小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
読了。
しゃばけシリーズ第十弾。今回は(も?)連作短編集。
ある日若だんなは、左手(ゆんで)に進むはずだった道を、ほんのささいなきっかけで、右手(めて)に向かってしまった。そしてそれが、長崎屋の面々にとって、大きな分かれ道となった。長崎屋が火事に巻き込まれ、いつも若だんなといっしょにいる妖怪たちの一人・屏風のぞきの本体が、焦げて煤けてしまったのだ。
あのとき道を左手に進んでさえいれば。後悔にさいなまれ、なんとか屏風のぞきを助けようとする若だんなだが……
<以下ネタバレを含む感想のため、続きに格納>
しゃばけシリーズ第十弾。今回は(も?)連作短編集。
ある日若だんなは、左手(ゆんで)に進むはずだった道を、ほんのささいなきっかけで、右手(めて)に向かってしまった。そしてそれが、長崎屋の面々にとって、大きな分かれ道となった。長崎屋が火事に巻き込まれ、いつも若だんなといっしょにいる妖怪たちの一人・屏風のぞきの本体が、焦げて煤けてしまったのだ。
あのとき道を左手に進んでさえいれば。後悔にさいなまれ、なんとか屏風のぞきを助けようとする若だんなだが……
<以下ネタバレを含む感想のため、続きに格納>
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読了。
ぼくの六年生の夏は、サイアクだった。悪ふざけがすぎてプール掃除の罰当番はくらう、しかも一緒に罰を受ける相手、栗田は、なんだか気に喰わないやつだ。最初は手伝うといっていた友達は、すぐに飽きてやってこなくなる。できのよかったはずの兄貴は急に引きこもりになってしまって、単身赴任中のおとうさんはあてにならないし、兄貴のことに心をくだいているおかあさんは、このごろなんだか不安定だ。
そんなふうにスタートした、六年生の夏休み。けれど、きらいだったはずの栗田と、毎日顔を突き合わせているうちに、少しばかり気づくことがあって……
児童文学、だけど大人に読んでほしい本。子どもの頃に知っていたはずの、シンプルだけど大切なことを思い出す。そして少年の成長が、じんわりと胸に沁みます。
それにしたって、どこをさぐってもモンダイのない家なんて、この世のなかに、そんなにたくさんあるんだろうか、ほんとうに?
本文より。
それにしてもはずかしながら、ホンモノの児童だったときから、児童書って読んできていなくて、小学校時代のどこかで『クレヨン王国』とか『ドッキリふたご名探偵』から、いきなり『フォーチュンクエスト』とか『スレイヤーズ!』とかのラノベにシフトしたんですよね。(文学少女になりそこなってオタクへの道を突き進んだともいう)
それがいまになって、児童文学がここまでツボに入るとは思ってなかったです。や、『ザ・ギバー』や『ゲド戦記』だって児童文学のジャンルには違いないんでしょうけど……
この本は、友達に借りて読んだのですが、あまりにツボだったので、この方の『きのう、火星に行った。』を衝動買いしました。そっちもすごくストライクでした。また後日レビューします。
ぼくの六年生の夏は、サイアクだった。悪ふざけがすぎてプール掃除の罰当番はくらう、しかも一緒に罰を受ける相手、栗田は、なんだか気に喰わないやつだ。最初は手伝うといっていた友達は、すぐに飽きてやってこなくなる。できのよかったはずの兄貴は急に引きこもりになってしまって、単身赴任中のおとうさんはあてにならないし、兄貴のことに心をくだいているおかあさんは、このごろなんだか不安定だ。
そんなふうにスタートした、六年生の夏休み。けれど、きらいだったはずの栗田と、毎日顔を突き合わせているうちに、少しばかり気づくことがあって……
児童文学、だけど大人に読んでほしい本。子どもの頃に知っていたはずの、シンプルだけど大切なことを思い出す。そして少年の成長が、じんわりと胸に沁みます。
それにしたって、どこをさぐってもモンダイのない家なんて、この世のなかに、そんなにたくさんあるんだろうか、ほんとうに?
