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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
 読了。
 そのタイトルのとおり、リアル・フィクションと呼ばれるSF作品を集めたアンソロジー。秋山瑞人さんの短編が載っているのを偶然発見して、ものすごい勢いでレジにもっていきました。
 顔ぶれは、秋山瑞人、冲方丁、海猫沢めろん、桜坂洋、新城カズマ、西島大介、長谷敏司、元長柾木。

 秋山さんはもとから大好きすぎて、収録されている短編『おれはミサイル』を、客観的に評価できている自信はないんだけども、やっぱりものすごくツボでした。秋山さんのSFに独特の臨場感というか、壮大な設定にめまいのする感じ、いい意味で強烈なもっともらしさを感じさせる絶妙な描写が、たまらなく好きです。

 ほかで好きだなと思ったのは、冲方さんの『マルドゥック・スクランブル“104”』。ちょっと芝居がかった、フィクション的なフィクションで、そこがいいなあと思いました。皮肉まじりのユーモアが楽しく、喋る鼠の姿をした生物兵器という、コミカルで、かつ哀しい背景をもつキャラクターが、すごくいい味を出しています。

 それから長谷さんの『地には豊穣』も。「経験伝達」という新技術が開発され、Aという人物が積んだ経験を、ほぼそのままBという人間に移植することができる社会が、もう目の前にやってきている。何の経験も持たない若者が、突然、ベテランの技術者と同じスキルを身につけることができる。けれど、例えば英語圏の人間の経験記憶を、ほかの言語を話す人間にそのまま移植するのでは、言語野に齟齬がおきる。そこを解消するために、経験記憶を各国の人間の脳に適合させるための研究も進められている。けれどそこで、経済効果を優先することに重点を置いて開発したがる研究者と、効率を犠牲にしてでも、施術を受ける当人が元から持っていた文化的精神になるだけ影響を与えないことに重点を置こうとする研究者との間で、亀裂が生まれて……
 自分とは何か、集団に帰属するとはどういうことか、文化のもつ精神的支柱としての役割。そうしたテーマについて、新技術の設定に絡めて丁寧に掘り下げられた作品でした。

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 読了。
 新撰組隊士にまつわる色んな作家さんの短編を集めたアンソロジー。津本陽、池波正太郎、三好徹、南原幹雄、子母沢寛、司馬遼太郎、早乙女貢、井上友一郎、立原正秋、船山馨。

 めあては司馬遼太郎さんの短編だったのですが、そっちはそっちで面白かったのだけれども、最後にのっていた船山馨さんの『薄野心中』が、すごく好きでした。
 五稜郭から逃げ落ちた斉藤一が、名を伏せて札幌の土塁工事の人足に紛れていた……という設定で、二十六ページの短いストーリー。
 北海道開拓使の伊牟田は、人足の中に名を変えて紛れていた斉藤一と、それからもと旧会津藩士だった石坂という男に目をつける。けれど、「反乱軍に所属していた者でも、新政府への叛意があきらかでなければ処罰しない」という方針が政府からは示されているため、表立って彼らをどうこうすることはできない。けれど斉藤一は新撰組で名の知れた憎き敵で、伊牟田はどうにかして斉藤を暗殺しようと、画策をはじめる。
 その伊牟田に、石坂は恨みがある。かつて恋仲だった志津という娘が、戦乱のさなかに伊牟田に手篭めにされ、挙句女郎として叩き売られてしまったのだという。その志津と妓楼で再会し、それまでの経緯を聞いて、石坂は伊牟田を殺すつもりで刀を持ち出す。けれど斉藤から思いとどまるように説得されて、やがて苦悩の果てに考えを変え、志津と逃げだして、ふたりで新時代を生き抜こうと決意する。
 けれど伊牟田はその石坂に、汚い手段をつかって濡れ衣を着せ、殺してしまう。
 自分が暗殺されかけても飄々として、争いを嫌い、穏便に札幌から逃げ出そうとしていた斉藤だったが、これを知ってひとり伊牟田の前に立ちふさがり……

