小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
読了。
まだ人類が宇宙へ出るすべを持たない惑星・ゲゼン。主人公は、極寒の惑星であるその地に、広大な宇宙を結ぶ人類の同盟・エクーメンの使節として、ひとり滞在している。ゲゼンに存在する国々の代表者に、同盟への門戸を開かせるための説得役として、彼らを刺激しないようにと、何の武装ももたず、たったひとりで。
その地に住む人々の体は、外見は主人公たちの種族とそれほど極端な違いはなかったが、ひとつ、大きな差異があった。彼らにはきまった性別がないのだ。およそひと月に一度、彼らはケメル期と呼ばれる時期を迎え、パートナーをそのつど獲得し、その期間だけ性別を得る。
ゲセン人は閉鎖的で、なかなか主人公の説得を容れようとしない。どうにかして彼らを説得しようと苦闘する中で、やがて主人公は彼らの政治的陰謀に利用され……
アーシュラ・K・ル・グウィン。(※この本ではグィンと表記してあります)ゲド戦記の作者さんです。
もともとはSF界で有名な方で、そのことは前から聞き知ってはいたのですけども、ようやく買って読んでみたのでした。もっと早く読めばよかった! むしろゲド戦記よりもこっちのほうが、個人的にはツボだったなあ。ゲド戦記もよかったですけども。
序盤だけちょっととっつきにくい箇所がありましたが、読み進めていくうちにぐいぐい引き込まれました。両性具有の人類が、それゆえの独自の文化を持ち、習慣を持ち、神話を持っている。現実離れした異空間なんだけど、そこに感じられるたしかなリアリティー、異世界の手触り! こーいうの大好きだー!
本の後半は、主人公がゲセン人の青年・エストラーベンと二人、生き残る道を探るために、氷に閉ざされた地を決死の思いで行く道行。飢えと寒さにさいなまれる過酷な道程と、その中で生まれる異種族間の友情。序盤はどちらかというと淡々と進むんですが、一転してドラマチックな展開に。
人間ドラマもよかったんですけども、氷雪に閉ざされたその星には大型動物がいなくて、高カロリーな食料がないので、頻繁に食事を取るのだとか、雪の種類や状態を表す語が六十通り以上もあるだとか、そういう設定に猛烈にときめきます……
とにかく枝葉が好きなんです……読み手としてはそれもいいけど、書き手としてはどうなんだろう……
またこの方のSF作品はおいおい、追いかけていこうと思い……そんな作者さんばっかりだな! 歳をとるにしたがって、どんどん気になる作家さんが増えていって、読みたい本のリストがねずみ算的な伸び方をしているような気がするのですが、気のせいでしょうか。どうしよう……くっそう。人生が五百年くらいあったらもっと惜しみなくかたっぱしから何でもかんでも読んでまわるのに!(その間に新しい本が続々と増え続けると思います)
まだ人類が宇宙へ出るすべを持たない惑星・ゲゼン。主人公は、極寒の惑星であるその地に、広大な宇宙を結ぶ人類の同盟・エクーメンの使節として、ひとり滞在している。ゲゼンに存在する国々の代表者に、同盟への門戸を開かせるための説得役として、彼らを刺激しないようにと、何の武装ももたず、たったひとりで。
その地に住む人々の体は、外見は主人公たちの種族とそれほど極端な違いはなかったが、ひとつ、大きな差異があった。彼らにはきまった性別がないのだ。およそひと月に一度、彼らはケメル期と呼ばれる時期を迎え、パートナーをそのつど獲得し、その期間だけ性別を得る。
ゲセン人は閉鎖的で、なかなか主人公の説得を容れようとしない。どうにかして彼らを説得しようと苦闘する中で、やがて主人公は彼らの政治的陰謀に利用され……
アーシュラ・K・ル・グウィン。(※この本ではグィンと表記してあります)ゲド戦記の作者さんです。
もともとはSF界で有名な方で、そのことは前から聞き知ってはいたのですけども、ようやく買って読んでみたのでした。もっと早く読めばよかった! むしろゲド戦記よりもこっちのほうが、個人的にはツボだったなあ。ゲド戦記もよかったですけども。
序盤だけちょっととっつきにくい箇所がありましたが、読み進めていくうちにぐいぐい引き込まれました。両性具有の人類が、それゆえの独自の文化を持ち、習慣を持ち、神話を持っている。現実離れした異空間なんだけど、そこに感じられるたしかなリアリティー、異世界の手触り! こーいうの大好きだー!
