小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。

かもめのジョナサン (新潮文庫 ハ 9-1)
読了。
古い掟にしたがって暮らし、食料を得ることにばかり必死になる群れの中で、ジョナサン・リヴィングストンはただ一羽、いかにして速く飛ぶかという命題と向き合っていた。食べるものもろくにとらず、さまざまな航法を試すことに夢中になっているジョナサン。やがて彼はカモメの限界を超えた速度を得て、仲間たちに速く飛ぶことのすばらしさを伝えようとするが、無理解な仲間たちは、ジョナサンを群れから追放する。
うーん。前半すごく面白かったのに、なんか途中から精神世界方向にいってしまって、ついていけなくなった感がありました……。
前半では、周囲の無理解に孤立し、排斥された不遇の主人公。そこにはとても共感できるんです。
でも後半では、多分いいことも書いてあるんですけど、主人公がひとり高みに上ってしまって、なんていうか、新興宗教の教組様みたいになってしまっている。それがなんとなく、すわりが悪いんだと思います。絶対的な何かだとか、妄信、というような感触が苦手。
小説そのものの感想とはそれますが、新潮文庫の解説を読んで、びっくりしました。こんなに小説を罵倒している解説者(翻訳者)もめずらしいんじゃないのかな。いや、正確にいえば作品そのものを罵倒してるんじゃなくて、これがもてはやされた時代のアメリカ社会について、批判的に考察してあるんだけども、それにしてもふつう本の解説って、その本が好きな人が、本の魅力を訴えていくものだ……という先入観があったので、びっくりしました。
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末尾に拍手コメントへのお返事があります。
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冬物語 (文春文庫)
短編集。
多くの末期がん患者の死を看取る病棟で。カンボジア難民のために派遣された医療団のチームで。父親の介護という現実を目の当たりにした家庭で。
南木さんの本はほとんどがそうなのだけれど、私小説、あるいはそれに限りなく近いスタンスで書かれています。厳密にどこまでがフィクションで、どこからが体験談なのかはわかりませんが、作者さんご本人の体験から出た言葉が、多分、かなり生に近い形でつづられている。
題材が重いだけに、悲しい、つらいエピソードも多いのだけれど、読み終えて強く印象に残るのは、何よりも人のぬくもり、優しさのほう。
表題作『冬物語』に登場するワカサギ釣りの名人、かよさんとそのご主人にまつわるエピソードがとりわけ印象深かったです。
ある方に薦めていただいて知った『阿弥陀堂だより』を入り口に、『エチオピアからの手紙』『ダイヤモンドダスト』『トラや』ときて四冊目。この方の本は、ゆっくり集めてひととおり読むつもりです。
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冬物語 (文春文庫)
短編集。
多くの末期がん患者の死を看取る病棟で。カンボジア難民のために派遣された医療団のチームで。父親の介護という現実を目の当たりにした家庭で。
南木さんの本はほとんどがそうなのだけれど、私小説、あるいはそれに限りなく近いスタンスで書かれています。厳密にどこまでがフィクションで、どこからが体験談なのかはわかりませんが、作者さんご本人の体験から出た言葉が、多分、かなり生に近い形でつづられている。
題材が重いだけに、悲しい、つらいエピソードも多いのだけれど、読み終えて強く印象に残るのは、何よりも人のぬくもり、優しさのほう。
表題作『冬物語』に登場するワカサギ釣りの名人、かよさんとそのご主人にまつわるエピソードがとりわけ印象深かったです。
ある方に薦めていただいて知った『阿弥陀堂だより』を入り口に、『エチオピアからの手紙』『ダイヤモンドダスト』『トラや』ときて四冊目。この方の本は、ゆっくり集めてひととおり読むつもりです。
本題のまえにお礼。きょう、いくつかの小説に拍手をいただいていました。読んでくださった方、ありがとうございます!!
