小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。

戸村飯店青春100連発
読了。
ところは大阪、中華飯店にうまれた二人の兄弟。要領よく何でも器用にこなし、人当たりがよくて、顔は広いけれど、そのぶん人と深くかかわるのがヘタクソな兄・ヘースケ。お調子者で不器用だけど生真面目で、皆から可愛がられる弟・コースケ。はやく家を出たくてしかたなく、家業を継ぐことなど考えもせずに、高校を卒業するなり飛び出していく兄。おかげで自分が店を継がざるをえないと思い、店の手伝いが嫌いなわけではないものの、釈然としない思いをもてあます弟。
キャラが魅力的! コースケ(弟)かわいい! 根が単純な子が、めずらしくややこしいことで悩んで、くよくよしてたりするところって、なんでかすごく好きなんですけど、なんでしょうかこの気持ち。
お兄ちゃんもいいキャラです。うまく周りに溶け込めないで、ちょっと距離を置いてしまうヘースケに、なんか変に感情移入してしまうなあ。
あと個人的に、自分が一人っ子なもので、兄弟愛には偏った憧れがあり、こういうのに猛烈に弱いです。
成長もの、青春ものがお好きな方にはおすすめです。それから大阪という土地へのあふれる愛も、読みどころ。
出会えてうれしい一冊でした。
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さよならドビュッシー
読了。
とつぜんの火事によって、姉妹のようにして育った従姉妹と祖父とを同時に失い、己の手足も自由にうごかせなくなった主人公。入学が決まっていた音楽学校に、どうにか入ることはできたものの、家が裕福なことや悲劇の主人公として注目されていることから、同級生からは妬まれる。
つらいリハビリと、周囲のいやがらせ。火傷の後遺症で初心者用の練習曲さえまともに弾けなくなった彼女を、それでも再び鍵盤に向き合わせ、根気強く導いたのは、魔法使いと呼ばれる、若き天才ピアニストだった。
ミステリとしてのエンターテイメント性も充分だし、それ以上に青春ものとして、音楽ものとして、たっぷりの感動が待っている。
……のだけれど、どうせなら、ミステリ要素を排してでも、もっと人間を描くことに力点を置いたほうが、さらに面白かったんじゃないのかなあ……という気持ちが少々残りました。
全部が全部そうなんじゃないんですけど、人間心理の描写が不十分に思えたシーンが何箇所か。それは、読み終わったあとで思い返せば、構成上やむをえないと思うのだけれど、「どうせなら……」と思ってしまうのは、わたしが謎にあまり重点を置いていないから。ミステリ読むのは好きだけど、本質的にはミステリ読みじゃないんでしょうね。
物理トリックなんかはかなりどうでもいいし、叙述トリックやどんでん返しは、痛快で好きなんだけれど、それよりもどちらかというと、人間を描いたものであってほしい。
あと、一人称の書き方でちょっと違和感があったのかな。たとえば、主人公が感動に打ちのめされているはずのシーンなのに、主人公の視線が、その感動の対象だけでなく、周囲の人々をいがいと冷静に観察している余裕があったりとか。そういうアラを、つい気にしてしまいました。
うーん、これは、読み手になりきれなかったわたしの負けって気がするなあ。なんていうか、もったいない読み方をしてしまった。小説は減点法で読むものじゃないのに。
……と、いろいろいいつつも、中盤以降、そんなアレコレを吹き飛ばすくらいの感動でした。
リンクはハードカバー版ですが、いまは文庫版も出ています。