本の後半は、主人公がゲセン人の青年・エストラーベンと二人、生き残る道を探るために、氷に閉ざされた地を決死の思いで行く道行。飢えと寒さにさいなまれる過酷な道程と、その中で生まれる異種族間の友情。序盤はどちらかというと淡々と進むんですが、一転してドラマチックな展開に。
人間ドラマもよかったんですけども、氷雪に閉ざされたその星には大型動物がいなくて、高カロリーな食料がないので、頻繁に食事を取るのだとか、雪の種類や状態を表す語が六十通り以上もあるだとか、そういう設定に猛烈にときめきます……
とにかく枝葉が好きなんです……読み手としてはそれもいいけど、書き手としてはどうなんだろう……
またこの方のSF作品はおいおい、追いかけていこうと思い……そんな作者さんばっかりだな! 歳をとるにしたがって、どんどん気になる作家さんが増えていって、読みたい本のリストがねずみ算的な伸び方をしているような気がするのですが、気のせいでしょうか。どうしよう……くっそう。人生が五百年くらいあったらもっと惜しみなくかたっぱしから何でもかんでも読んでまわるのに!(その間に新しい本が続々と増え続けると思います)
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読了。
ある家族の肖像を、家族の一人ひとりの視点から描いた、連作短編集。戦時に友を死なせ、もっとさかのぼればごく幼い頃に生まれてきたことを否定されて、己の生きる意味を見出せないまま、亡霊のように生きてきた父親。その夫との間に愛を築きあげることができず、かつて生まれたばかりで死なせてしまった息子のことを嘆き続けて、病み衰えている母親。晩生な長女と進歩的な妹、二人の娘たちのそれぞれの恋愛……
それぞれの独立した短編を続けて読むと、大きなひとつの長編になっている形式です。
重厚。ひとつひとつの短編が非常に重く、しかし心の機微が丁寧に描かれていて、引き込まれて一気に読まずにはいられない力がありました。普段は、「文学!」っていうイメージの作品って、なかなか手を出しかねてしまう軟派な読者なのですが、そういうことをしているからこんな名作を読み逃してきてるんだなと、真面目に反省……
あと昭和の乙女の晩生さというか恥じらいって、なんか妙に萌えますね!(真面目な感想ぶちこわし!)
もともと私は前から池澤夏樹さんのファンなのですが、福永武彦さんは、その池澤さんとご縁の深い作家さんで、池澤さんの解説やエッセイから名前を知って、前からずっと気になってはいたのでした。
読んでよかった。もっと早くに読んでおけば良かった……とも思いはしたけれど、考えてみれば、学生時代にこの作品を読んでいたとして、よさが分かったかどうか。そういう意味では、いま読んで良かったのかな。むしろ、今よりも、もっと歳をとってから読んだほうが、分かるよさがあるような気もします……
もうずいぶん前にお亡くなりになった方なので、文庫版の在庫を探すのが難しいみたいなんですが(そして全集はかさばるうえに高い……)、ぼちぼち他の作品も探してみたいと思います。
ある家族の肖像を、家族の一人ひとりの視点から描いた、連作短編集。戦時に友を死なせ、もっとさかのぼればごく幼い頃に生まれてきたことを否定されて、己の生きる意味を見出せないまま、亡霊のように生きてきた父親。その夫との間に愛を築きあげることができず、かつて生まれたばかりで死なせてしまった息子のことを嘆き続けて、病み衰えている母親。晩生な長女と進歩的な妹、二人の娘たちのそれぞれの恋愛……
それぞれの独立した短編を続けて読むと、大きなひとつの長編になっている形式です。
重厚。ひとつひとつの短編が非常に重く、しかし心の機微が丁寧に描かれていて、引き込まれて一気に読まずにはいられない力がありました。普段は、「文学!」っていうイメージの作品って、なかなか手を出しかねてしまう軟派な読者なのですが、そういうことをしているからこんな名作を読み逃してきてるんだなと、真面目に反省……
あと昭和の乙女の晩生さというか恥じらいって、なんか妙に萌えますね!(真面目な感想ぶちこわし!)