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蹴りたい背中 (河出文庫)
読了。
長谷川初実、高校一年生。中学の時には、無理にはしゃいで場を盛り上げようとして、どうにか孤立しないようにと、必死だった。高校に入ってまで同じことをする気はないと、突っ張って、周囲に合わせることを拒絶しているうちに、当たりまえのように孤立してしまう。中学校から一緒だった親友さえ、けして彼女を敵視したり無視したりはしないものの、二人だけで過ごすのはいやだと、ほかのグループに入っていってしまう。そしてその中から長谷川を誘う、こっちにおいでよと。だけどその輪の中に入る気にはなれない。
そんな中、長谷川はクラスで同じように浮いている男子・にな川(蜷川かな?)に、ふとしたことで興味を引かれ、彼を観察するようになる。にな川はあるモデルの熱狂的なファンで、気持ち悪いほど大量のグッズ、雑誌を収集しまくっていて、周囲からどんな目で見られようと、どうでもいいって顔をしていて……。
十代って、どうしてこんなにひりひりしてるんだろう。息が詰まるような、この感じ。いま読むと、そこが小説のよさだと思うんだけど、もしこれをあと七年早く、発売当時に読んでいたら、どうだったかなあ。自分との距離が近すぎて、痛すぎて、楽しむどころじゃなかったかも……と思います。
印象深い文章が多いです。ありふれた言い回しをすれば、言葉に対する感性の鋭さ、なのかな。
単純な感動モノ、青春モノとは違います。主人公の心にわきあがってくる不穏な衝動、欲望。防壁と、自己嫌悪と、葛藤と、拒絶と……。ぶっちゃけるなら、主人公は「ヤなやつ」です。にな川も、いいところもあるんだけど、それにしてもかなり、アレなやつ。
もちろん、ヤなやつだから、キモいやつだから無視してもいいとか、そんなわけじゃない。でも主人公たちが孤立するのには、わけもないただのイジメなんかじゃなくて、その性格や行動におおいに理由があって、とくに長谷川は、それを自分でもわかってる。わかっているけれど、媚びてまで「仲間に入れてもらいたく」なんかない。無理やり自分を押さえ込んでまで、周囲にあわせるなんて、反吐がでる……と思ってる。
そういうとんがった感じが、すごく十代って感じがして、なんかいろいろ酸っぱいです。甘酸っぱいんじゃなくて、むしろ酸っぱい。でもそこがいいなって思います。
読む人の年代や性別や好みによって、評価がわかれるんじゃないかとは思うけれど、印象深い一冊でした。
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蹴りたい背中 (河出文庫)
読了。
長谷川初実、高校一年生。中学の時には、無理にはしゃいで場を盛り上げようとして、どうにか孤立しないようにと、必死だった。高校に入ってまで同じことをする気はないと、突っ張って、周囲に合わせることを拒絶しているうちに、当たりまえのように孤立してしまう。中学校から一緒だった親友さえ、けして彼女を敵視したり無視したりはしないものの、二人だけで過ごすのはいやだと、ほかのグループに入っていってしまう。そしてその中から長谷川を誘う、こっちにおいでよと。だけどその輪の中に入る気にはなれない。
そんな中、長谷川はクラスで同じように浮いている男子・にな川(蜷川かな?)に、ふとしたことで興味を引かれ、彼を観察するようになる。にな川はあるモデルの熱狂的なファンで、気持ち悪いほど大量のグッズ、雑誌を収集しまくっていて、周囲からどんな目で見られようと、どうでもいいって顔をしていて……。
十代って、どうしてこんなにひりひりしてるんだろう。息が詰まるような、この感じ。いま読むと、そこが小説のよさだと思うんだけど、もしこれをあと七年早く、発売当時に読んでいたら、どうだったかなあ。自分との距離が近すぎて、痛すぎて、楽しむどころじゃなかったかも……と思います。
印象深い文章が多いです。ありふれた言い回しをすれば、言葉に対する感性の鋭さ、なのかな。
単純な感動モノ、青春モノとは違います。主人公の心にわきあがってくる不穏な衝動、欲望。防壁と、自己嫌悪と、葛藤と、拒絶と……。ぶっちゃけるなら、主人公は「ヤなやつ」です。にな川も、いいところもあるんだけど、それにしてもかなり、アレなやつ。
もちろん、ヤなやつだから、キモいやつだから無視してもいいとか、そんなわけじゃない。でも主人公たちが孤立するのには、わけもないただのイジメなんかじゃなくて、その性格や行動におおいに理由があって、とくに長谷川は、それを自分でもわかってる。わかっているけれど、媚びてまで「仲間に入れてもらいたく」なんかない。無理やり自分を押さえ込んでまで、周囲にあわせるなんて、反吐がでる……と思ってる。
そういうとんがった感じが、すごく十代って感じがして、なんかいろいろ酸っぱいです。甘酸っぱいんじゃなくて、むしろ酸っぱい。でもそこがいいなって思います。
読む人の年代や性別や好みによって、評価がわかれるんじゃないかとは思うけれど、印象深い一冊でした。
本題の前に。末尾のREAD MOREのところに拍手コメへのお返事がありますー。
