小説を書いたり本を読んだりしてすごす日々のだらだらログ。

 映画の「ザ・ロード」をDVDで見ました。ヴィゴ・モーテンセンが主演だからというミーハーきわまりない理由で。
 作家さんや二次元のキャラクターにミーハー根性発揮するのはいつものことなのに、俳優やスポーツ選手を追いかけると恥ずかしいこの心理はいったい何なんだろう……

 さておき感想。ネタバレ注意。



 2011年頃公開だったのかな。核戦争かなにかが起こったあとの、滅亡後の世界にわずかに生き延びた人々の話です。世界は灰と厚い雲に覆われて、気温が下がり、作物も木々も立ち枯れて、人々は廃墟に残っている缶詰などを食いつないでいる。銃で武装して、人を狩って食べている連中までいる。滅亡といっても、瞬間的に完膚なきまでに焼き尽くされたというよりも、数年ほどの時間をかけて、絶望した人々が自殺したり、飢え死にしたり、食い殺されたりして、絶えかかっているというあたり。
 妻は先に自殺して、残された父と息子が南に向かって旅を続ける。形式だけでカテゴライズすると、父子のヒューマン・ドラマというような括りになるのかもしれないんだけど、どっちかというと、親子の関係そのものというよりも、善悪とか、極限状態に置かれた人間の行動の是非とか、そっちがテーマなのかなという印象がありました。

 ヴィゴ演じる父親は、ストーリーの中で、息子を守る為に人を殺しており、危険を避けようとしてたびたび困窮する人を見捨てる。人を見かけるたびに疑って、銃を向ける、あるいは関わり合いを避けようとする。実際に、貴重な食糧を盗まれたり、人食い連中に襲われたりする場面も度々あって、それをゆきすぎた猜疑心とは言い切れない。

 息子は、行き会う人々のことを、悪い人ではないのではないかと思っていて、そういう父親を何度も止めようとするのだけれど、息子の命には代えられないと思っている父親は、しばしば息子の嘆願をふりはらう。
 途中、せっかく豊富な食料庫を見つけてひと安心できる隠れ家を得たのに、そこでも犬の足音を聞きつけた父親は、「犬がいるということは、人間がいるってことだ」と、警戒して逃げだしてしまいます。
 そのときに、持てる限りの食糧を持ち出したせいで、よけいにそれを誰かに奪われるのではという警戒が増してしまう。そこからずっと、誰かに追われているという気配を感じ続けていて、人に出会うたびに「追っていたのはお前たちか」と聞くのだけれど、どの相手も「追ってなんかいない」と答える。父親はすっかり猜疑心のかたまりになっている。

 最後、父親は病気と傷が元で衰弱し、死に際、息子に自分を置いて行くように言い残すのだけれど、息子はふんぎりがつかなくて、父が息を引き取った後も、なかなか旅立てずにいる。そこに通りかかった男が、ひとりきりでいる男の子を心配して、父親が死んだのを聞くと、一緒に来るかと誘う。
 息子は、声を掛けてくれた男を信じていいのかどうか躊躇って、躊躇って、だけど賭けるようにして男についてゆく。結果として男は(おそらくほんとうに)善意の大人で、彼には連れがいる。妻と、二人の子供と、それから犬。

 そこで映画が終わるので、「ああ、この子はひとりぼっちにならなくて済んだんだな」と安心して観終わってもいいんです。が、しかしそれにしては、ラストシーンの犬と、男の妻の台詞が気になる。「あなたたちを見かけて、心配して追っていたの。お父さんと二人だったでしょう」「でもよかった」と言う。思い返せば、前半で息子が、自分と同じ年頃の男の子を見かける場面があったんです。男の子は隠れてしまって、息子は、その男の子と話がしたくて探そうとするんだけど、父親は、息子が友達がほしいあまり空想と現実がごっちゃになっていると思って相手にしなかった。

 つまり息子の見たあのときの男の子は幻覚なんかではなかった。父親が警戒して逃げ出した犬の足音も、この家族の気配だったんじゃないのかな。それなら、彼ら家族はずっと、自分たちの子供と同じ年頃の子をかわいそうに思って、手をさしのべたいと感じていたけれど、その父親が猜疑心が強すぎて他人に銃をつきつけてきたせいで、近づけなかったということになる。
 息子を危険から護ろうとするあまり、父親は自分の不安を世界に投影しつづけてきた。その結果として、息子にさしのべられる善意の手を遠ざけ、振り払い続けたのは、父親ということになる。振り向けばすぐそこに、「善き人」たちが存在していたのに。
 その父親が死んだことで、やっと、男の子のところに他者の庇護の手が届いた。そういうふうに考えたら、これ、すごく皮肉で悲しいオチなんじゃないのかな。

 父親を失って息子が一人ぼっちになったからこそ、この家族連れのほうにも、他人を迎え入れるだけの決意ができたと考えるべきなのかもしれないんだけど。

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