本文より。
それにしてもはずかしながら、ホンモノの児童だったときから、児童書って読んできていなくて、小学校時代のどこかで『クレヨン王国』とか『ドッキリふたご名探偵』から、いきなり『フォーチュンクエスト』とか『スレイヤーズ!』とかのラノベにシフトしたんですよね。(文学少女になりそこなってオタクへの道を突き進んだともいう)
それがいまになって、児童文学がここまでツボに入るとは思ってなかったです。や、『ザ・ギバー』や『ゲド戦記』だって児童文学のジャンルには違いないんでしょうけど……
この本は、友達に借りて読んだのですが、あまりにツボだったので、この方の『きのう、火星に行った。』を衝動買いしました。そっちもすごくストライクでした。また後日レビューします。
読了。
海外ファンタジー。
人間に甘美な罠を仕掛けて破滅させ、ときには愛でる、残虐な妖魔の貴公子・アズュラーン。
宝石に彩られた地底の美しい都を統べ、気まぐれに夜の地上を訪れては、人々を誘惑し、堕落させ、波乱を巻き起こして楽しむ公子。大勢の妖魔を従え、美しい地底の都を統べる彼に、この世界でたった一つ、恐れるものがあるとしたら……
ファンタジーのよさというよりも、おとぎ話のよさ、に近いかなあ。王道の、物語の典型を踏んだパターンと、悪の美学的な妖しさが、すとんとはまる感じで、読んでいて楽しかったです。
私はどちらかというとファンタジーの中でも、神々や精霊や魔物が云々というよりも、現実感のある世界を描いたものがスキなほうなのですが(といっても、人外のものが出てきたらイヤだという意味ではなくて、人間の生きている世界のほうをしっかり書いてあれば、あとはなんでもいいんです)、たまにはこういうのもいいなあーと思いました。
そしてラストが絶妙に美しくていい。様式美っていいな!
なんか赤面するくらい耽美なのも、それはそれでいいなって思いました。ていうか自分には照れが勝って書けないジャンルだな! って思ったら、なんとなく無性にくやしいです。なんだろうこの敗北感。ほんとにぜんぜん書けないかな、耽美系。何かをどうにかすれば目覚めないかな。蘇れ私の中二病!
少し前にハヤカワのファンタジーについて触れたコメントをいただいて、そういえばハヤカワってSF以外に手を出したことがない! と思い立って、ふらふら衝動買いしたのでした。また追々、何か探してみようと思います。
海外ファンタジー。
人間に甘美な罠を仕掛けて破滅させ、ときには愛でる、残虐な妖魔の貴公子・アズュラーン。
宝石に彩られた地底の美しい都を統べ、気まぐれに夜の地上を訪れては、人々を誘惑し、堕落させ、波乱を巻き起こして楽しむ公子。大勢の妖魔を従え、美しい地底の都を統べる彼に、この世界でたった一つ、恐れるものがあるとしたら……
ファンタジーのよさというよりも、おとぎ話のよさ、に近いかなあ。王道の、物語の典型を踏んだパターンと、悪の美学的な妖しさが、すとんとはまる感じで、読んでいて楽しかったです。
私はどちらかというとファンタジーの中でも、神々や精霊や魔物が云々というよりも、現実感のある世界を描いたものがスキなほうなのですが(といっても、人外のものが出てきたらイヤだという意味ではなくて、人間の生きている世界のほうをしっかり書いてあれば、あとはなんでもいいんです)、たまにはこういうのもいいなあーと思いました。
そしてラストが絶妙に美しくていい。様式美っていいな!
なんか赤面するくらい耽美なのも、それはそれでいいなって思いました。ていうか自分には照れが勝って書けないジャンルだな! って思ったら、なんとなく無性にくやしいです。なんだろうこの敗北感。ほんとにぜんぜん書けないかな、耽美系。何かをどうにかすれば目覚めないかな。蘇れ私の中二病!