 いいな、こういうのすごく好きです。自分のことは何をされても飄々としている人が、友達がひどい目に合わされたときは激怒するっていうのって、読んでてすっごく胸が熱くなります。……言いながら何か既視感を感じるなと思ったら、そのテーマって『ONE PIECE』じゃない?(どんな感想だ)
 脱線しましたが、よかったです。


 続きに拍手レスへの返信です。

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 読了。

 短編集。
 表題作『鉄道員』は、映画にもなったすごく有名な作品ですが、わたしはどちらかというと、『ラブ・レター』が好きだったなあ。
 やくざではないのだけれど、組から仕事をもらって半端仕事をくりかえしてきた主人公。裏ビデオの店長をしていて捕まり、十日ほどの拘留から釈放になったその日、刑事から、「お前のかみさん、死んだぞ」と告げられる。意味が分からずに首を傾げる主人公は、しばらく考え込んで、ようやく自分が中国人女性との偽装結婚に戸籍を貸したことを思い出す。
 組に挨拶にいって、身元引受人として警察に遺体を引き取りにいくように言われ、経費を包まれて、組の若いものを付き添いに、顔もしらない女房の身柄を引き取りにいく主人公。はじめはただ、面倒に巻き込まれたと思っているだけだったが、会ったこともない女の写真を見、手紙を読んでいるうちに、急にたまらなくやるせない思いに襲われて……

 ほかにも好きな作品がいくつもあります。情感たっぷりの短編がぎゅっと詰め込まれた、素敵な一冊でした。

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 読了。

 短編集。
 職場での陰湿ないじめから心を病んだ青年と、それに対して見てみぬふりをしてしまったサラリーマン。若いころにやくざの世界から逃げ出して以来、世間から隠れるようにして暮らしている塗装工。かつてはプロにもなりかけた野球選手だったにもかかわらず、故障で道を断たれた男。
 それぞれの短編が、まるで違うテイストのお話なんですが、それぞれに濃密でした。

 表題作の『雪が降る』は、「大丈夫だろう、大事にはならないだろう」と事態から目を逸らし、見てみぬふりをしてしまったことへの激しい後悔を描き出した、胸に突き刺さる作品。
 塗装工のお話『紅の樹』は、『てのひらの闇』のもとになった短編とのこと。やくざ稼業に嫌気が差して逃げ出したあと、自分の身を守るために転々としながら身を潜めるようにして暮らしていた主人公が、知り合った母娘の身を守るために、自身の保身をかなぐり捨てて命がけで戦う。ハードボイルド好きにはかなりたまらないものがあります。

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 今日はちょっと早く帰れた……!
 これから少しずつ仕事量も落ち着いてくると思い……思いたいです。いや、落ち着くはずです。たぶん。きっと。

 ということで、ものすごくしょうもない感想でアレですが、たまりつつある読書感想文などを、すこしずつ。

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 読了。

 何がスペシャルなのかって、ドラマ版のあらすじやら役者のコメントやらを集めたものです。
 ドラマ版は観ていないし、ふだんはあまりそういうファンブック的なものには興味がないんですが、その中に『臨場』シリーズの未収録短編が何本も収録されていることに気づいたからには買わずにいられない。ということで、衝動買いしたのでした。

 倉石さんやっぱりかっこいい……!!
 い、いや、言い訳させてください。このシリーズはミーハー根性で読むのが正解だと思うんです。
 関係者では知らない者のいない、凄腕の検視官。無頼を気取っていておよそ組織人らしくない。毒舌で、格好つけで、でも情がある。
 カッコイイです。

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朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
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朝陽遥(アサヒ ハルカ)またはHAL.Aの名義であちこち出没します。お気軽にかまってやっていただけるとうれしいです。詳しくはこちらから
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