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ミステリーの書き方
読了。
参考図書としては、わたしはミステリ書きをめざすわけではないですし(読むのは好き)、そもそも、いまの自分のレベルでは、ぜんぜんハウツー本を活かせる段階までいってないという気がします。
なので、あまりその手の本は読まないほうなのですが、好きな作家さんの名前がそこに並んでたら、自分が書き手だからどうこうとかじゃなくて、ミーハー根性のほうが先に……ええと。
ということで、衝動買いしちゃいました。わたしの目当ては横山秀夫さん、伊坂幸太郎さん、宮部みゆきさんでした。そのほかにも、ミステリ好きなら目を輝かせるような豪華作家陣による経験談、ノウハウ、教訓、心構え等が出ていて、むしろ、ファンブックとしても豪華。
「理想とする小説は?」という質問への、いまは亡き藤原伊織さんの回答に、『長いお別れ』がありました。ああー、チャンドラーお好きだったんだあ、そうだよなあと、思わずしんみり。(レイモンド・チャンドラーはアメリカで1920年代に活躍した、元祖ハードボイルドといわれているフィリップ・マーロウシリーズを書かれた、有名な作家さんです。ミステリ要素だけをみるならそんなに盛り上がる小説じゃないんだけど、とにかく探偵がカッコイイ)
藤原伊織さんのご参加は、まとまった寄稿じゃなくて、ほんとにちらっと質問に回答されているだけなんですけど、でも、表紙にお名前の出ていない作家さんも、ちらちらそんなふうにアンケートに回答されているので、ミステリをたくさん読んで来られている方には、嬉しい一冊なんじゃないかと思います。
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ミステリーの書き方
読了。
参考図書としては、わたしはミステリ書きをめざすわけではないですし(読むのは好き)、そもそも、いまの自分のレベルでは、ぜんぜんハウツー本を活かせる段階までいってないという気がします。
なので、あまりその手の本は読まないほうなのですが、好きな作家さんの名前がそこに並んでたら、自分が書き手だからどうこうとかじゃなくて、ミーハー根性のほうが先に……ええと。
ということで、衝動買いしちゃいました。わたしの目当ては横山秀夫さん、伊坂幸太郎さん、宮部みゆきさんでした。そのほかにも、ミステリ好きなら目を輝かせるような豪華作家陣による経験談、ノウハウ、教訓、心構え等が出ていて、むしろ、ファンブックとしても豪華。
「理想とする小説は?」という質問への、いまは亡き藤原伊織さんの回答に、『長いお別れ』がありました。ああー、チャンドラーお好きだったんだあ、そうだよなあと、思わずしんみり。(レイモンド・チャンドラーはアメリカで1920年代に活躍した、元祖ハードボイルドといわれているフィリップ・マーロウシリーズを書かれた、有名な作家さんです。ミステリ要素だけをみるならそんなに盛り上がる小説じゃないんだけど、とにかく探偵がカッコイイ)
藤原伊織さんのご参加は、まとまった寄稿じゃなくて、ほんとにちらっと質問に回答されているだけなんですけど、でも、表紙にお名前の出ていない作家さんも、ちらちらそんなふうにアンケートに回答されているので、ミステリをたくさん読んで来られている方には、嬉しい一冊なんじゃないかと思います。

はつ恋 (新潮文庫)
読了。
ある夏の別荘地。ウラジミール青年は、生まれてはじめての恋をしていた。男たちを振り回し、足元にひれ伏させる、美しくて、気まぐれで、残酷な少女。何度もひどい目にあいながらも、はじめての恋に酔って、ささいなことに浮き沈み、夢想と悲嘆に明け暮れる日々。
けれど少女はやがて、恋をする。青年ではない誰かに。そうとはいわなくても、表情に、仕草ににじみ出るその事実を察したウラジミールは、悩み、嫉妬に苦しんで、けれど結局は彼女への思慕から逃れられない。
やがて、別荘を離れ、町へうつる日がやってくる。初恋の結末は……
なんだろう。甘酸っぱいというか、むしろしょっぱい。(そんな感想!?)
相手の女の子がまた、なんでこんな女に惚れるのかと思うような性悪女で、正直「えー……」と思いながら読んでたんですけど、後半になって、ちょっと印象が変わりました。かわいいかもしんない。はっ、これが恋する乙女パワー!?
そして後半、苦いです。すごく苦い。
愚かしくもういういしい青年の恋に共感できるかどうかが、この小説を楽しめるかどうかの鍵かなと思います。そういう意味ではわたしはあまりいい読み手ではなかったんですが、むしろ本筋よりも、主人公が父親に対して抱いている複雑な心情のほうが、読みでがあったなあと思いました。
プロフィール
HN:
朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
朝陽遥(アサヒ ハルカ)またはHAL.Aの名義であちこち出没します。お気軽にかまってやっていただけるとうれしいです。詳しくはこちらから
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