールデン・スランバー』『砂漠』あたりがお好きな方には、特にオススメかなと思います。

 あと本筋にぜんぜん関係ないんですけども、主人公の名前が由紀夫で、その友達が鱒二……遊んでる?

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朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
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性別:
非公開
自己紹介:
朝陽遥(アサヒ ハルカ)またはHAL.Aの名義であちこち出没します。お気軽にかまってやっていただけるとうれしいです。詳しくはこちらから
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