もともと私は前から池澤夏樹さんのファンなのですが、福永武彦さんは、その池澤さんとご縁の深い作家さんで、池澤さんの解説やエッセイから名前を知って、前からずっと気になってはいたのでした。
読んでよかった。もっと早くに読んでおけば良かった……とも思いはしたけれど、考えてみれば、学生時代にこの作品を読んでいたとして、よさが分かったかどうか。そういう意味では、いま読んで良かったのかな。むしろ、今よりも、もっと歳をとってから読んだほうが、分かるよさがあるような気もします……
もうずいぶん前にお亡くなりになった方なので、文庫版の在庫を探すのが難しいみたいなんですが(そして全集はかさばるうえに高い……)、ぼちぼち他の作品も探してみたいと思います。
読了。
『夏休み』に登場した吉田くんが、舞子さんに出会ったころのストーリー、表題作『あなたがここにいて欲しい』をはじめとした、中・短編三作。
『あなたがここにいて欲しい』も、心がほっこりするような、さわやかな青春小説なんですけれども、『ハミング・ライフ』が一番好きだったかもです。公園の木のウロをつかって一日一往復だけのみじかいメッセージをやりとりする男女。なんだろ、べつに奇抜な設定っていうわけではなくて、ベタベタなあざとい恋愛ものになってもおかしくないような題材なのに、中村さんが書かれると、ものすごいほっこりするな。
っていうか、この本すごい好きだー!
主軸としては恋愛と友情がテーマなんだけども、それそのものよりも、作中ににじみ出てくる生き方というか、人が生きる姿勢というか、そういうものがとても心地いいんです。ていうか吉田くん可愛いな!
『夏休み』に登場した吉田くんが、舞子さんに出会ったころのストーリー、表題作『あなたがここにいて欲しい』をはじめとした、中・短編三作。
『あなたがここにいて欲しい』も、心がほっこりするような、さわやかな青春小説なんですけれども、『ハミング・ライフ』が一番好きだったかもです。公園の木のウロをつかって一日一往復だけのみじかいメッセージをやりとりする男女。なんだろ、べつに奇抜な設定っていうわけではなくて、ベタベタなあざとい恋愛ものになってもおかしくないような題材なのに、中村さんが書かれると、ものすごいほっこりするな。
っていうか、この本すごい好きだー!
主軸としては恋愛と友情がテーマなんだけども、それそのものよりも、作中ににじみ出てくる生き方というか、人が生きる姿勢というか、そういうものがとても心地いいんです。ていうか吉田くん可愛いな!
読了。
短編恋愛小説集。
容姿に極端なコンプレックスを持っている女性。どんどん才能を開花させていく恋人においていかれるような心細さをもてあます男性。本業だけでは食べていけずに週末だけ体を売る女性。まだ世に出ていない才能のある若い男にしか興味が持てず、それも後押ししてその才能を開花させたあとは恋が冷めてしまうという厄介なくせをもったキャリアウーマン。切なくて、爽やかで、心温まる、それぞれの恋愛のかたち。
それぞれ完全に独立した短編。一作ずつでけっこう印象が違いますが、表題作の『スローグッドバイ』が一番好きかなあ。七時間もかけて誰かにさよならをいったのは初めてだよ。
感動の大作というよりも、現実にもありそうな恋愛の、きれいな一瞬を鮮やかに切り取った感じ。いかにもフィクション的な美化じゃなくて、ごく普通の人たちの恋愛なんですけども、きれいな小説……という印象が強いかな。
恋愛小説らしい恋愛小説って、そういえばあまり普段は読まないジャンルなんですけども、この本はちょっと印象深いです。
短編恋愛小説集。
容姿に極端なコンプレックスを持っている女性。どんどん才能を開花させていく恋人においていかれるような心細さをもてあます男性。本業だけでは食べていけずに週末だけ体を売る女性。まだ世に出ていない才能のある若い男にしか興味が持てず、それも後押ししてその才能を開花させたあとは恋が冷めてしまうという厄介なくせをもったキャリアウーマン。切なくて、爽やかで、心温まる、それぞれの恋愛のかたち。
それぞれ完全に独立した短編。一作ずつでけっこう印象が違いますが、表題作の『スローグッドバイ』が一番好きかなあ。七時間もかけて誰かにさよならをいったのは初めてだよ。