Re-born はじまりの一歩 (実業之日本社文庫)
読了。
執筆陣は伊坂幸太郎、瀬尾まいこ、豊島ミホ、中島京子、平山瑞穂、福田栄一、宮下奈都(敬称略)。
最初は伊坂さんめあてで買ったんですけど、実際には、瀬尾まいこさんの『ゴーストライター』と、豊島ミホさんの『瞬間、金色』に猛烈にはまってしまいました。そしてほかの本も買っちゃった。
『ゴーストライター』は、同じ方の本『戸村飯店青春100連発』にも収録されていて、連作短編集の一本目になっています。要領がよく器用で人当たりがいい兄貴と、不器用だけど愛嬌があって壁の低い弟。そりの合わない兄弟の、ちょっと複雑な距離感。大阪の下町の人情と、高校生のじれったくもほほえましい恋愛。あと、登場人物の大阪弁がすごくいいな。
『瞬間、金色』は女の子たちふたりの友情を描いた作品。中学のとき、高校時代、そしていま。同級生のいじめのターゲットになったり、家庭に複雑な事情があったり、そんな日々の中で、つらいときにはお互いに凭れあったり、立ち直ったらまた離れたりしながら、どうにか生き延びていく、不器用なふたり。最後すごい泣いてしまった……
このお二人の本、ぼちぼち読んでいこうと思います。っていうかすでに何冊か買って、読んだり積んだりしてます。アンソロジーって、好きな作家さんに出会えるいいチャンスだなと思います。
それにしても、年々青春モノに弱くなっていく自分を感じる……
あ、もちろん伊坂さんの短編も、伊坂さんらしいかんじの小品で、なかなか楽しめました。でも贅沢をいえばちょっと、物足りないかなあ。伊坂さんのストーリーテリングの本領を発揮するには、もうちょっと枚数がいるような気がする。

風の十二方位 (ハヤカワ文庫 SF 399)
読了。
短編集。ル・グィンが書いたファンタジーおよびSF短編、計十七篇を集めた本。中には、ゲド戦記や闇の左手、所有せざる人々、ロカノンの世界など、ほかの長編のもとになった短編がちらほら混じっていて、ファンには嬉しい一冊。
抽象的すぎたり、文章が固くてとっつきにくい作品も、なかには若干混じっているのですが、同時に、胸をうった印象深い作品も、何本もありました。クローンを描いた「九つのいのち」、エンパシー能力をもっているせいでたえず他人の悪意にさらされつづける青年を描いた「帝国よりも大きくゆるやかに」、火星の表面に何者かが残した施設によって、常人とは異なる視野を手に入れてしまった宇宙飛行士を描いた「視野」。読んでよかったー。
ル・グィンのSFに、すっかりはまりつつあるのですが、すでに国内では手に入れにくい本、あるいは未翻訳の本もけっこうあって……ぐぐっ。
いつ続きが翻訳されるかわからない海外小説を、しばしば自力でがんばって原書を読む、気合のはいった友達がいて、見習いたいなあという気持ちだけが、いつもココロのどこかにります。しかし本気で真似する根性がありません。語学だめなんだ……

決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)
読了。
宇宙船ディスカバリー号は、宇宙飛行士たちとコンピュータを載せて、土星を目指していた。高度な知能を備えたコンピュータ、HAL9000。宇宙飛行士たちの優秀な相棒であったはずのHALは、しかし突然、奇妙な行動をとりはじめる。なぜかれは反乱を起こしたのか。ディスカバリー号に極秘裏のうちに命じられた指令とは……
1964年ごろに執筆された話なんですね。映画の原作なのかと思ったら、そうじゃなくて、映画のほうの監督さんといっしょになってネタ出し、ブレインストーミングをしながら、同時進行で製作していったんだそうです。
わたしは映画を見ていないのだけれど、映画版では抽象的で解釈が分かれたような部分が、小説版ではすっとわかりやすく語られている……らしいです。解説によると。
それにしても、人類が月面着陸に成功するよりも前に、これだけのストーリーを書いたんだって思うと、あらためて不思議な感じがします。人間の想像力って、ときどきものすごい。
人類がはじめて月面の裏側を観測した時代、アポロ8号に乗っていたクルーが、出発前にすでにこの映画作品に親しんでいて、あとでクラーク氏に「あのときは巨大なモノリスを見つけたと送信したくてたまらなかった」と話したとのこと。
すごく面白かったんだけど、ラストはちょっと、好みじゃないかなあ。終盤、スケールが大きくなりすぎて、逆にちょっと冷静になってしまった感じ。……などといいつつも、読んでよかったです。宇宙船内での生活なんかが、読んでいてすごくワクワクする。
いずれ『2010年宇宙の旅』も読もうと思い……え、『2061年宇宙の旅』『3001年終局への旅』『失われた宇宙のたび2001』まで出てるのか。なんかすごいな。
プロフィール
HN:
朝陽 遥(アサヒ ハルカ)
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
朝陽遥(アサヒ ハルカ)またはHAL.Aの名義であちこち出没します。お気軽にかまってやっていただけるとうれしいです。詳しくはこちらから
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