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小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。
サニーサイドエッグ (創元推理文庫)
サニーサイドエッグ (創元推理文庫)

 読了。

『ハードボイルド・エッグ』続編。
 ハードボイルドの原点ともいわれるチャンドラーのキャラクター・私立探偵フィリップ・マーロウに憧れて、探偵になった主人公。しかし実際に入ってくる仕事のほとんどは、ペット捜索……。
 マーロウ口調で話し、どんなに暑くても背広で決めて、敵を作ることを恐れず(あるいは恐れないふりをして)意地をはり、自分の正義を通そうとする。そんな主人公が、マーロウと違う決定的なぶぶんは、酒にも女にも喧嘩にも弱いということ。
 美人で有能な助手がほしいと常々いっていたところ、知人から押し付けられたのは、アメリカがえりの十六歳、ド派手な格好をして、すぐ突飛な行動に出る、非常に口の悪い小娘だった。

 主人公・最上俊平、情けないようで、すっごくカッコイイです。へたれ好きにはたまらない、おもわずにやにやしながら見守ってしまうようなキャラクターですが、決めるところでは決めてくれます。腕っ節は弱いのに、へたれなのに、足がぶるぶる震えているのに、女をかばう為になら、危険を承知でやくざの前に立ちふさがる。その女性が、自分のものにはならないとわかっているのに。

 序盤のコメディシーンのインパクトは、前作を踏襲している形式の分、前作のときよりも薄かったですが、そのぶん中盤から、転がり落ちる石が勢いを増すように、面白くなっていきました。
 荻原さんの描かれるちょっと情けない男の人(やオジサン)って、いつもすごく好きで、人の弱さがいとおしくなるような、そんな愛嬌があります。
 おもしろかった!

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神様のカルテ 2
神様のカルテ 2

 読了。

 常に医師不足に悩まされる地方医療の中、24時間救急対応の病院に勤務する内科医・栗原一止。漱石に傾倒するあまり、文学的な口調で喋るという変人だが、仲間からは愛されている。また、彼が当直になるとなぜか普段の何倍もの患者が駆け込んでくるというジンクスのせいで『引きの栗原』と呼ばれ、看護師から迷惑がられてもいる。
 激務におわれ、ろくな休みもないまま働き続けている医師たち。当直明けにはそのまま日勤に突入し、たまに休めたかと思えば電話ですぐ呼び出され、家庭のことを省みる暇もなく、過労から病に倒れる者も珍しくはない。そのうえ少しでも医療ミスが起きれば矢面に立たされて、帰宅中に患者の容態が変われば非難され、人間扱いされていない。それがこの国の地方医療の現状なのだと、主人公は漏らす。それでも、その過酷な環境の中で、彼らが働き続けることができるのは……

 主人公、メインキャラ、脇役いずれも魅力的なキャラクターばかり。主人公の一止も、友人たちや同僚たちも大好きですが、奥さんの榛名姫がちょう魅力的……!
 心あたたまるやりとりがあり、くすりと笑えるおかしみがあり、何より、強く心を揺さぶる感動のストーリーがあります。全力で「感動した!!」といいきれる本。1巻とあわせて、おすすめの一冊です。
 良心に恥じぬということだけが、我々の確かな報酬である。ケネディは戦争のためにこの演説をふるったが、我々は医業のためにこの言葉を用いよう――
 後半の展開に、涙を禁じえません。

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赤い指 (講談社文庫)
赤い指 (講談社文庫)

 読了。

 加賀刑事シリーズ。物語は犯人側の視点からスタートします。
 妻が姑と折り合わず、痴呆のはいった父の介護に手を貸すこともないまま、その死を見送った。やがて母までもが痴呆症となり、やむなく同居を決断したものの、妻は毎日、激しい不満ばかりをぶつけてくる。息子は何もかもを親のせいにして、少しでも気に入らないことがあればすぐにキレる、手のつけられない青年に育った。
 家庭は荒れ、家に帰っても少しも気が休まらず、たいした用もないのに残業して時間を潰す日々。そんな中、ある日、息子が小学生の女の子を殺してしまう。
 当の息子は現実から逃げるようにゲームにのめりこみ、問いただしてもうるさいの一点張りで、反省の欠片もない。目の前が真っ暗になった。自首させるしかないと思っていた。電話機を手に取ると、妻が鋏を手にしていった。「あの子を警察に渡すくらいなら、このまま死んだほうがまし」
 死体を隠し、証拠を隠滅して、知らぬふりを決め込もうと画策した。けれど警察を完全にあざむくのは難しい。自首させるほかに道はないのか。そのとき頭に、悪魔のような考えが閃いた……

 最初、むかむかしながら読んでいたけれど、最後まで読んだら、涙が滲みました。
 どこにでもいる普通の人間の、心の弱さ。罪悪感に見てみないふりをし、都合の悪いことは忘れて、ひとは簡単に、楽なほうに流れる……。悪魔に魂を売り渡した男を、最後の一線で押し留めたのは。

 東野圭吾さんの作品って、個人的にあうのとあわないのと極端で、多作な方だけに、いつも次はどれを読むべきか悩んでいるというようなことを、ツイッターでぶつぶつつぶやいていたら、かなた様から勧めていただきました。おなじ加賀刑事のシリーズの「卒業」には、いまひとつはまれなかったのですが、こちらはすごくよかったです。
 またいずれほかの作品にも手を出したいです。

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マリアビートル
マリアビートル

 読了。(といいつつ、読了からレビュー更新までの間が開いてきているこの頃です……。どこかでリアルタイムに追いつきたい!)