少し前にハヤカワのファンタジーについて触れたコメントをいただいて、そういえばハヤカワってSF以外に手を出したことがない! と思い立って、ふらふら衝動買いしたのでした。また追々、何か探してみようと思います。
上下巻読了。
ある夜、パチンコからの帰り道、達夫は頭の中で、奇妙な羽音を聴いた。はじめは空耳と思った主人公だったが、とつぜん自分の意に反して指が動き、くすねてきたパチンコ玉を、弾丸のような勢いで弾き飛ばした。
自分の頭のなかに寄生しているという、シラヒゲと名乗った蚊トンボとの、奇妙な共同生活は、そんなふうに始まった。
シラヒゲがもたらしたその能力をつかって、暴力沙汰にまきこまれた知人を助けたことをきっかけに、達夫はやがて、裏社会のとある事件に巻き込まれ、暴力団と本格的に対決する事態になっていくが……
ストイックで男気のある主人公、ハードボイルドな展開、暴力、やくざ等々、藤原さんのほかの作品群と共通するポイントも多いのですが、大きく違う点はふたつ。主人公が20歳の青年と、ほかの作品に比べてぐっと若いこと。それから、蚊トンボが脳内に寄生して話しかけてくるようになる……というファンタジーな設定。
藤原さんが描かれる主人公は、ストイックで無鉄砲で、保身とは縁のないようなイメージがありますが、主人公が若いと、無鉄砲さのニュアンスが、またちょっと違いますね。ほかの作品の主人公たちの渋い魅力もいいですが、こういうのもいいなあ。
上下巻だったのですが、派手で勢いのある展開に飲み込まれ、一気に読みきりました。シラヒゲをはじめ、敵味方それぞれのキャラクターが魅力たっぷり。劇画的といっていいかどうか、リアリティよりも娯楽性を求めるならば文句なしに最高。解説にて藤原伊織さんご自身の評が紹介されていたとおり、まさにハードボイルド・ファンタジー。
私はすでにファン補正がはいっているかもしれませんし、奇抜な設定やいかにもフィクション的な展開が苦手という方には、強くはオススメできませんが、さておき、すごく面白かったです。
ところで、どうやら藤原伊織さんの既刊で私が未読だったのは、こちらが最後のようです。私は藤原さんがお亡くなりになったあとではまったファンなので、最初からこのときが来るのは分かっていたはずなのですが、なんていうか、すごく寂しいです。ファンに惜しまれながら去るというのは、作家さんの人生の幕としては一種、最高のかたちかもしれませんが、それにしても惜しまれます。
どの本も魅力的でしたが、わたしの藤原伊織ベスト3は、『シリウスの道』『てのひらの闇』『名残り火』でした。揃えた本は大切に保管して、またいずれ読み返したいです。
ある夜、パチンコからの帰り道、達夫は頭の中で、奇妙な羽音を聴いた。はじめは空耳と思った主人公だったが、とつぜん自分の意に反して指が動き、くすねてきたパチンコ玉を、弾丸のような勢いで弾き飛ばした。
自分の頭のなかに寄生しているという、シラヒゲと名乗った蚊トンボとの、奇妙な共同生活は、そんなふうに始まった。
シラヒゲがもたらしたその能力をつかって、暴力沙汰にまきこまれた知人を助けたことをきっかけに、達夫はやがて、裏社会のとある事件に巻き込まれ、暴力団と本格的に対決する事態になっていくが……
ストイックで男気のある主人公、ハードボイルドな展開、暴力、やくざ等々、藤原さんのほかの作品群と共通するポイントも多いのですが、大きく違う点はふたつ。主人公が20歳の青年と、ほかの作品に比べてぐっと若いこと。それから、蚊トンボが脳内に寄生して話しかけてくるようになる……というファンタジーな設定。
藤原さんが描かれる主人公は、ストイックで無鉄砲で、保身とは縁のないようなイメージがありますが、主人公が若いと、無鉄砲さのニュアンスが、またちょっと違いますね。ほかの作品の主人公たちの渋い魅力もいいですが、こういうのもいいなあ。
上下巻だったのですが、派手で勢いのある展開に飲み込まれ、一気に読みきりました。シラヒゲをはじめ、敵味方それぞれのキャラクターが魅力たっぷり。劇画的といっていいかどうか、リアリティよりも娯楽性を求めるならば文句なしに最高。解説にて藤原伊織さんご自身の評が紹介されていたとおり、まさにハードボイルド・ファンタジー。
私はすでにファン補正がはいっているかもしれませんし、奇抜な設定やいかにもフィクション的な展開が苦手という方には、強くはオススメできませんが、さておき、すごく面白かったです。