感動の大作というよりも、現実にもありそうな恋愛の、きれいな一瞬を鮮やかに切り取った感じ。いかにもフィクション的な美化じゃなくて、ごく普通の人たちの恋愛なんですけども、きれいな小説……という印象が強いかな。
恋愛小説らしい恋愛小説って、そういえばあまり普段は読まないジャンルなんですけども、この本はちょっと印象深いです。
読了。
土地、古家あり。
建物を潰してそこに家を新しく建て直すのがふつうだろうと誰もが思うような、古い写真館つきの土地を買い、しかも風情があっていいからとろくに改装もせず、店舗つきの住宅にそのまま住もうという。そんなことを思い立つ花菱家の夫妻は、ちょっと変わり者だ。
そんな父母と、長男で高校生になったばかりの英一、次男で八歳の光。いまは四人で、写真館だった店舗付き住宅に住んでいる彼らだけれど、もともとは五人家族で、英一と光のあいだに長女の風子がいた。たった四歳で、インフルエンザ脳症で命を落とした女の子。
ひょんなきっかけから、心霊探偵まがいのようなことを引き受けるようになった長男の英一を主人公に、四話構成のストーリーが進んでいきます。ままならない恋、友人の悩みや、家族のこと。そんなあれこれを抱えながら高校生活を送る英一の青春をコミカルに描く、日常の謎系ミステリ……が入り口だったのですけれども、一話一話で語られたエピソードが伏線となり、やがて絡まりあって大きなストーリーへ。
最後はものすごい泣かされました……
700ページと厚いのですが、読みやすく楽しいうえに、読みごたえたっぷりで(矛盾しているようですけれども)、読んで損はない一冊です。子どもたちも大人たちも、キャラクターがひとりひとり、とっても魅力的なんですよね。
宮部さんの小説は、ストーリーテリングや読みやすさなんていう部分もすごいんだけど、とにかくキャラクターがいいなあと思います。
もともとファンではありますが、個人的な宮部さんオススメ作品ベスト3に入りました。
あとの二作は現代ミステリの『名もなき毒』、そのつぎが時代ミステリの『ぼんくら』。どれも切なく、ほろ苦く、けれど心温まる傑作です。
土地、古家あり。
建物を潰してそこに家を新しく建て直すのがふつうだろうと誰もが思うような、古い写真館つきの土地を買い、しかも風情があっていいからとろくに改装もせず、店舗つきの住宅にそのまま住もうという。そんなことを思い立つ花菱家の夫妻は、ちょっと変わり者だ。
そんな父母と、長男で高校生になったばかりの英一、次男で八歳の光。いまは四人で、写真館だった店舗付き住宅に住んでいる彼らだけれど、もともとは五人家族で、英一と光のあいだに長女の風子がいた。たった四歳で、インフルエンザ脳症で命を落とした女の子。
ひょんなきっかけから、心霊探偵まがいのようなことを引き受けるようになった長男の英一を主人公に、四話構成のストーリーが進んでいきます。ままならない恋、友人の悩みや、家族のこと。そんなあれこれを抱えながら高校生活を送る英一の青春をコミカルに描く、日常の謎系ミステリ……が入り口だったのですけれども、一話一話で語られたエピソードが伏線となり、やがて絡まりあって大きなストーリーへ。
最後はものすごい泣かされました……
700ページと厚いのですが、読みやすく楽しいうえに、読みごたえたっぷりで(矛盾しているようですけれども)、読んで損はない一冊です。子どもたちも大人たちも、キャラクターがひとりひとり、とっても魅力的なんですよね。
宮部さんの小説は、ストーリーテリングや読みやすさなんていう部分もすごいんだけど、とにかくキャラクターがいいなあと思います。
もともとファンではありますが、個人的な宮部さんオススメ作品ベスト3に入りました。
あとの二作は現代ミステリの『名もなき毒』、そのつぎが時代ミステリの『ぼんくら』。どれも切なく、ほろ苦く、けれど心温まる傑作です。
プロフィール
HN:
朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
朝陽遥(アサヒ ハルカ)またはHAL.Aの名義であちこち出没します。お気軽にかまってやっていただけるとうれしいです。詳しくはこちらから
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