 裏社会の仕事を請け負う七尾は、暗殺者としての腕はいいのだけれど、とにかく驚くほど、不運に愛されている。
 七尾がその日請けたのも、ただいわれた新幹線に乗り、ある荷物を手に入れて指定駅で降りるというだけの、ごく簡単な仕事のはずだった。それなのにどういう偶然のしわざか、その新幹線の中には、彼の同業者が大勢乗り込んでいて……
 それぞれの思惑にしたがって腕をふるう暗殺者たちのせいで、新幹線の中は大混乱。次から次に降りかかってくる間の悪い災難に翻弄される七尾は、果たして、無事に今回の仕事を終えることができるのか……

 かちりかちりとはまっていく伏線の気持ちよさが、伊坂さんの大きな魅力のひとつですが、本作も例外ではありません。絶妙にコミカルで、かつ緊迫感のある展開に、夢中で一気読みしました。
 暗殺者なのに、弱気でどこか人のいいような性格をしている七尾が、なんともいえない絶妙なキャラクター。電話で指示と投げ遣りな励まし(?)を送ってくる相棒のマリアさんも、なかなかいい性格。ほかの脇役たちも、それぞれにクセがあって魅力的です。

『グラスホッパー』の続編にあたります。前作が好きな人は思わずにやりとしてしまうような、ちらちらと垣間見えるつながりを残しつつも、話そのものは完全に独立しており、メンバーもおおむね一新、単独で読んでも大丈夫な内容になっています。
 わたしは『グラスホッパー』も楽しく読みましたが、本作ではさらにパワーアップしていて、そのうえぐっと親しみやすい印象です。人がたくさん死ぬ話なのに、親しみやすいっていうのもなんですが……(汗)、まあそこはそれ。前作を未読の方にもおすすめです。
 前作はわりと暗く重苦しいトーンでしたが、比べて『マリアビートル』は、重いシーンもありつつも、全体としてはドタバタ劇な感じです。(とはいっても、わたしは『グラスホッパー』のほうは文庫版しか読んでいなくて、単行本と文庫版は、けっこう印象が違っているらしいのですが……)

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 本題の前に、あしたは飲んできますので多分更新ありません!(開口一番それか!)

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玩具修理者 (角川ホラー文庫)
玩具修理者 (角川ホラー文庫)

 読了。

 短編『玩具修理者』と中編『酔歩する男』の二本。
 子どものころ同じ町に住んでいたその人物には、頼めばどんなオモチャでもかならず修理してくれるといううわさがあった。ある日、不注意で弟を死なせてしまった姉は、弟をオモチャに見せかければ、玩具修理者が修理してくれるのではないかと期待をかけて、その人物の家を訪ねていった……。(『玩具修理者』)
 仕事帰りに飲んでいて、見知らぬ男に話しかけられた主人公。はじめはただの人違いかと思ったが、その男は、気味の悪いほど自分のことを知っている。もしや、自分が知り合いの顔を忘れてしまったのだろうかと考えた主人公だったが、男は奇妙なことをいう。「いえ、人違いではないんです。わたしはあなたをよく存じあげております。でも、あなたがわたしのことを知らないのなら、知り合いではないのでしょう」……男の不自然ないいかたがひどく気になって、問いただす主人公は、脳と時間認識にまつわる、信じられないような物語を聞かされることになる。(『酔歩する男』)

 なかなか面白かったです。
 同じ方の『海を見る人』が面白かったってツイッターで呟いたら、薦めていただきました。買おうとして、ホラーであることに気づき(怖いの苦手)、一瞬どうしようか迷ったんですけども、腹を括って読んでみたら、SF>ホラーな感じで、それほど怖がらずに読めました。
 ぜんぜん怖くないわけじゃないんですけども、一本目の「玩具修理者」はグロテスクでシュールな怖さだったので、これにはわたしは耐性があります。(それもどうかと思うけど……)
 二本目の「酔歩する男」は、ホラーというよりも、タイムリープ系のSFで、怖いというか悲劇的なお話でした。パラドックスや平行世界といったSF要素や、シュレーディンガーの猫のりくつなんかがお好きな方には、興味深いかもです。

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朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
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朝陽遥(アサヒ ハルカ)またはHAL.Aの名義であちこち出没します。お気軽にかまってやっていただけるとうれしいです。詳しくはこちらから
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