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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
 アメリカ合衆国のとある町の図書館、凍えるような冬の日に、返却ポストの中に捨てられていた一匹の子猫。デューイと名づけられたこの猫は、賢く人懐こい、元気な猫に育った。
 デューイはたちまち人気者になり、多くの人がデューイに会いにきた。町の人たちだけではなく、ときには遠い州からも。

 図書館長さんのエッセイ。実話だそうです。表紙のデューイが可愛くて衝動買い……
 ねこは世界を救う。思う存分猫馬鹿全開の一冊でした。
 猫馬鹿じゃない方が読んだら、「大げさな」「これだから猫馬鹿は……」とか思いそうだなーというようなところもあるかもです。
 でも猫と同居している人間の実感としては、本当に猫は、救いです。つらいときに、うちの猫たちにどれだけ救われたかと思います。そんなの、人間が勝手にいってるだけで、当の猫たちは好きにすごしてるだけなんですけども。

 猫好き云々を置いておいて、単純にエッセイとして優れているかどうかというと、ちょっとうーん? と思うので(※私はもともとエッセイには点が辛めなので、参考にはならないかもしれませんが)、猫がお好きでない方にまで、わざわざ勧める感じでもないんですけど、猫好きの方には共感を呼ぶ一冊だと思います。

 自分が前に飼っていた、いまはもう死んでしまった猫の行動と、たびたび重なる部分があって、わかるよ……と思いながらつられ泣き。

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 読了。

 六つのときに家族と死に別れ、拾われ子となって地方の村で育った少女・狭也。ある日、村へとやってきた迎えの者たちは、狭也を闇(くら)の氏族の巫女姫なのだと告げた。
 <豊葦原>の地には、輝(かぐ)の一族が支配の手を広げていた。彼らを統べるのは、不老不死という、神の子であるふたりの御子たち。輝の一族は、<豊葦原>を平らげて、そこにやがて大御神が降り立つための舞台を築きあげようとしていた。
 彼らに対抗する勢力であるはずの、闇の氏族に生まれつきながら、狭也は輝の一族の皇子・稚羽矢に惹かれるようになって……

 日本神話をもとにした壮大なファンタジー。設定もすごく魅力的で、内容にもたいへん読み応えがあって、面白かったのだけれども、それでも、どうしてもあとひとつ、個人的には物足りなかった……。
 つまらなかったんじゃないんです。面白かっただけに、その「足りない」と感じた部分が、ものすごくもったいない気持ちがします。(なんてワガママな読者だ!)

 せっかく面白い筋書きなのに、説明で済まされてしまう箇所が多かったように感じました。そして、主人公以外の登場人物の個性やお互いの関係性の描写が、あと一歩ほしい。けして没個性ということはないのだけれど、彼らのつながりや背景や、出来事の間の連続性が、あまりつよく感じられなかった。
 習俗や衣装や文化というような、その世界の日常感も、描かれていないわけではないのだけれど、もっとこまやかに、丁寧に描いてほしい。そうすれば、いまよりもさらに、ものすごく素晴らしい物語になるはずなのに!

 ……こんな好き放題なこといってたら、ファンの方に怒られそうだなあ。
 荻原さんについては、昔、『西の善き魔女』を読んだことがあって、そのときもたしか面白かったのに、すっかりハマるにはあと一歩届かないような、もどかしい感じがあったのです。
 むしろ、それほどハマる要素のない作品なら、逆に「なかなか面白かったなあ」で満足するんだと思うんだけど、まさに自分が好きなタイプのファンタジーなだけに、こちらも期待度というか、求めるものがやたら大きくなってしまうんですね……。

 続きの白鳥異伝も買ってあるので、近々読もうと思います。

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 本題の前に事務連絡。あしたは飲んできますので、更新がないかもしれません。

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 上下巻読了。

 広告代理店に勤める主人公は、妙ないきさつから、大きな広告コンペに携わることになる。予算十八億という大口の仕事。不利な条件をいくつも抱えたまま、他社との競合に勝たなくてはならない。くせが強いけれどとびきり優秀な上司や部下とともに、企画案に力をつくす主人公。その一方で、遠い昔に大阪の町で幼馴染たちとともにすごした日々の思い出が、コンペに思わぬ形でかかわりを見せ始めて……

 ハードボイルド・ファンタジーを自称する藤原伊織さんの魅力が、ぎゅっと濃密に詰まった長編。
 ほかの作品とも共通する、ハードボイルドの濃厚な香りが漂いつつも、作者さん自身の職歴がものをいうのか、大手広告代理店の熾烈な世界が、活き活きと描かれていて、働く男の背中が好きな方や、サラリーマンの方には、特につよく進めたい一冊に。