ところで、どうやら藤原伊織さんの既刊で私が未読だったのは、こちらが最後のようです。私は藤原さんがお亡くなりになったあとではまったファンなので、最初からこのときが来るのは分かっていたはずなのですが、なんていうか、すごく寂しいです。ファンに惜しまれながら去るというのは、作家さんの人生の幕としては一種、最高のかたちかもしれませんが、それにしても惜しまれます。
どの本も魅力的でしたが、わたしの藤原伊織ベスト3は、『シリウスの道』『てのひらの闇』『名残り火』でした。揃えた本は大切に保管して、またいずれ読み返したいです。
読了。
短編集。
フィレンツェの変わり者の絵描きと、彼の隣にいた少女。ペルシアを征服したティムールと、征服された都市の詩人との会話。鬼の使わした美女に惑わされる中納言。火山に魅せられたあまり命を落としたローマの学者プリニウス……等々、歴史上の人物について遺されたエピソードをもとに、想像の翼を広げてつづられた一冊。
興味深く、幻惑されるような面白いエピソードも多いのだけれど、残念ながら、私には『興味深い』の域を出なかったかなあ。のめりこむようには読めませんでした。
理由ははっきりしていて、相性というか、私の読書姿勢がよろしくないんです。
前に『高丘親王航海記』のレビューでも、似たようなことを書いた気がしますが、「これは私(作者)が書いたお話なんですよ」ということを、作品中で前面に出してあるので、なんかつい身構えて、一歩引いてしまうんですよね。面白いことは違いないんだけど、ちょっと遠くから眺めてしまいました。
もっとも、そういうのは私のただのワガママで、メタフィクション全般が駄目だっていうんじゃなくて、むしろ作者さんや作品によっては、そういう書き方が効果を発揮していると感じるケースもあるので、手法そのものを丸ごと批判するのは、望みじゃないんです。
そして、はまれなかったといいつつ、なんとなく、はまりそうな要素があるなあ、とも思うんですよね。語りが好みにあわないだけで、題材的にはかなりツボなんです。歴史には暗い私ですが、史実の部分にしろ、空想の部分にしろ、面白いエピソードがいっぱいあって。
悩むところだけれど、ひとまず判断保留ということで、澁澤氏の作品については、もう二、三冊読んで様子をみたいなあと思います。
短編集。
フィレンツェの変わり者の絵描きと、彼の隣にいた少女。ペルシアを征服したティムールと、征服された都市の詩人との会話。鬼の使わした美女に惑わされる中納言。火山に魅せられたあまり命を落としたローマの学者プリニウス……等々、歴史上の人物について遺されたエピソードをもとに、想像の翼を広げてつづられた一冊。
興味深く、幻惑されるような面白いエピソードも多いのだけれど、残念ながら、私には『興味深い』の域を出なかったかなあ。のめりこむようには読めませんでした。
理由ははっきりしていて、相性というか、私の読書姿勢がよろしくないんです。
前に『高丘親王航海記』のレビューでも、似たようなことを書いた気がしますが、「これは私(作者)が書いたお話なんですよ」ということを、作品中で前面に出してあるので、なんかつい身構えて、一歩引いてしまうんですよね。面白いことは違いないんだけど、ちょっと遠くから眺めてしまいました。
もっとも、そういうのは私のただのワガママで、メタフィクション全般が駄目だっていうんじゃなくて、むしろ作者さんや作品によっては、そういう書き方が効果を発揮していると感じるケースもあるので、手法そのものを丸ごと批判するのは、望みじゃないんです。
そして、はまれなかったといいつつ、なんとなく、はまりそうな要素があるなあ、とも思うんですよね。語りが好みにあわないだけで、題材的にはかなりツボなんです。歴史には暗い私ですが、史実の部分にしろ、空想の部分にしろ、面白いエピソードがいっぱいあって。
悩むところだけれど、ひとまず判断保留ということで、澁澤氏の作品については、もう二、三冊読んで様子をみたいなあと思います。
プロフィール
HN:
朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
朝陽遥(アサヒ ハルカ)またはHAL.Aの名義であちこち出没します。お気軽にかまってやっていただけるとうれしいです。詳しくはこちらから
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