 小説の楽しさや味わいって、それぞれに色んな方向性がありますが、たとえば、普段とは違う上等のお酒を味わいながら呑むように、美味しいコーヒーを楽しむように、一冊の本にうっとりと酔う、藤原さんの小説には、そういう上質の娯楽のような、なんともいえない陶酔感があります。端々で重厚なリアリティがあり、それでいてお硬く気取っているのではなく、手に汗を握る展開が待っていて、隅々までエンターテイメントしている。

 藤原さんの小説のヒロインには、ときどき、女性から見るとあまり共感できないようなタイプ(口の悪い言い方をすると男に都合のいい女性像)が描かれるときもあるのですが、今回のヒロイン、ばりばりのキャリアウーマンで、すごくかっこよかったです。

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 読了。

 好きだと思う女性に出会ったら、後先を考えずにくどいてしまうという、どうしようもない悪癖をもった主人公・星野は、気が付いたときには五股をかけていた。
 誰が本命で誰が遊びということもなく、それぞれの女性と真剣に交際していたという星野だが、その無計画な性格が災いして、金銭のトラブルから、とある危険な組織に身柄を押さえられてしまう。
「あのバス」という得たいの知れない乗り物に乗せられて、どこだかわからない恐ろしい場所に連れ去られそうになった星野だが、組織に「せめて彼女たちに別れを告げさせてくれ」と嘆願したところ、「面白そうだから」という理由で、どういうわけか許可が下りる。
 星野は監視つきで、五人の女性それぞれに別れを告げにいくが……


 おもしろかった!!!!
 監視役の繭美のキャラクターが強烈すぎます。身長180センチ、体重180キロ、男言葉で喋り、怒り狂うと大暴れし、弱っている人をいたぶって楽しむのが趣味で、「人を傷つける以上に楽しいことがあったら教えてくれよ」と言いきる女。濃い。濃すぎる。いいぞもっとやれ!(ぇ

 なかなかみないダメっぷりの主人公と、いっそ爽快なくらい性格の悪いヒロイン(?)のコンビですが、読み進めるにつれて彼らのキャラクターにだんだん愛着が湧いてきます。そして、ものすごくハチャメチャなコメディなんですけども、不覚にもラストで感動。


 それにしても、プロ・アマ問わず、コメディ路線を軸に据えつつ、トンデモ設定を思いがけず深いストーリーに絡めて、終盤にはしっかりと感動を入れてくる、そういう書き手さんってときどきいらっしゃいますが、そのセンスがものすごく羨ましいです。私もそーいうのやりたい! と思って書いたのがアレだったしな……orz
 道のりは遠く険しいです……

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 読了。小市民シリーズ第三段。

 夏季限定トロピカルパフェ事件以来、コンビを解消して、それぞれに行動している小鳩君と小山内さん。そんなある日、思いがけず彼女ができた小鳩君は、柄になく浮かれながらも、本性をかくして小市民になりきろうとしている。
 一方、小山内さんにも、ひとつ年下の彼氏ができた。新聞部で活躍し名を上げたいと、何かと先走りしがちな瓜野君。スクープを追いたいと考えていた彼は、学校の近隣地域を標的とした、連続放火事件が起きていることを知り、夢中になって事件を追い始める。けれど、それを見守る小山内さんの行動が、何かおかしい……。
 別行動を決めたものの、放火事件のかげにちらつく小山内さんの行動に違和感を覚えた小鳩君は、やがて事件を追いかけ始めて……

 小鳩君と小山内さん。それぞれに屈折した二人の行動が、いい意味で予想を裏切らない。起きている事件としては、仕掛けがあって先が読めないながらも、キャラクターの心情に関しては、予想に沿って期待を外さず展開していく。そのバランスがすごいなあと思います。
 まあなんていうか、要するに面白かった!

 屈折したキャラクター、本人は大真面目なのに周囲から浮いてしまうようなキャラクターに、なんていうかすごく共感してしまいます。共感といっても、私の頭の出来は残念な感じなので、小鳩君のように鋭い推理ができるわけでも、小山内さんのような技術や度胸があるわけでもないのだけど、なんだろう、彼らのイヤなヤツっぷりには、なんだかすごくわかるわー若いときってそうよねと、やたらとニヤニヤしてしまう。(←オバサン化が進んでいる)

 いま読んでも面白いんですけど、彼らと同じ、自分自身が自意識を砕かれる前だった、十代のうちに読んでいたら、もっとのめりこむように共感したんじゃないかなあ。それとも同属嫌悪で、うまく楽しめなかったかなあ。どっちだろう。

 なんていうか、すごい独り言のような感想になってしまいました。失礼しました……!
 続きというか、冬期って、構想には当然入っていると思うんですけど、いつ出るのかなあ。出たらぜひ読みたいな。ヤヤコシク屈折した彼らが、どう変わっていくのか、結末を見てみたいです。

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朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
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